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ビジネス情報
ローカル5G 登場のインパクト

Wi-Bizでは4月26日、IT通信ジャーナリストの藤井宏治氏を講師に招き「地域(ローカル)5G 」をテーマとした勉強会を開催しました。概要を紹介します。

今日は、企業が自営無線として利用できる5Gシステム「ローカル5G」をテーマに話をします。

ローカル5Gは、昨年末から情報通信審議会の作業班で議論されてきていて、私もその議論を追ってきたのですが、その構想が一般に広く人々に知られるようになったのは、やはり日本経済新聞が4月5日の朝刊1面トップで「工場向け『地域版』5G」「NECやパナソニックが参入」と報じてからだと思います。「一体これはどういうことなのか」と、思われた方も多いのではないでしょうか。

ここでは日経の記事でいう「工場向け『地域版』5G」、すなわち「ローカル5G」とはどういうものなのか、そして「参入」と報じられたNECやパナソニックは、ローカル5Gを使って何をしようとしているのか、この2点を中心に話を進めていきたいと思います。

1 ローカル5Gとは何か

総務省がローカル5Gの構想を初めて明らかにしたのは、2018年11月に公表された5G用周波数帯の割当指針(特定基地局の開設指針)案でした。この中で5Gへの割当てが計画されている周波数帯(3.7/4.5GHz帯、28GHz帯)のうち、4.5GHz帯の200MHz幅、28GHz帯の900MHz幅の計1100MHz幅を「自営用等で利用できる割当枠」として検討していることが示されました。

この1100MHz幅という帯域ですが、今年4月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の携帯電話事業者各社に割当てられた5G用の周波数(1社あたり500~600MHz幅)のほぼ倍に相当します。総務省のローカル5Gへの力を入れようが窺えます。

もう1つ、インパクトが大きかったのが導入時期です。総務省は、このローカル5Gの候補周波数のうち、まず28GHz帯の100MHz幅を先行利用する方針を打ち出しました。この帯域は4月に携帯電話事業者4社に割当てられた周波数帯と同時に干渉検討が終わっていたからです。

昨年12月から5Gの技術的条件を議論している新世代モバイル通信システム委員会(以下委員会と表記)の作業班で、技術面だけでなく制度設計についても議論が進められ、今年4月に委員会の報告書が取りまとめられました。これを受けて総務省は制度整備を進めており、今秋9~10月には28GHz帯100MHz幅のローカル5Gの免許申請受付ができるようにしたいと考えています。年内には第一陣の免許がおり、おそらくPoC(概念実証試験)になると思うのですが、ローカル5Gの運用が始まることになるでしょう。総務省が導入を急ぐのには、ローカル5Gを安倍内閣の新成長戦略の目玉として打ち出したいという狙いがあるようです。

ローカル5Gで利用が計画されている周波数帯

では「ローカル5G」とはどのようなものなのでしょうか。

いくつかの側面を持っているので一言では表現し難いのですが、まず無線局免許制度の面から捉えると「一般の企業が限定されたエリアで、周波数の割当を受けて自ら運用できる5Gシステム」(あるいは無線局免許制度)ということができると思います。

5Gの公衆サービスでは、数社の通信事業者に全国規模で免許が付与されます。これに対しローカル5Gでは、一般の企業や団体(条件を満たせた個人でも)が免許を受けて5Gを運用できます。ただし、自社の施設内など限られたエリアでしか使えません。

委員会の報告書では導入目的にフォーカスし、ローカル5Gを「地域ニーズや産業分野の個別ニーズに応じて、様々な主体が柔軟に構築/利用可能な5Gシステム」と定義しています。

5G時代の多様なニーズにはキャリアのサービスだけでは十分に対応できない。その受け皿として「ローカル5G」を制度化し、5Gの普及を加速させようという訳です。

報告書では、あわせてローカル5Gのコンセプトとして、①5G技術を利用すること、②比較的小規模な通信環境を構築すること、③「無線局免許を自ら取得することも、免許を取得した他者のシステムを利用することができる」ことの3点を挙げています。最後の「免許を取得した他者のシステムを利用できる」ことは、ローカル5Gのビジネスを考える上で、重要なポイントになります。

 

最後に、導入メリットから捉えると、ローカル5Gは「超高速大容量通信」「超低遅延通信」「同時多数接続」を実現できる5Gの特徴と、自営無線の持つ次のような利点を併せ持つものと考えることができます。

A)帯域を占有できるため、通信速度の変化が少ない安定した通信が期待できる

B)オンプレミスでネットワークを構築することで大規模災害時でも通信手段を確保できる

C)データを外に出さないため高いセキュリティを実現できる

D)自らのニーズに応じて、柔軟なエリア設計や規格の導入が可能

5Gの有力なマーケットであるスマートファクトリー(工場の無線化)や建機の遠隔操縦など、特定の産業分野向けユースケース(バーティカル)では、こうした自営無線の利点を評価する企業が多いのではないでしょうか。

こうした自営無線として利用できる「地域版5G」の実用化を進めているのは日本だけではなく、欧州を中心に大きなトレンドになりつつあります。

特に意欲的なのがドイツで、5Gで利用を計画している周波数帯のうち、3.7GHz帯の100MHz幅(3700-3800MHz)をオークションにかけずに、日本のローカル5Gと似た「地域版5G」(ローカル&リージョナルネットワーク)として企業などに割当てる方針を、昨年3月に発表しました。ドイツでは5GをIndustry 4.0の実現手段として位置づけており、この「地域版5G」も主にスマートファクトリーなどで利用されることが期待されています。発表を受けてフォルクスワーゲンやシーメンスなど多くの企業が「地域版5G」を利用する意向を表明しています。

この他、スウェーデン、英国、オランダ、フランス、フィンランドなどでも同様の制度の導入が検討されているようですが、実際に周波数を確保し、割当準備を進めているのは、日本とドイツだけです。世界初の「地域版5G」をどちらが先に実用化するかを、日本とドイツが競っているのです。

2 「自営BWA」も利用可能に

ところで、今秋には、28GHz帯100MHz幅のローカル5Gとあわせて新たに制度化される「自営BWA」の免許申請の受付も始まります。自営BWAは、日本初の本格的な「プライベートLTE」の実現手段となり得るものです。

海外では、LTEを自営無線として利用する「プライベートLTE」が2015年頃から鉱山、空港、港湾などで使われるようになりました。最近ではスマートファクトリーの実現手段としても注目されています。制度整備がなされていないため、日本では利用できませんでしたが、「自営BWA」の制度化で「プライベートLTE」が解禁されることになります。

自営BWAは、地元密着の通信サービスを提供している「地域BWA」用に割当てられている2.5GHz帯の20MHz幅(2575-2595MHz)の帯域を、「地域BWAで使われておらず、使われる予定もない場所」に限って、LTEによる自営無線で使えるようにしようというものです。BWAでは当初のWiMAXに代わって現在LTEが主力システムとして使われています。

自営BWA導入には、大きく2つの狙いがあります。

1つは市区町村の8割で未利用となっている地域BWA用周波数帯の有効利用です。さらにもう1つより大きな狙いとなるのが、ローカル5Gの導入環境の整備です。

日本をはじめ多くの国では5Gを、LTEのエリアの中に5Gのエリアを構築して両者を一体運用し、5Gの通信制御をLTE網で行うノンスタンドアロン(NSA)方式で展開することが計画しています。NSAでローカル5Gを展開するにはLTEのネットワークが必要になります。携帯電話事業者のLTE網を使うことも選択肢の1つですが、この形ではローカル5Gの展開が、携帯電話事業者のネットワークやビジネスに制約されることになります。

そこで、別の選択肢として、地域BWAのLTEネットワークの活用も検討されているのですが、地域BWAのサービスがまだ使えない場所が少なくありません。そこで、自営BWAと組み合わせてNSA型のローカル5Gを構築できるようにしようという訳です。

もちろん自営BWAを単独で利用することもできます。自営BWAには、市販のLTEスマートフォンやデータ端末の多くがそのまま利用できるなどの利点があり、本来企業にとっては魅力的な無線システムといえます。

しかし、現状では運用面での制約が多いため、広く普及することにはなり難いようです。

前述したように、自営BWAは地域BWAがサービスを行っている場所では利用できません。さらに、周波数利用の優先順位が地域BWAよりも低いため、自営BWAが先に運用してもその場所新たに地域BWAがサービスを行う場合は、自営BWAは電波を止なければなりません。継続的な運用が担保されないのであれば、導入に二の足を踏む企業が多くなるでしょう。

報告書では、こうしたケースでは、地域BWA事業者と自営BWAの利用者が話し合いの場を持つことを求めています。総務省は、自営BWAで利用しているアプリケーションを地域BWAのネットワークを用いて継続して利用できるようにすることが、解決策の1つになると考えているようです。

また、携帯電話の電波が届かない山間部などにプライベートLTEのネットワークを構築し、映像伝送などに使うといった用途を有望視する向きもあります。こうした場所で地域BWAがサービスを行うことはまず考えられないからです。

なお、5Gを単独で運用するスタンドアロン(SA)と呼ばれる方式も、すでに標準化されていて、年末から来春には機器の調達が可能になると見られています。中国はSAを当初から5Gの主力として展開することを考えています。とはいえ、世界の5Gの主流はNSAですから、SAに対応した端末や基地局装置などの選択肢は、当面限定されることになりそうです。

3 「28GHz帯100MHz幅」の免許スキーム

では、ローカル5Gは具体的にはどのようなものになるのでしょうか。

4月に取りまとめられた委員会の報告書で、年内に利用が始まる28GHz帯100MHz幅についての免許条件や運用ルールなどが固まりました。

残りの4.5GHz帯200MHz幅。28MHz帯の800MHz幅については、委員会の作業班で12月を目途に議論が行われ、これを踏まえて2020年6月以降に制度化が行われ、ローカル5Gが本格展開されます。

報告書で示された免許条件や運用ルールは、あくまで28GHz帯の100MHz幅を対象としたものですが、その内容はローカル5Gの基本的な考え方を示したものとなっており、本格展開でもこれは継承されると考えられます。これを踏まえてローカル5Gの具体的な姿を見ていくことにしましょう。

1)免許は土地・建物単位で

年内に28GHz帯の100MHz幅に運用が始まるローカル5Gの特徴として、まず挙げられるのが、原則として土地・建物の所有者や賃貸契約者など、「その“場所”を利用する権利を持つ者」に無線局免許が与えられることです。不動産を単位に周波数を割当てる制度は、日本ではもちろんですが、おそらく世界でも例がないでしょう。

総務省によると、これは「将来、多数の企業がローカル5Gを利用するようになっても対応できるようにした」ものだということです。先行利用される28GHz帯は電波があまり遠くに飛びません。遮蔽も容易です。その特性を利用して土地・建物単位でエリアを細かく切り分け、周波数の有効利用を図ろうという訳です。

この枠組みでは、ローカル5Gの運用エリアは、免許を受けた建物や敷地内に限られますが、例えばスマートファクトリーなど5Gの特定産業向けユースケースの多くは、このした形でも支障なく運用できます。

周波数の割当てをどうするかは総務省で検討中ですが、先行利用される28GHz帯100MHz幅では、おそらく100MHzの帯域が免許エリア毎にまるごと利用できるようになるのではないでしょうか。そうなれば最大通信速度3Gbps超の超高速自営無線が実現できます。

2)「他者土地利用」の考え方

28GHz帯100MHz幅のローカル5Gの免許に関して、もう1つ押さえておく必要のあるポイントに、運用ルールに盛り込まれた「他者土地利用」の考え方があります。

ローカル5Gでは、基本的にはユーザーが権利を持つ土地・建物の中に基地局を設置して、できるだけ外部には電波を出さないようにします。しかし、直進性が高く、遮蔽物による減衰が大きい28GHz帯の電波でビルの中をカバーしようとすると、多くの基地局が必要になります。こうした際に、ビルから離れた場所に基地局を設置し、窓などからビルの中に電波を届かせるといった手法も検討されています。この場合、基地局とビルの間に、他者の土地や道路などがあっても運用できるようにしようというのです。この場合、またいだ土地の権利者がローカル5Gを利用した場合は、他者土地利用を行っている側が干渉を回避する措置をとらなければいけません。

当面、この「他者土地利用」は、基地局と端末双方が移動しない「固定通信」に限定して認められます。

ローカル5Gとあわせて制度化される自営BWAも、ローカル5Gと同じく土地・建物単位で無線局免許が付与されますが、2.5GHz帯は28GHz帯より電波が格段に遠くまで届くなどの理由から「他者土地利用」は認められていません。

ローカル5Gの運用形態(出典:新世代モバイル通信委員会報告書)

3)委任・同意で広がるビジネスチャンス

委員会の報告書で示された免許要件の中で、ローカル5Gのビジネスを考える上で重要となるのが、土地・建物を利用する権利を持つ者だけでなく「所有者などから委任・同意を受けた者も無線局免許を取得できる」とされた点です。

5Gは技術的なハードルが高く、主に一般の企業が利用するローカル5Gでは企業が自ら免許を取得してネットワークを運用するのは困難である場合が少なくないためです。

総務省では、現状では5G基地局の設置・運用には上級資格の「第1種陸上特殊無線技士」の有資格者が必要であり、一般の企業にとっては人材の確保が難しいことから、この委託・同意のフレームを用いて、SIerなどにローカル5Gシステムの運用を委ねる形をとるケース多くなると見ています。

この委任・同意の枠組みと、前述の土地・建物単位の免許付与の考え方を組み合わせることで、新たなビジネスチャンスが生まれてきます。

その1つが、今述べたSIerなどが企業の委託を受けて、その場所でのローカル5Gの免許を取得し、基地局などを整備し、ネットワーク運用・管理をサービスとして提供する形です。この場合、通信網だけでなくアプリケーションを合わせて提供するケースが多くなるでしょう。

さらに、SIerやソリューションベンダーなどが企業の同意を得て、その会社の拠点などにローカル5Gの基地局を設置し、業務の改革を実現するサービスを提供するといった形も考えられます。

後ほど説明しますが、冒頭の「NECやパナソニックがローカル5Gに参入」というのは、これらの提供形態を意味しています。

4)通信サービスの提供も

もう1つ、ここにきて注目されるようになってきたものにローカル5Gを利用した通信サービスの提供があります。

ローカル5Gは特に用途が制限されていません。そこで、例えば、NTT東西が住宅地に保有している電柱にローカル5Gの基地局を設置し、家庭向けにFWAによる超高速ブロードバンドサービスを提供するといったことができる可能性があるのです。(編集部注;NTT東西は5月の決算会見で、ローカル5G参入に意欲的な姿勢を見せています)

関西電力系の通信会社オプテージ(旧ケイ・オプティコム)は、すでにローカル5Gへの参入を検討していることを明らかにしています。グループ会社を通じて地域BWAサービスを展開している阪神電鉄も、ローカル5Gと地域BWAサービスを組み合わせてネットワークを高度化する構想を打ち出しています。

もっとも、ローカル5Gを用いた通信サービスが実現するのは少し先になりそうです。

今回の28GHz帯100MHz幅の運用ルールでも、他者土地利用の枠組みを用いて電柱に基地局を設置して家庭などにFWAサービスを提供することは可能です。ここで問題になるのが、その基地局から電波が届く範囲にある、土地・建物の権利者がローカル5Gを利用したいと考えた場合、通信事業者が干渉回避措置をとらなくてはならないことです。最悪、サービスの提供を中止しなければならないケースもありえます。これでは通信サービスには使えません。

今年夏頃から、残る4.5GHz帯200MHz幅、28GHz帯800MHz幅についての干渉検討と同時に、本格展開に向けた免許制度や利用ルールについての議論が委員会の作業班で再開されます。

本格展開に向けた議論では、通信事業や、自動車の自動運転など広いエリアで運用されるユースケースに対応するために、ローカル5G用帯域の一部について、例えば市区町村など、より広いエリアを単位に免許が得られるようにすることも検討されることになりそうです。

この委託・同意の枠組みで、もう1つ重要なポイントとなるのが、今年4月に公衆サービス用の5G周波数の割当を受けた、携帯電話事業者4社は、企業などの委任を受けてローカル5Gの免許を取得することが禁じられていることです。企業向けのサービスは、割当てを受けた公衆サービス用の5G用周波数帯で提供できるという考えからです。

同時に、企業がローカル5Gを用いて構築したネットワークを、トラフィックオフロード用などとして、これらの通信事業者に貸し出すことも禁じられています。

総務省には、ローカル5Gを携帯電話事業者のビジネスと切り離すことにより、両者の競争を促進しようという考えがあるようです。

4 NECとパナソニックはローカル5Gで何をしようとしているのか

最後に「ローカル5Gに参入」と報じられたNECとパナソニックが、ローカル5Gでどのようなビジネスを展開しようとしているのかを見ていきましょう。

1)ソリューションとプラットフォームビジネスの2本立て

NECのローカル5Gの取り組みは大きく2つに分けて考えられます。

1つは、オーダーメイドで企業のローカル5Gシステムの構築・運用を担うソリューションビジネスです。NECではローカル5Gの構想が明らかになった昨年末から顧客企業を中心にローカル5Gがどのような形で活用できるかをヒアリングし、今年秋からまずPoCを行うことを計画しています。ローカル5Gの免許の第一陣にはNECが名を連ねることになるでしょう。「工場」はその主要なターゲットの1つになります。

もう1つの取り組みが、プラットフォームビジネスです。具体的な構想は明らかにしていませんが、例えば重機の遠隔操縦を実現するプラットフォームをパートナーと協同で構築し、建設会社などにサービスとして提供するといったことも検討の対象となっているようです。今回の28GHz帯100MHz幅の枠組みでも、施主の同意を得ることで、ローカル5Gによる遠隔操縦サービスを提供することが可能です。

またNECが強みを持つ画像認識技術を活用したプラットフォームによるサービス提供も考えられるでしょう。

2)地域BWA向けシステムパッケージが基盤に

パナソニック(所管は法人向けソリューションを展開する「パナソニック システムソリューションズ ジャパン」)の構想は、同社が昨年11月に発表した「プライベートLTEネットワークシステム」を基盤としたものです。これは、地方自治体が手軽に地域BWAサービスを提供できるようにすることを狙って開発中のシステムパッケージです。

この製品は、自治体の庁舎などに、EPC(LTEのコアネットワーク)を配置して災害時でも通信手段を確保できる点を売り物にしています。そして1つの売り物が、地域BWAネットワークの運用管理をリモートでパナソニックが行える仕組みを設けていることです。自治体に有資格者(地域BWAの運用には第3種陸上特殊無線技士が必要)がいなくても、手軽に地域BWAを運用できるようにしようというのです。SIMの発行・管理もパナソニックが行える体制を整えています。

パナソニックの「プライベートLTEネットワークシステム」

地域BWAのネットワークは、防災や農作業の効率化などに活用されており、パナソニックは実証実験にも取り組んでいます。

パナソニックではプライベートLTEネットワークシステムのEPCを自営BWAや5Gにも対応させることを計画しています。実現すれば地域BWAや自営BWAをアンカーとするNSA型のローカル5Gを実現することが可能になります。またEPCのsXGP(LTEベースのデジタルコードレス用自営無線)への対応も検討されており、将来的にはsXGPとローカル5Gを組み合わせて、工場などに導入することも可能になりそうです。

3)「Wi-Fi+ローカル5G」で広がるビジネスチャンス

見てきたように、ローカル5Gは2020年頃からかなり幅広い企業で利用されるようになることが、予想されます。

Wi-Fiビジネスに携わっておられる方には、ローカル5Gが企業向けのWi-Fiソリューションと競合するのかに関心あるのではないでしょうか。結論からいえば、既存のWi-Fiビジネスとローカル5Gが競合する懸念はありません。

確かに、ローカル5Gには、低遅延通信への対応や高品質な音声通信に対応できるなど、オフィス向けのソリューションとしても優位性があります。反面、コストやプレイヤーの数などを考えれば圧倒的にWi-Fiが有利です。運用に第1種陸上特殊無線技士の資格が必要なローカル5Gに対して、免許不要で利用できるWi-Fiは大きなアドバンテージがあります。

他方、スマートファクトリーなど、Wi-Fiが将来的に狙っているマーケットにローカル5G早期に導入され、Wi-Fiの活用領域の拡大の機会を奪ってしまう可能性は十分にありえます。

今後企業向けにWi-Fiソリューションを展開しているSIerがローカル5Gを品揃えしていく動きが広がるのではないでしょうか。ローカル5Gのライバルは通信事業者の5Gサービスであり、Wi-Fiとは補完関係にあるのです。

無線LANビジネス推進連絡会の活動も、今後はローカル5Gを含む自営無線システムを視野に入れた形になっていくではないではないでしょうか。

ローカル5GとWi-Fiの関係


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