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Wi-Fi 技術講座
第5回 高速化のための技術

バッファロー 松浦 長洋

1997年に、Wi-Fi の基となる標準規格「IEEE802.11」が作られてから約20年間、Wi-Fi技術の進化は高速化の歴史となっています。
規格上の最大通信速度で言えば、2Mbpsから始まり、現在では四千倍近い7.93Gbpsという高速な通信速度になりました。
どのようにして、このような速さを実現してきたのでしょうか。
高速化のために、IEEE802.11規格で採用された主な技術の変化には、次のものがあります。

  • 変調方式の変更 DSSSからOFDMへ
  • 周波数帯域幅を拡大するチャネルボンディング 20MHzを基準に160MHzまで拡大
  • 変調の多値化 6ビットから8ビット、10ビットへ
  • SISOからMIMOへ 1×1 から2×2、3×3、4×4、8×8へ

 

ここでは、チャネルボンディングと、多値変調について説明していきましょう。

チャネルボンディング (Channel Bonding)

Wi-Fi では、ひとつの通信で使う電波の幅(通信チャネル)は20MHzを基準としています。通信チャネルを複数束ねて広い周波数帯域幅を使うことで情報の通り道が広がり、一度に多くの情報を送ることが出来るようになります。この方法をチャネルボンディングといいます。

 

従来の2.4GHz帯の「IEEE802.11g」や5GHz帯の「IEEE802.11a」では20MHz幅の基準幅で通信をしていました。11n規格では二つのチャネルを束ねて40MHz幅を利用することで二倍以上の高速化が出来るようになりましたが、最新の「IEEE802.11ac」規格では束ねるチャネルの数をさらに増やして80MHz幅や160MHz幅を使用することで四倍、八倍の高速化を実現しています。

 

チャネルを束ねて利用することから、効率良く高速通信が出来ますが、別々に利用できるチャネル数は減ってしまいますから、多くのユーザー(異なるWi-Fiシステム)が使用しているときには、干渉が発生してしまう事があります。

多値変調

変調信号の多値化は、一度に運ぶ情報を増やして高速化する技術です。

 

これまでの802.11a、11g、11nで使用されてきたのは最大で6ビット変調(64QAM) でしたが、11acでは8ビット変調(256QAM) となりました。

次の11ax規格では、さらに情報量が増えて10ビット変調(1024QAM) が採用される見込みです。1つの信号に含まれる情報量が多くなることで、通信効率を向上出来ます。図3では車に搭載する荷物の量で情報量をイメージしています。

 

変調されたデータの状態を図に示したのが図4で、コンスタレーション(Constellation)と呼ばれています。
この図で分かるように、多値化されるほどデータとデータの間の距離が近くなり、信号に雑音が乗った時にデータの判別が困難になります。多値変調になるほど、近距離の通信でしか使うことが難しくなります。


◆Wi-Fi技術講座一覧◆

Wi-Fi技術講座 第1回 2.4G帯と5G帯の使い分け
Wi-Fi技術講座 第2回 Beaconはお知らせ信号
Wi-Fi技術講座 第3回 Wi-Fiのルール CSMA/CA
Wi-Fi技術講座 第4回 認証と暗号化の取り決め


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