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海外情報
海外で「屋内位置情報」ビジネスが再び活況か!?

岩本賢二

屋内位置情報サービスというと、どういったサービスを思い出しますか?例えばBLEビーコンによる位置情報サービス、あるいはSuica改札による子供見守りサービス。RFIDによる位置情報サービス、Wi-Fi三点測位による位置サービスなどいろいろな物があります。
日本では2010年頃にWi-Fi位置検知技術を応用した病院内機器管理システムが多くの病院で採用され有名になりました。これらのサービスは既に一段落した感がありましたが、最近のIoTブームに乗ってまた新しい企業やサービスが生まれ競争が激化しようとしています。
本メールマガジンでも5月号、6月号、7月号において北條会長から位置情報の技術についての寄稿が掲載されましたが、IoTの中心的存在である位置情報についての海外での動きをご紹介します。

ノルウェーで創業されたForkbeard Technologies社はFast Ultrasound Echo Location(FUEL)技術という超音波を利用した屋内位置情報サービスを開始しMobile World CongressやFiercewirelessで話題になっています。この会社の特徴はBLEのようなシンプルな存在検知に頼らず、超音波を利用したultraBeaconsという超音波発信器を室内に取り付け、そこから発信される超音波をGPS衛星からの電波の様に利用してスマホで自分の位置を知ることが出来るそうです。

筆者は過去の経験から「位置情報サービス」というビジネスでは以下のような違いをまずは理解する必要を知っています。

・どちら側が位置を取得するサービスか?

GPSのように端末側で位置を把握する技術を端末型位置測位と言います。一方で複数のWi-Fiアクセスポイントなどで端末側の電波を測定して位置を割り出すタイプをサーバー型位置測位と言います。端末型位置測位は端末側で位置を測定するためプライバシーを守りやすい一方、インフラを構築するメリットが出しにくくビジネスに繋げるのが困難です。
一方サーバー型位置測位は、一方的にサーバ側で位置を測定してしまうのでプライバシー保護の観点で管理が大変ですが、インフラを構築する側にビッグデータが集約されるのでビジネスとなりやすい傾向があります。

・どのタイプの位置情報か?

位置情報と言えばすぐにX、Y、Z座標を思いつきますが、実は大きく分けて3種類の位置情報が存在します。
「座標検知(Coordinate)」「存在検知(Presence)」「通過検知(Pass)」がその3種類です。
GPSのような座標取得の場合が日本人には理解しやすいのですが、存在検知や通過検知も重要な位置情報です。

前出のForkbeard社は端末型の座標検知を行う会社のようです。技術のベースは複数の超音波信号の受信状態を分析して座標を特定するというものです。一般的に超音波を利用した位置検知ソリューションは存在検知を行うものが多いので、超音波で座標検知を行うForkbeard社の技術は目新しい技術と言えます。

超音波をGPS衛星の様に使うForkbeard社のFUEL技術

一方米国には老舗企業Stanley Black & Decker社のグループ企業としてStanley Healthcare社が存在します。この会社は病院内での位置検知ソリューションを本気で実現するために様々な位置情報ベンチャー企業(WanderGuard、Ariel、Aeroscout、Hugs社といった企業)をこれまで買収してきました。Stanley Healthcareは既にこれらの技術の統合を完了しており、病院内でWi-Fi、LPWA、超音波、長波など様々な媒体を利用して座標検知、存在検知、通過検知の全てを実現しています。またCisco社をはじめ、病院内の通信インフラを担う企業と既に提携しています。

Stanley Healthcare社による多彩な位置情報システム群

一段落した位置情報分野に新たなプレイヤーが多数参加してきており、Forkbeard社のような新興企業がStanleyのライバル企業となるのか買収されていくのか興味をそそるところなのです。また、医療関係にとどまらず産業分野、公共分野において位置情報サービスの新しい競争が生まれてきそうです。今後の動向が注目されます。

参考:
https://www.fiercewireless.com/wireless/forkbeard-challenges-bluetooth-for-indoor-positioning-crown
https://www.stanleyhealthcare.com/
https://forkbeardtech.com/


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