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[トップインタビュー]
  パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社
  執行役員
  パブリックシステム事業本部 システム開発本部本部長  高嶋 靖彦 氏

「現場プロセスイノベーション」に注力
  自治体/インフラ企業の省力化をWi-Fiで推進

パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社(以下、PSSJ)は、パナソニックグループ内で「B to B」のビジネスを担っており、特に自治体や社会インフラ関係の事業を中心に推進している。高嶋本部長は、人手不足対策、働き方改革が社会的に課題となるなかで、パナソニックが提唱する「現場プロセスイノベーション」が強い期待を集めているという。また、顧客に最適なネットワークソリューションを提供することがキーとなっており、Wi-Fi事業をさらに進めていくと同時に、LPWA、ローカル5Gなども含めた最適なソリューションを整えていきたいと述べる。

無線技術、画像技術を活用し自動化による生産性向上を

――PSSJの事業領域を教えて下さい。

高嶋 パナソニックでは7つの社内分社(カンパニー)があり、その1つ「コネクティッドソリューションズ(CNS)社)」に属しており、「B to B」のビジネスを主にやっています。

私たちはB to B分野の中でも日本地域を担当しているということで「パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社」という会社で事業を行っています。

CNS社の方針として、パナソニックの製造現場などで培ってきた知見や技術が、さまざまな企業や社会のお困り事を解決することで、お客様の現場のプロセスをイノベーションしていく、これを我々は「現場プロセスイノベーション」と称し、活動を行っています。パナソニックのもつコア技術、さらにそれを形にした商品を駆使し、お客様の現場のさまざまなプロセスを、例えば自動化することで生産性を向上するという事業になります。

日本全体の社会課題としても、労働人口が少なくなってきていて人手不足なども深刻化しています。また、働き方改革という取り組みにおいても、お客様の現場をいかに省力化するか、人を掛けずにできるかというところが、我々のお役立ちのポイントではないかと考えています。

――主なユーザーはどういうところですか。

高嶋 コネクティッドソリューションズ社はグローバルですが、PSSJの対象は、日本全国の法人もしくは官公庁・自治体がお客様となります。

私が直接担当しているのは「パブリックシステム事業本部」で、1つは官公庁や自治体です。もう1つは社会インフラの法人企業です。通信業界のキャリア事業者、エネルギー業界の電力事業者やガス事業者、交通事業者、放送事業者など社会インフラを支えている企業が私たちのお客様になります。

――自治体と、社会インフラ系のところが中心になるわけですね。主要事業にはどういうものがありますか。

高嶋 例えば、自治体向けの防災行政の無線システム、高速道路のETCシステム、警察の信号を制御するような交通管制システムなどを手掛けています。

さらに、羽田空港の顔認証による本人確認の自動化や、駅の沿線のセキュリティカメラ、放送局の設備等を行っています。

我々は長年、お客様と一緒に、社会インフラの現場プロセスイノベーションに携わっており、日本の社会の現場をイノベーションしてきたと思っていますし、これからも続けていきたいと思っています。

――この分野での御社のプロダクト、ソリューションはどういうものになるのですか。

高嶋 現在の社会課題を踏まえつつ、もっとお客様の現場を省力化するというところに取り組んでおり、そこにICTをいかに活用していくかというところが我々のミッションです。さまざまなコアシステム、もしくはコンポーネントというものがありますので、それらを進化させつつ、データを集め分析して、お客様の省力化を実現するというサイクルになるわけです。

コアとなるテクノロジーとして、Wi-Fiもこの中に含まれますが、我々の強みである「無線のネットワークの技術」「画像処理の技術」、これらをコアとしながらも、AIといった新しいものを取り込み、一層 お客様の省力化を実現していきたいと思っています。

プロダクトとしては、エッジデバイスやカメラなど、さまざまなものがあると思いますが、それとお客様の業務サーバを載せるクラウドサービスを提供します。そして、それをつなぐネットワークとして、Wi-Fiをはじめとし、これからは5Gも含めたネットワークを提供します。このような技術を、我々はプラットフォームという形でお客様に提供します。エッジから、それをつなぐネットワーク、さらにお客様にクラウドサービスを提供する、『トータルソリューション』を目指しています。

ますます広がるWi-Fiとその活用領域

――Wi-Fi事業はどういう取り組みになりますか。

高嶋 『トータルソリューション』の提供を我々は目指していますが、Wi-Fi等のネットワークは我々がこれまで既に注力して行っています。

例えば、我々が1番 力を入れている「公衆Wi-Fi」において、特に2020に向けては鉄道やバスなど、さまざまな移動体にLTEでつながる小型のアクセスポイントを多く導入させていただいており、社会全体の「公衆Wi-Fi」の整備を行っています。

さらに、自治体関係にも注力しています。例として、北海道の蘭越町の「行政通信システム」があります。これは市町村が住民向けに提供しているサービスです。非常時に、緊急一斉放送を行い、住民に連絡を行います。また、Jアラートと連動することで、お客様の生活に欠かせないインフラ設備となっています。この「行政通信システム」の中にも5.6GHz帯を使った無線LANを導入させていただいています。

――Wi-Fi網を町内に張り巡らせ、センターからのIP告知システムで音声も流すわけですね。

高嶋 そうです。まさに社会インフラを支えるという事業をやらせていただいており、住宅向け通信環境を提供しているわけです。

今後は、「公衆Wi-Fi」において、2020以降は、5G連携Wi-Fiに加え、これまでのWi-Fiの更改事業も出てきますので、我々としては高速の11axを見据えつつ、5Gと連携できるようなWi-Fiをどんどん展開していきたいと思っています。

――通信事業者はもちろん、エリアオーナーというかプライベートWi-Fiも、当然、次世代に移行していきます。そうするとネットワークの入れ替え需要が出てきます。

高嶋 我々は、11axに対応したものを展開しきたいと考えています。また、自治体業界は、Wi-Fiを組み合わせていろいろなシステムを構築しているので、こちらもトータルで推進したいと考えています。

――Wi-Fi事業における、他の業界での展開はどうなりますか。

高嶋 先ほど申し上げた「現場プロセスイノベーション」において、エネルギー業界や交通業界が挙げられます。たとえば鉄道会社様では、車両内に設置されているカメラで、車内の映像監視をしています。車掌がその映像を見つつ、同時に、WANで外部にも送信します。また、変電所等の洞道では、IPカメラを入れて監視します。作業者のウェアラブルカメラでセンター側に映像を送ります。

――こういうシステムはかなり現場では使われるようになっているわけですか。

高嶋 はい。実際にどんどん使われています。電力会社様などに納めさせていただいており、既に実際に現場で活用いただいています。現場の作業者の「目」として、現場がどう見えているか、遠隔から見て、指示をするわけです。鉄道会社様や電力会社様、そういったところでご活用いただいているものです。カメラと、センター側をつなぐネットワークということでWi-Fiとの組み合わせで展開していきたいと思っています。

――Wi-Fi事業のこれからの取り組みはどういうものですか。

高嶋 これは、もう少し先の話になりますが、例えば介護施設などに我々はシステムを提供していますが、今後、「現場をさらに省力化する」となると、施設内で、入居者の見守りセンサーとしてWi-Fiを活用します。さらにPHSが置き換わっていきますが、PHSの代わりにWi-Fiの活用があると思っています。

――これまで普及してきた構内PHSをWi-Fiで巻き取るということですね。

高嶋氏 介護施設内では必要になっていくと思います。我々は病院でも、これまでさまざまなシステムを導入しており、我々の強みのロボット等と組み合わせることで、そこで働いておられる方、もしくは、そこに入居されている方の快適な生活、もしくは省力化に貢献したいと思っています。

――Wi-Fi基地局をベースにして、介護のソリューションを作っていくというイメージですね。

高嶋 我々の持っているデバイスとつないでさまざまなソリューションを作っていくということです。あとは、「スマートファクトリー」ということで、これからもっと使われていくと思います。

これからロボットがさらに進化していく中で、我々の強みのロボットは、「ロボティクスネットワーク」として、切れないネットワークが必須です。このような場面で、最適化した形のネットワークの構築がWi-Fiを使ってできると思っています。

さまざまなシチュエーションもまさにお客様の製造現場を改善していくということでお役立ちできると思っています。

顧客に最適のネットワークを提供していく

――Wi-Fiがいいところと他のネットワークがいいところとあるわけで、それをユーザー最適で進めていくということですね。

高嶋 ネットワークは、お客様によって、シチュエーション毎に、最適なものは幾つもあります。Wi-Fiは1つの有力手段ですけれども、それ以外に今、LPWAや、プライベートLTE等も提案をすることが可能です。また、その延長としてローカル5Gというのも将来的にはやっていかないといけないでしょう。

お客様のアプリケーションやシステムの稼働環境によって当然、最適なものを選ぶ必要があります。お客様に最適なものを、いろいろな選択肢を持ってお届けできることが我々の強みだと思っています。 

――ローカル5Gは話題を集めています。

高嶋 そこはまさに適材適所です。ローカル5Gが適する場合と、そうでない場合もあります。適さない場合は、Wi-Fi等を利用、さらにコンビネーションを利用することでさまざまな組み合わせが提供できるのも我々の強みだと思っています。そのために、今多くのラインナップをそろえようとしています。

――ローカル5Gはどれぐらいのインパクトになりますか。

高嶋 進化する工場、スマートファクトリーをはじめ、我々のお客様だとプラントも同じようなニーズはあります。日本だけでも、かなりの数はありますので、利用ニーズはあると思います。

今のWi-Fiだと能力的に足りない場合、ローカル5Gに置き換わるということはあり得ると思います。また、スマートファクトリーに向けて、今までターゲットにしてなかったところがWi-Fiになるということも、もちろんあると思います。

――IoT、AI、5Gが注目を集めているのは、「デジタルトランスフォーメーション」の推進ということが言われているという面があります。そういう動きはどういうところで実感していますか。

高嶋 それは、日々実感しているところです。1つの例を申し上げますと、設備の点検などはまさに感じます。これまでお客様は目視で点検をしています。どれだけ錆が発生しているか、これは塗装しなければいけないのか、もしくは交換しなければいけないのか、そのために巡回して点検をしています。このような工程で、人力を使わないことが理想です。このような課題解決を、我々はすごく期待されていると思います。

先ほど申し上げたように画像認識の技術も持っている、無線の技術も持っているということで、画像認識で人が目視で判断しているところをオートマチックに置き換えることができます。お客様が巡回点検することなく、ネットワークを使って集めることもできますし、それをレポーティングすることもできると思います。

そうすると、お客様が足で巡視点検して、目で見て、レポートを書くという一連の流れを我々は自動化できる。今、ここに期待をすごく感じます。目視で点検するというようなところは、匠の技術というか熟練を要求されるわけですけれども、それを一気に自動化できるというのは期待が大きいです。

そういったものを我々のAIとか画像認識の技術を使うことで、伝承されたものを形にできるということで期待をされていて、そういったところを目指しているのです。

――日本全国に膨大な「現場」というものがあるわけですから、そうした現場には全て共通なソリューションになりますね。

高嶋 労働人口減少という本当に喫緊の課題を解決してほしいという期待もあるし、我々の技術をもってそこにお役立ちできればと思っています。この解決に向け、「データ取得→データ収集→データ分析→データのアウトプット」の一連の流れを我々の技術で実現できると思っています。

――他の分野では、ユーザー企業の取り組みは、いかがでしょうか。

高嶋 私どもがフォーカスしているのは省力化というところですが、それは働き方改革というところに繋がると思います。結局、人が行っていることをいかにして自動化するか、この変革をさまざまな業界で進めていますが、現場の人の期待はとても大きいです。

放送局の業務では、インタビュー後、文字原稿を起こすわけですが、これはすごく大変な作業です。現状は、徹夜作業が当たり前というなかで、まさに働き方改革をしなければいけません。「音声データをクラウド側に上げ、それが文字でアウトプットされる」このような技術を放送局に特化した形で進めています。放送局は全国に系列局がたくさんありますので、お客様のプライベートなクラウドでつなぐ方法で、どこでも使えるようにしています。他にも、設備点検での画像認識への期待や、サービス業界の顧客対応業務では音声認識の技術も期待されています。

――キーワードは労働力不足、技能者不足、働き方改革ですね。

高嶋 まさに、そこです。そこを我々がいかに補えるかというところだと思っています。

法人化でWi-Bizの発信力強化へ

――Wi-Bizの役割、これからの期待をお願いします。

高嶋 我々は、1メーカーですので、我々にできないことはたくさんあると思います。例えば、Wi-Bizで進めていただいているような情報発信だったり、Wi-Fiを推進するという啓蒙活動であったり、規制緩和だったり、そういったところは1メーカーや、1キャリア事業者ではできない領域だと思いますので、これからもどんどんやっていただきたいと思っています。

あとは「00000JAPAN」みたいな取り組みも、1メーカー、1キャリア事業者では絶対にできない取り組みですし、まさにWi-Bizでしかできない取り組みだと思うので、日本の社会全体を支えるというところで、これからもどんどんやっていただきたいと期待しています。

そういう意味では、法人化を目指されるということを聞いておりますが、一層社会でのプレゼンスが上がることで、どんどん展開力が強化されると思います。日本全体のWi-Fiを含むネットワーク整備を強力に推進いただくことを期待しています。


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