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第14回 社員総会 特別講演
新たな価値創造へのチャレンジ
~想像と創造、コミュニケーションの先へ~
NTT株式会社 常務取締役・常務執行役員
研究開発マーケティング本部長
大西 佐知子 氏
11月7日、一般社団法人無線LANビジネス推進連絡会の「第14回社員総会」が開催され、特別講演にNTT株式会社 常務取締役・常務執行役員 研究開発マーケティング本部長 大西 佐知子 氏をお招きし、「新たな価値創造へのチャレンジ ~想像と創造、コミュニケーションの先へ~」と題してお話しいただきました。講演内容の要旨を掲載いたします。
今、ご紹介いただきました大西です。10年前にNTTBPで、オリンピックを東京で開催することが決まって、スタジアムをWi-Fiでもっと魅力あるものにしようということで、スタジアムWi-Fi推進担当となりました。その際に北條さんや吉田さんなど、皆さんにお世話になりました。それがご縁で本日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。
本日は、「新たな価値創造へのチャレンジ~想像と創造、コミュニケーションの先へ~」と題しまして、お話をさせていただければと思います。
日本電信電話株式会社あらため「NTT」ということでロゴも変わりました。もともとNTTデータが使っていた色とロゴの字体を使っています。
本日、全体のアジェンダですけれども、最初に「テクノロジの進化とともに」ということで、AIの進展と消費電力、そしてそれを支えるインフラの役割についてお話し、次いで「コミュニケーションのその先へ」、「食」、「メディカル・ヘルスケア」「モビリティ」そして「万博」も含めてお話し、最後に「新たな価値創造へのチャレンジ」ということで、お話をさせていただければと思います。
テクノロジの進化とともに
最初に「テクノロジの進化とともに」です。まずはこちら、1890年、最初の電話機になります。
197世帯ということで、ダイヤルもない状態でした。当時、電話をかけて、東京・大阪間で相手とお話しができるまで、かけてからどれぐらいかかったと思いますか。
なんと、6時間です。さらに追加料金を払っても2時間ということで、受話器をあげるとオペレーターさんが交換機でつないで、つないで、つないで、向こうを呼び出してということなので、これぐらいかかっていました。こうして電話機1,000万台突破から、だんだんとポケベル、テレビ電話といろいろとある中で、どんどんと進化していきました。
そういった意味では、乗用車やクーラーなど、昔は世帯普及率80%にいくまで凄く時間がかかったのですが、最近はインターネット、スマートフォンとどんどん短くなり、ご存じの通り生成AIはたった2カ月でユーザ数が1億人になりました。わずか5日で100万ユーザという言い方もしていますが、新しい技術のマーケットへの浸透がかなり早くなったかと思います。
ただ一方で、世界情勢、社会課題は深刻化しており、フードロスは世界で生産された食品のうち40%が廃棄されていますし、日本でも作られた衣料品のうち半分の15億着が捨てられているということで、少子高齢化、労働力不足、環境エネルギー問題は深刻化する一方だと思います。
そういったなかでも人々の価値観は多様化しており、これまでは「物が豊富に、機能もあればあるほどいい」といわれていましたが、最近はコトとかエクスペリエンスだったり、必要な量だけロスを少なく、もしくは機能があるよりも簡単でシンプルに使えたほうがいいというエフォートレスだったり、もしくは感性に響くような、わくわく・デザインというものが、好まれるようになってきたかと思います。
そうした中で「果たしてテクノロジの進化は人と地球を笑顔にできるのでしょうか」実は「進化のために膨大な電力が消費されて、地球環境はどんどん悪化している」という実態があります。そういった状況を「AIの進展と消費電力」の観点でお話をしたいと思います。
AIの進展と消費電力
ご存じの通り、生成AIの売上、市場規模はどんどん伸びていって40倍になるといわれています。それと同時に世界で生まれて利用されるデータの総量は、どんどん前倒しで増えている状況になります。
なぜAIの進展でデータ量が増えるのかというところですけれども、「生成AIのサイズ」というのは、これは学習する「テキストデータの量×ニューラルネットワーク(パラメータ)の大きさ」になります。これにあと計算量という言い方もありますが、この2つを掛け算したものになっており、2019年に出た「ChatGPT-3」の学習データが570GB(バイト)、パラメータ数が1,750億といわれています。
これがどれぐらいかというと、まず学習データ量の570GBなんですが、成人男性が一日にしゃべる単語が7,000単語。ちなみに女性は2万単語だそうです。この7,000単語を年間にして、データ量におきかえると「511万バイト」になります。570GBは、その11万年分に当たるということです。つまり、成人男性の11万年分しゃべったものが、学習されているものが「ChatGPT-3.5」のバージョンということになります。
加えて「パラメータ」といわれているものですが、これは人の脳の作りと動きをコンピュータでまねたもので、人の脳は神経細胞1,000億、シナプス100兆以上といわれていて、先ほどのChatGPT-3.5の段階で、これらの600分の1はあるということで、たぶん今は人間の1人の脳と同じぐらいにパラメータは来ているのではないかと思います。さまざまな学んだ学習を、変数でつなげていく形になっているのですが、その変数の多さになっています。
実はChatGPT-3.5の段階で、それを学習するために使う電力が1回当たり1,300MW/hといわれています。原発1基を1時間動かして作られる電気の量が1,000 MW/hなので、それを超えているのです。それだけ電力を使っていることになっています。
これは、もっとさらに酷くなっており、AIを使うためには従来のサーバとは違ってGPUサーバを使っていますが、左のグラフにあるように従来のサーバよりもGPUサーバは5.9倍も電力を使うんです。GPUの枚数というものが右側にありますが、どんどん増えていて、今、ご説明したGPT-3.5が1万枚、一番左右で、イーロン・マスクが作っている「xAI」は20万枚といわれているので、ChatGPT3.5の時点で原発1基分を回しているので、どれだけ使っているのかということになるかと思います。
最近ではAIデータセンター1棟を造るのに100から1,000MWhで、実は一般家庭の2万から30万世帯の電力といわれています。ですので、このままデータセンターが、AIも含め、どんどん増えていくと、このグラフの左側がデータセンターの消費電力の伸びを予測していますが、Aa isの青い折れ線のような伸びになっています。
赤い線が東京都の2023年度の総電力です。ですので、2030年の時点では、データセンターの電力だけで東京都全体の電力を超える予測になっていますので、皆さんが電気を消して過ごすことでようやくAIが使えるという、これぐらいの状況に来ているということになります。
サスティナブルな AI 時代の社会インフラ
光の技術を使った“ IOWN ”
そういった状況の中で、どうしていくかなんですが、「AI活用に必要なインフラ」は、AIを動作させるコンピューティングリソースと、それらをつなぐコネクティビティ、そしてそれを駆動させる安定的な電力供給の3つになります。
コンピューティングリソースを動かすための電力をいかに減らすかということで、弊社が掲げているのが「IOWN」です。Innovative Optical and Wireless Networkの略ですけれども、激増するデータ処理需要、それに比例して増えるエネルギー消費、環境負荷というジレンマを解消するために、光技術を核に高性能かつ低消費電力のコンピューティングリソースを提供するテクノロジです。
これは電気と光の違いを使っています。こちらのグラフ縦軸が消費電力、横軸が通信伝送距離になっています。電気の場合は伝送距離が伸びれば伸びるほど消費電力が増していきます。
光の場合は伝送距離が長くなっても、消費電力は大きくなりません。これはコンピューティング処理も同じで、電力の場合はGPUなど、たくさん使えば使うほど電力が増えてくるのですが、光の場合は消費電力が増えないという特質があります。そういった光の特質を伝送からデータ処理領域まで入れていこうというものがIOWNです。
現在は上のようにデータセンターから通信ビルを通じて、途中までは光でやっているのですが、どうしてもビルのところは電気で処理していますので、効率も悪いし、電力も使います。これを下のように全部光にすることで、効率性も良く、しかも消費電力が上がらないようにできないかというのが考え方です。
IOWNでは、低遅延、大容量・高品質、低消費電力、2030年以降に電力効率100倍を目指して今、進めています。
ロードマップとしては、まずはデータセンター間をつなぐAPN(オールフォトニクス・ネットワーク)というネットワークに光を組み込むものから、データセンターのサーバー間の接続、そしてボード間接続、パッケージ間接続、最後はダイ間、つまり半導体の中のチップのところまで光に変えていこうというのが大きな流れで、今、PEC-2というIOWN2.0のところまで実現が進んでいます。
AI利用に伴うGPUが、先ほどのイーロン・マスクのところのように何万枚と必要になってくると、いっぱいつなげなければいけません。これをあたかも1つのコンピュータとして動かすためにGPUとGPUをスイッチで接続していかなければならない。このスイッチの間のデータ処理も凄く増加していて、さらにコンピュータ内の通信が大容量化しているという状況です。
右側にあるように、先ほどの消費電力の観点もありますが、処理できる通信速度の問題もあります。これは横軸が距離、縦軸がビット数になっています。距離が短いところは電気のほうが得意なんですけれども、実は10テラ以上になると、1センチ離れたところも、発熱してしまって電気では難しいんです。光に変えていかないと大容量を瞬時に送ることができないという物理的限界に来ている状態です。
そういった意味で、スイッチのところに、今、電気でやっているところを光電融合デバイスということで光に変えて、少しでも今の大容量化に備えなければいけないという現状になっています。このように右側に光電融合デバイス、それをスイッチに入れることで、今のGPU間のスイッチの大容量通信にも耐えられるようにしていくというのが、IOWNの技術になっています。
実際に今、データセンターの需要を見ると、首都圏では電力供給が限界に来ており、このように地方に分散して設置しなくてはならない状況にきています。
ただ、実際にAIを使うためには首都圏にあるGPUだけでは足りなくて、地方に設置したGPUも含めて全部1つのコンピュータとして動作させる必要があり、そこを今のIOWNのAPNで分散設置したGPUをつないで、例えば首都圏ではGPU10%、九州のように再生エネルギーが豊富なところでGPUを70%使って、北海道で20%のように、こういう形で電力消費の集中を抑制しながら、電力供給量に合わせたGPU利用というのが、現実的な解になっているという現状です。
サスティナブルな AI 時代の社会インフラ
軽量 LLM “ tsuzumi ”
もう1つ、先ほどの生成AIモデルが、xAIのようにどんどん大きくなってきますが、NTTがゼロから開発した純国産のLLMモデルは、7Bで最初は出して、今は30Bで、先ほどのChatGPT-3.5の1,75Bと比べてかなり小さいモデルを作っています。
1GPUで動作する省コストながら質の高い日本語性能、日本文化、慣習を理解するものになっています。
これをコスト比較すると、DeepSeekやChatGPT-4などは、同じ仕事をするのに1億円から5,000万円のGPUが必要になるんですけれども、同じ仕事をするのに「tsuzumi 2」の場合は500万円で済む。非常に燃費のいいモデルになっていて、今回、2025年10月(先月)、tsuzumi 2として進化したものを提供開始しました。
実はtsuzumi 1を出したときに、実際にいろいろな企業で使っていただく際に、企業さんで持たれているデータが想定よりも少ないことが分かりました。社内のデータには、マニュアルなど、いろいろとあると思うんですけれども、例えばNTTが書いたマニュアルは、書いた部署の人が読めば分かるのですが、他の部署の人が読んで分からなかったり、他の企業さんが読んで分からないというように、かなり暗黙知が入っていたり、専門用語が入っていたり、実は読解することが難しい、tsuzumi 1を出したときは読解力が足りませんでした。
お客様に伺ったところ、企業内に閉じて使える非常に安心・安全なtsuzumiを使いたいシーンは、「マニュアル・社内資料の文書検索、要約・生成ができるようにしてほしい」というのが83%、あとは「専門知識に基づくようなものにしてほしい」ということでご要望が多かったのは「金融と医療と自治体」の業界の皆様でした。
こちらの専門知識を強化して、このたびtsuzumi 2の進化バージョンということで、業務適応力の進化と特化性能の進化という2つのポイントを進化させました。もともと1GPUで動くという省コスト、基礎能力はそのまま維持した形にしました。
まず「業務適応力の進化」というところは、日本語の読解力、解析を強化また、指示遂行能力を強化しました。人間社会でもそうだと思うんですけれども、いろいろな指示をされたときに、それを理解して動くためには、指示の仕方が重要だったり、もしくは指示を理解する力が必要だと思うんですけれども、そこをtsuzumiにも学ばせて、指示遂行力を高めました。
この項目に関しては、棒グラフの青いものがtsuzumi 2ですけれども、左側に同じサイズ、つまり軽量タイプ、右側が先ほどのように、たくさんのGPUを使わなければいけない大きなパラメータのものと比較しています。今回強化した読解力、解析、指示遂行能力項目についてはグラフのとおり、パラメータ数が多いモデルとも引けを取らないパフォーマンスに仕上がっています。
併せて金融業界、医療業界、自治体業界の専門知識を強化しました。金融業界の専門知識を強化した点についてはファイナンシャルプランナーの2級試験で試しました。tsuzumiの場合は、事前に予習を200問解くだけで、合格ラインに達するんですけれども、他のモデルは金融業界の専門知識を学んでいないこともあって、予習に1,900問やらないと合格ラインに達しないということで、ある程度専門知識を学んだ分野においては、カスタマイズが少ない学習量でできるということも特長になっています。
そして、「国産LLM」というのは、実は大きく2つのタイプがあります。海外製のLlamaなどをベースに、その上に日本語を学ばせたようなモデルも純国産という言い方をされていることがあるのですが、それはもともと海外のものに対して上に日本語データを追加したものになります。うちの研究所のモデルは、基盤モデル、ゼロから作ったものということで、本当の意味で純国産です。
実際にAI関連、tsuzumi以外も含めてですけれども、NTTグループでの受注状況はかなり伸びていて、今、国内・海外を合わせてグラフ上受注件数1,827とありますが、2Qでは、受注件数が2,700件と、かなりAIの受注は増えています。
いろいろな業界、いろいろな企業規模のお客様、公共分野のお客様からも幅広いお客様から受注いただいています。
売上も昨年1年間で436億円でしたけれども、今年3カ月間で既に670億円ということで、AI関連はお客様のニーズが高いという状況になっています。
実際にお客様のニーズに応じた最適なAIモデルを組み込むことが重要です。左側は、企業における業務を2軸であらわしたものです。縦軸が業務の機密性で、上にいけばいくほどクラウドに上げているようなオープンデータ、下がクローズデータで、横軸は業務の特性で、右にいけばいくほど汎用的な業務、左側が専門的特化業務です。右上の公開データ、オープンソースのところと、左下の企業固有のデータとは使うAIを使い分けてやっていくのかなと思っています。
右側の図のように、公開データ、オープンソースのところには、汎用AIを使うということで、企業の規模や業界ごとに応じて、欧米のOpenAIやGoogle のGeminiなどを使っていく。あとは中小企業向けにも、いろいろなラインナップをご用意しています。
もう1つのクローズ領域になるんですけれども、こちらは個人情報や機密性が高いので、クラウドに上げずオンプレで学習させたいというご要望が63%ぐらいいらっしゃいます。

ただ、こういったところは90%以上が非構造化データということで、たぶんノウハウに当たるところはクラウドに上げなくていいので、皆さんの手元にあったり、メール文だったり、提案書だったり、皆さんの頭に入っていたりということで、9割ぐらいが非構造化データといわれています。
ですから、ここをうまくデータ化しながら、日本のノウハウをきちんと、海外勢のAIではなくて、安心・安全な国産のAIに学ばせて、ノウハウとして残していくことが重要かなと考えています。
最近ではAIのリスクに関して、各国でガバナンス活動も盛んになっております。また、悪用を図るような問い合わせがあったときには、それを遮断するような、プロンプトをブロックするような「chakoshi」というサービスも出し、大変好評をいただいています。
このようにAIは社会に確実に浸透し始めていて、「今年の流行語大賞にチャッピーが入るんじゃないか」といわれていますが、そういった状況かと思います。
コミュニケーションのその先へ
情報通信インフラから社会産業インフラ
続きまして、「コミュニケーションとその先へ」についてお話しします。多様なニーズに対して、AIによってパーソナライズ化されたり、効率化されたり、可能性や能力の拡張だったりテクノロジーによる価値効用は大きく広がってきています。
そうした中、これまではプロダクトアウトの研究開発が中心だったのですが、多様化するニーズには、やはりマーケティングが必要だと思っています。これまでは機能軸を極めていったんですけれども、今後は価値軸でいろいろと見ていくことが必要かなと考えています。
またこれまでの情報通信インフラから、さまざまな新たな価値創造に向けては、産業社会インフラとして通信が担っていく領域が増えていくと考えています。つなぐテクノロジが深化して伝えるものが広がっていき、さまざまな生活の中に、それが浸透していくということだと思います。
Wi-Fiも本当にまさにその一部かなと思っています。その中のいくつかの例を少しご紹介したいと思います。
食~ food ~
まず食foodになります。「食をサスティナブルに」ということで、ご存じの通り食の安定供給に関するリスクは非常に高まっているかと思います。食料品の物価がかなり上がっていることは既に実感していて、これは3年前に作った資料なんですけど、その時点でも上がっていたのですが、今はすでに皆さんの生活に物価高が大きく影響をしていると思います。
実際に日本の食料自給率は38%で、主要13カ国のうち12位になっています。これは地方を中心に労働力の大幅減で、農業の従事者が7割以上減り、平均年齢も、2022年の段階で68歳ですから、今は70歳を超えている形になっていますし、そのため耕作放棄地が2015年の時点で42万ヘクタールなので、今は相当ある形です。
ただ、このような同じような逆境でも、食料自給率を上げている国があります。オランダは農業大国のイメージがあると思うのですが、実は国土の2割が水面で、日本の4割の農地面積しかないんですね。ですけれども、技術革新によって、大規模施設園芸が普及し、農産品輸出額世界2位ということで、きちんと産業化しています。イギリスも農業人口減少ですけれども、国の政策として「食料は我が国の資源から」ということを明文化することによって、食料自給率が70%超ということができています。
そういった意味では、日本もできるのではないかということで、育種から農業生産、畜産、水産、流通まで、さまざまなところにNTTグループは取組んでいます。
その中でもご紹介したいものが施設園芸になります。これは植物工場とは違って、天然の力を使いながら施設園芸をしています。山梨にサッカー場の1.5倍の国内最大級のレタス温室を造り、自然の光を入れながら、レタスが順繰りに動いていき、水も自動的にあげ、最後の収穫のところは人でやるみたいな、人間として楽しく、モチベーションが湧くものは人間でやって、それ以外は機械でやり自然を使いというのが特長です。これによって従来の2分の1の人手で栽培量が10倍以上ということができていますし、水の完全循環利用ということもできています。こういった作り方を評価いただき、「場所があるから、同じように施設設計をやってくれないか」というご依頼を受けて、右側がその例で国内最大級のパプリカ温室の写真でNTTアグリテクノロジーが設計施工したファームです。
こういったものが今、かなり増えており、イチゴからトマトから、いろいろなものを作っていますし、設計させていただいた工場もかなり増えているということで、NTTアグリテクノロジーはNTT東日本の子会社なんですが、そこの社長は『週刊ダイヤモンド』のカリスマ農家の第2位に選ばれて、本人も大変喜んでいます。NTTアグリテクノロジーが社員募集をした際には、もの凄い人数の応募が来て100倍でした。それだけ地に足のついたというか、ITテクノロジの力で、社会課題解決をこういった目に見える価値として実現できるところに人が来ているかなと思っています。
その他にも若手の素人の方が農場を始めたいというときに遠隔で営農支援をしています。かなり高精細な画像なので、トマトの採れごろとか、「ここら辺が青いので、もうすこし待った方がよいよ」みたいな指導が遠隔でできるようになっています。
それから、漁業も取組んでいます。ご存じの通り魚が今までのように取れません。海洋温暖化の影響もありますし、海洋酸性化の影響もあって餌がなくなったということもあり、なかなか魚が取れない状況になっています。ところが、世界的には養殖も含めると水産物の生産量は右肩上がりになっています。日本だけ減っていて世界の水産量は増えているということで、日本は1990年は世界の水産量ランキング1位だったんですけれども、ついに11位に転落ということになっています。これは、日本はあまり養殖に力を掛けてこなかったということがあります。「では」ということで、NTTがヒラメ、シロアシエビ、サケマス類を作っています。
陸上養殖をやるNTTグリーン&フードという会社を、京都発のリージョナルフィッシュさんと組んで設立しました。もともとなぜ始めたかというと、宇宙の放射線照射が通信設備に与える影響を研究者が研究していたんですね。そこから海の中の藻に放射線の照射技術が与える影響というものに、なぜか分からないですけど、気がいき、そうしたら、どうもCO2の吸収量を上げる働きがあるということが分かったらしく。CO2を吸収する吸収源としては、実は海洋は全体の中で大きな役割を占めているのです。
その海洋の藻が、その技術によってさらにCO2を吸収する力が増えれば、エコになるじゃないかと。であれば、その海藻を作りつつ、それを餌にして魚に食べてもらって、魚も陸上養殖で作って、食の安全も含めてという、環境にいいということで、いつの間にか通信の研究から漁業につながりました。このような形で藻類にCO2を吸収させて、それを食べた魚の骨に固定して、そうすると魚が骨になり土に還っていくとCO2をどんどん土に結果的に閉じ込めることができるということで始めました。
こちらは磐田にあるスズキ自動車の部品工場をお借りして、25メータープールがいっぱいあるような感じの陸上養殖をはじめました。そこでシロアシエビを作っています。その他にヒラメとかサケマスも作っています。ちなみにシロアシエビは陸上養殖の中でシェアNo.1になり、何の会社か分からなくなってきましたが、そういう状況です。
メディカル・ヘルスケア
その他、メディカル、ヘルスケアのところも少しご紹介します。まずバナナとクッキー、食べた後に血糖値が上がるのはどちらだと思われますか。バナナだと思われる方、手を挙げてください。多いですね。クッキーのほうが上がると思われる方。半分ですね。グルコースの濃度を示すGI値はバナナが58でクッキーが77なので、この値から見るとクッキーが正解のように見えるのですが、実は「どちらでもない」が正解で、挙げなかった方が正解です。
境界型糖尿病の方にバナナとクッキー両方を食べていただきました。そうしたら、上は患者さんのうち445人の方なのですが、バナナを食べると血糖値が上がっているんですけど、クッキーは横ばいです。逆に下は、644人の方はクッキーを食べると上がるのですが、バナナの場合は上がらないという結果になっています。実は食べ物、血糖値が上がるものは人によって違うということが明確に分かっています。ですので、いろいろなダイエット方法があると思うんですけど、例えばサラダから食べるといいとか、いろいろとあると思うんですけど、実は万人に受けるものはなくて、個人個人違うということが分かっています。だから、ダイエット本がいっぱい出るということなのかもしれません。
血糖値というのは、ご存じの通り糖尿病だけではなくて血管疾患も含めて、かなりさまざまな病気に影響することが分かっています。
今、血糖値を測るものは針を刺して血液を採り測ります。人間ドックでも針を刺して血液を採りますよね。市販の測定器は、腕等にシールを貼りますがこの裏に針があり、実際は少量の血液から血糖値を測る手法なんですね。ですので、お風呂に入っても常に付けているわけにはいかないので、NTTでは時計型の皮膚に接触させるだけで血糖値がリアルタイムに測れるというものを今、研究していまして、ようやくあの写真ぐらいの大きさになりました。
これは皮膚の上から電波を与えて、それの反射してくる信号を分析するとグルコース濃度が分かるというものです。うちのチームの中に毎回、忘年会をやるときに、これを付けてくる研究員がいて、みんな付けながらビールを飲んだ後に比べ合って、「俺は上がってないけど、おまえは上がってるな。飲むのをやめろ」みたいな、そういう無駄な競争をやっています。それぐらい皆さん、違っていて、付けている3人のリアルタイムでの血統値を見ると面白くて、本当に人により、血糖値が上がる食べ物は、違うということが分かっています。これが早くできるといいなということで、たとえ糖尿病になったとしてもその人その人の、例えば甘いものでも血糖値が上がらないものなども食べられるようになるということかなと思っています。
コーヒーを飲むと血管を若返らせるパターンと血管を収縮させるパターン、2つの成分が入っていて、どちらが効くかということですが、これも人によるんですね。カフェインの吸収量が多いDNAを持っている方は、飲めば飲むほど血管を若返らせるんです。「コーヒーなんか良くない」という話もありますが、逆パターンの人もいることが分かっています。
これは全ての薬についてそうで、ビタミン剤とかも人により吸収量が違いますし、必要な薬の量も人によって違います。血液が私ぐらいの年齢になってくると、どろどろとして血栓ができやすくなると思うんですけど、血栓を溶かすワーファリンという薬は、必要な量が人それぞれで20倍違うといわれているので、1錠飲んで効く方もいれば、20錠も飲まなければいけない方もいるということだと思います。しかし、今は、平均の10錠を飲んでいただいているのだそうです。そうすると実は全く効いてないという方もいれば、飲み過ぎで本当は良くないという方も実在している状況になっているといわれています。
ですので、こういったものをメディカル領域において電子カルテを分析することで、もっとパーソナライズできないかということを進めています。
電子カルテは、大きな病院は9割以上入っているんですけれども、ドクターの書き方がそれぞれのため、患者さんから聞いた言葉を、「昨日から倦怠感の症状あり」とか、倦怠感と書かず「10月31日から体が重い感じ」とか、かなりドクターによって書き方が違うので、構造的にデータを分析するのが難しかったんですね。
倦怠感のレベルというのは国際標準の定量化指数があるので、生成AIを使って、これを全部、グレード1・2・3というふうに、ドクターごとの表現を定量化していくことで、電子カルテが分析できるようになり、結果的に一人一人に合った薬ができるのではないかということにチャレンジしています。電子カルテ×生成AIで、プレシジョンメディシンという、個人にパーソナライズ化された最適な薬、医療ができないかということを進めています。
AIによって、さまざまなものがパーソナライズ化されてくると、必要な分だけ、もしくは効き目のある薬だけということを実現できAIによって効率化や最適化につながり環境問題の対応につながる側面もあるのではないかと考えています。
モビリティ
今度はモビリティです。モビリティも、ご存じの通り路線バスが次々に廃止になり、タクシードライバーさんは4年で2割、2023年の段階で2割減っているという状況かと思います。これも2023年の段階ですけれども、ウェイモというジャガーの車を自動運転させる、サンフランシスコで。これに乗られた方はいらっしゃいますか。乗られましたか。私も乗ってびっくりしましたけど、まずジャガーなんです。ジャガーなので、普段はあまり乗らない高級車が無人で来てくれて、乗ると本当に凄く安心・安全な、タクシーよりも安全な感じに感じました。きちんと車線変更もしますし、スムーズに行きたいところに連れていってくれるという、本当に凄いなと思ったのですが、こういったものもどんどん出てきています。自動運転のレベルも、今はどんどんとレベル1・2・3・4・5と、海外はいろいろなプレーヤーがやっていますが、かなり進展しているかと思います。
NTTグループも、ドコモやNTTコミュニケーションズ、今はNTTドコモビジネスに社名変更しましたが、こういったところが、いろいろな場所で社会課題解決に向けてオンデマンドバスなどに取り組んでいます。
これはつい先日の決算発表で発表させていただきましたが、ばらばらに各社がやっているモビリティに関するノウハウ、35件超の実証をやっていますので、これらのノウハウをまとめて、自治体の社会課題解決というか、交通弱者のところに、うまく届けられるようにということで1つの会社をつくり、社会課題解決が早くできればなということで進めています。
さらにこの先はトヨタさんと昨年10月に交通事故ゼロ社会の実現に向けてモビリティAI基盤を作ろうということをやっています。
自動運転技術は大きく2種類で、地図を車に学ばせて地図をベースに動かすというものが1つと、テスラさんのように人の目を模して、人の目をAI化して、モビリティに活用して自動運転をするという、大きく2種類あります。この2種類とも、まだまだ死角もあり、事故ゼロには遠いので、そこをもっと事故ゼロにできないかということで、その2つの技術に加えて社会インフラ、道路や信号など、もしくは他の車の車載カメラなど、さまざまなものを協調させて事故ゼロ社会を目指すということにトヨタさんと取り組んでいます。そのためには当然たくさんの先ほどのようなGPUが必要ですし、一番重要なものは③、常に切れ目のない通信を実現しなくてはいけないということで、「Cradio」という研究所の技術があります。
Wi-Fi、ローカル5G、セルラー、ミリ波、さまざまな無線をその場所その場所で最もいい状態のものを選んで接続していくことができるような技術です。これを発展させることで、先ほどのモビリティAIの切れ目のない通信基盤を作っていければと考えています。
実際にこれは実証でもやっているのですが、一度走ったときに、その場の環境や通信状況・利用状況など、全ての環境を学んで、その場所で最もよい接続先は何かを予測します。
例えば走っていくと、「3秒先はWi-Fiに切り替えたほうがいい。10秒先はセルラーに切り替えたほうがいい」みたいなことを、予測して、それをインプットして自動運転で使うことで、切れ目のない通信で情報を取得しながら走られるようにするというのがCradioの技術です。今後はより精度を上げていくということに研究所とともに進めています。
実際に万博会場で自動運転バスが走っていたことはご存じでしょうか。周辺を回っていました。こちらも開催前に自動運転バスの走行ルートの無線通信品質調査を行って、品質を維持するためのビーム方向など、基地局パラメータと追加基地局の位置を出して、実際に開催期間中、それを組み合わせて走行ルートで安定化した品質を確保していました。そのためにCradioを使っていました。お陰様で自動運転バスも事故なく走られました。以上が、モビリティです。
未来のコミュニケーション ~大阪・関西万博~
今、申し上げた万博、もう閉幕してしまいましたが、万博のNTTパビリオンでは未来のコミュニケーションを演出しました。こちらの図は、「コミュニケーション手法の変遷」ですが、視覚、聴覚から嗅覚や触覚まで、そしてコミュニケーションする場所も増えてきて、いずれは月とか、そういうところでも使えるようになるのではないかと考えています。五感全部が使えるようになるような通信が未来のコミュニケーションかなと思っています。
「五感を通じて同じ空間を感じるコミュニケーション」ということで、地球の反対側でも、あたかも本当に近くにいるように感じるということを実現しようということを大阪・加関西万博のNTTパビリオンでは披露しました。
70年前の大阪万博のときには、電気通信館でワイヤレステレホン、これは携帯電話ではなくて家の中の電話機のコードがなくなったコードレスホンだったんですけれども、を出しました。そして、今回の大阪・関西万博では空間を丸ごと伝送するということをやりました。
コールドスリープされるPerfumeさん、70年前の万博が行われた記念公園にステージがあり、そこでPerfumeさんが踊っているステージを丸ごと3D空間、触感も含めて今の大阪・関西万博会場へ送り、リアルタイムにNTTパビリオンの会場で再現するということをやっていました。NTTパビリオンに行かれた方いらっしゃいますか。ありがとうございます。大変人気で、お陰様で好評をいただきました。4月2日の日に実際にリアルタイムで伝送してやりました。それを録画しておいて追体験していただく形になっているんですけれども、あまりに遅延がないので、作った完パケの動画じゃないかと思われるぐらい、本当に何を伝送したんだろうと思われるぐらい自然でした。でも、「それは結論、Perfumeの踊りがうまいんじゃないか」という話もあり、いろいろと言われたんですけれども、非常に良かったなと思います。
それから「1万人の第九」は、万博の開幕の際に行われたものなのですが、大屋根リングの上に7,000人が並んで、下にオーケストラが3,000人ということでやりました。
半径1キロぐらいの大屋根リング上に7,000人が並ぶので、端と端の方は、端の方が歌ってから一番端の方に伝わるのに実際には3秒ぐらい音速で遅延があるんですけれども、それをIOWNという光のネットワークでつなぐことで遅延をなくしていました。が、それはたぶん佐渡さんという指揮者が良かったのかなと、みんな思っていらっしゃるのではないかと、裏の技術・苦労は説明しないと分かっていただけないのが悲しいところです。
あとは超歌舞伎というものを万博でやりました。台湾と万博会場をつないで、台湾会場にいる悪者が万博会場にいる中村獅童に切り付けられるということも自然に遅延なくできました。冒頭、右側に出てきた隈取しているのは社長の島田ですけれども、これは実際には付けてなくてデジタルです。これが目立って観客の笑を誘い、中村獅童に「俺より目立っていた」と指摘されるという、そんなこともありました。ということで、いろいろなことをやっています。
「進化だけでは 幸せはつくれない。 幸せな進化をつくれ」とも思っていて、我々はもう少しカスタマーエクスペリエンスを重視していこうということもやっています。
T-モバイルがついにAT&Tのシェアを抜いたのですけれども、これは顧客体験を重視されていた、デルタもCX(カスタマーエクスペリエンス)を経営の根幹に置いて、デルタは5年連続で顧客・ブランド価値ランキング1位ということだったり、ウォルマートもアマゾンに抜かれずにずっと来ているのは、「エクスペリエンスを大切にしていく」ことが根付いているからといわれています。我々もそうあるべきと思っています。通信品質も、これまではスループットを指標の一つにしていましたが、お客様の体感品質をみていくべきと変わってきました。最近、イギリスの独立系調査会社のオープンシグナルさんが、日本の最新モバイルネットワークユーザ体感調査をやっています。スループットではなくて、5Gでの動画視聴体験、ゲームプレー時の体感品質、音声アプリ体験ということを指標化して調べていらっしゃいます。ソフトバンクさんは、常にリードされていて、うちは劣勢なんですけど、こういったところも含めてご利用者の体感品質ということが重要になってきたと思っています。
先ほどのCradioで何とか体感品質を上げていくことができないかということを、後追いですけれども、やっている状態になっています。無線のリソースの制御技術によって、スループットではなくて、お客様の使い方、動画とかの体感の状況に応じてチャネルが切り替えられないかということにチャレンジしています。
例えばBPでも工場の無線LANの構築の設計に、それを使っています。
IGアリーナの高密度Wi-FiもCradioを活用して設計しています。私がBPにいたときは、現地に調査に行って、めちゃくちゃ時間がかかったんですけど、今はこれで、かなりデジタル上で設計できるようになりました。NTTグループとしては、CXということで、「何が必要なのか」ではなくて「なぜ必要なのか」ということに着眼して、皆様の顧客体験を意識しながら、新しいことにどんどんチャレンジしていきたいなと思っています。
新たな価値創造へのチャレンジ ~想像と創造
通信を含めたITテクノロジは、いろいろなことの可能性を広げますし、AIが急速に進展していますけれども、人間というのはAIによって導かれた選択肢の中から、何を選ぶかということだと思っています。人間はイマジネーションの想像と、それをもとにしたクリエーションの創造、想像と創造でAIの先にさらにいろいろなことができるんじゃないかなと、私はAIが人間を凌駕するというところは来ないと思っている派です。そういった意味では、IOWNによる低消費エネルギーは、AIの効用と地球環境負荷軽減を両立し、未来を想像して創造する人間の力を引き出し、その先の人と地球の笑顔につながるようになれば嬉しいなと思っています。以上で終わらせていただきます。
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