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Wi-Fi技術講座
第11回 OFDMについて

技術・調査委員会 松村 直哉

高速化の技術として、第5回でチャネルボンディングと多値変調を、第6回でMIMOについて紹介しました。

高速化の技術について、各高速化技術を合わせることで通信速度は体積で表現できるので、概念的には下図のようなイメージになります。

チャネルボンディングは「周波数帯域幅」を広げるための技術です。
「変調の多値化の」多値変調は位相分を細かくビット列に対応させる技術で11.nまでは6ビット変調(64QAM:0x00 0000~0x11 1111を表現)、11acからは8ビット変調(256QAM:0x0000 0000~0x1111 1111を表現)と一つの波に位相変調を加えて多値化するものです。

MIMOは複数の「空間ストリーム」を使うことで高速化する技術で、マルチパス(多数の反射波からの影響)環境を味方につけた高速伝送技術です。そして、この際、マルチパス環境でも高速伝送を実現する信号処理技術がOFDMになります。

マルチパス環境を克服したOFDM

アナログテレビ世代の方は経験があるかと思いますが、よくゴーストという現象になったかと思います。
これは近隣のビルなどに反射した電波を受信することで起きる現象で、放映されている画面が、ゴースト=二重にぶれてしまうという現象です。

アナログ時代は反射して遅延した電波が画面に顕著に表れゴーストとして二重や三重になってしまいました。
反射波が多数存在するマルチパスの伝送路では下図のように受信信号のスペクトラムが歪んでしまう(アナログテレビの場合のゴースト)という現象が起こります。

多くのサブキャリアから構成されるOFDM

OFDMはサブキャリアを多く使うことでマルチパスの影響を、信号の歪みではなく個々のサブキャリアの信号レベルの低下のみに抑えることで、誤り訂正符号化によるデータエラーの抑制ができることを特徴としています。

また、反射による遅延データに対処したGI(ガードインターバル:データの間に一定の空き時間を設ける)を設定することで、一定の範囲の遅延による影響を排除した伝送方式を実現しています。

 

OFDMは11aで最初に採用されました。11aでは20MHz幅に対して52波のサブキャリアで構成されています。11nでは20MHz幅に対して56波のサブキャリアに拡張されました。

次世代の無線LAN技術として期待されている801.11axはこのサブキャリアの波の数をさらに拡張していることが大きな特徴となります。

参考文献:
「Wi-Fiのすべて 無線LAN白書2018」 小林 忠男監修 リックテレコム発行
「802.11高速無線LAN教科書」 守倉 正博、久保田 周治監修 インプレスR&D発行


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