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新春座談会

Wi-Bizの「2019」を展望する  副会長、委員長が大いに語る

司会 櫻井副会長
出席 田中副会長、杉野企画・運用委員長、江副渉外・広報委員長、小松技術・調査委員長


左から 田中副会長、櫻井副会長、
小松技術・調査委員長、杉野企画・運用委員長、江副渉外・広報委員長

櫻井 明けましておめでとうございます。本日は新春座談会ということで、田中副会長、杉野企画・運用委員長、江副広報・渉外委員長、小松技術・調査委員長に、お忙しい中、お集まり頂きました。

昨年は、夏の暑さと災害の多さが記憶に残る年でしたが、まず昨年のWi-Bizの活動の成果を振り返っていただければと思います。

OOOOOJAPAN」で奔走した一年

江副 私たち渉外・広報委員会は、昨年「00000JAPAN」のPRをしようと思ったのですが、災害が多くて活動そのものがPRになったというのが、実際のところです。

一方で、昨年は総務省の補助金の勉強会をしたのですが、非常に好評でした。一昨年までは10数名でしたが、昨年は60名を越える方々に集まっていただき、門戸を開いて皆に来てもらおうというのが良かったと思っています。今回の勉強会の状況を見て、渉外・広報というかWi-Bizとしてやるべき方向が見えたなと思い、やってみて良かったと思っています。

やり残したことは一杯あるのですが、やはり委員会のメンバーの皆さんともリソース不足の中でやっているので、Wi-BizのPR活動、例えばでんぱ組.incとの連携とかは、昨年は4回くらいしかできていないのですが、もっといろいろとやれたんじゃないかと思います。

あと、昨年のビッグニュースで「NHKおはよう日本」が放送されたのは大きかったと思っています。事前に何度かミーティングを行い、どうすればわかり易く一般の方々に伝えられるかとディレクターの方とお話しする中で、私たちから見ると00000JAPANを使うのは簡単だと思っていたのですが、一般の視聴者の方にとってみると、分かりにくいものなんだなぁと、実感しました。アニメーションを作ってもらったりしましたが、いろいろお話しする中で、PRの難しさがよく分かったのもよかったです。8分間の放送でしたが、非常に大きな効果があったと思っています。

杉野 昨年は、00000JAPANを告知するという面で言うと、まずはパンフレットを作成できたのが成果だと思っています。ガイドラインも、より多くの方が入れるような仕組みにし、自治体さんにも多く入って頂いて良かったと思っています。

江副さんの話と重なりますが、昨年は災害が多く、その対応で時間が取られた反面、そこで非常に関心を持って頂き、総務省とのLアラートとの連携など話が広がった点は良かったと思っています。

残った課題としては、入って来る仕事で手一杯となってしまって、告知をやったり全国を回ったりということがなかなか出来なかったことが一つと、もう一つは00000JAPAN発動を告知するシステムを早々に作りたかったのですが、昨年は発動対応やパンフレット作成等に忙殺され、なかなかそこまで手が回らなかったので、それは来年の課題になっています。

小松 私は7月に吉田前委員長から引き継がせて頂き、前委員長の路線を進めるので精一杯だったなと思っています。委員会の雰囲気が少し固いので、皆さんの声を出して頂き、場の作り方に気を砕いた年だったと思います。運営上は、従来のスタイルで毎月いろんな会員の方々に発表頂いて、コンテンツとしては既定の路線でやらせて頂き、継続できて非常に良かったと思っています。

昨年は、11ax(Wi-Fi 6)やWPA3など、ドラスティックな話題が多かったわけですが、今年はそれがデプロイメントされていくということで、皆さんの関心も高いということもあるので、そこにどう応えて行くのかが課題と思っています。その仕組みがまだ十分出来ていないところが、昨年やり残したことだと思っています。

櫻井 ありがとうございます。田中副会長からWi-Biz全体について、昨年やったこと、やり残したことの総括をお願いします。

田中 私は副会長としては2年目で、その前は委員会に参加していましたが、やはり昨年は00000JAPANの年だったと思います。先ほども話がありましたが、どうしても災害が多かったので、そちらに引っ張られることになり、結果的にPRに繋がったわけです。Wi-Fiというものが重要な社会インフラであるということが一般の方々に知らしめられたかなと思います。

一方、無線LANビジネス推進連絡会の名前にもありますが、ビジネスの推進に貢献できたかなという面では、参加した当時から悩みでしたが、まだまだ十分ではなかったと思っています。私自身はメーカーの人間なので、製品がどれだけ世の中に出て行くのかという課題を持っています。おそらく企業の皆さんも、そのようなことを考えながら参加されていると思うので、そこに対して何かビジネスを推進するようなことができればと思っています。

櫻井 冒頭に災害が多かったと、申し上げましたが、やはり皆さんも同じような認識の一年でしたね。

杉野 昨年末に企画・運用委員会を行ったのですが、この2か月発動がなかったのと、ガイドラインとパンフレットつくりも一通り終わったので、来月は何を行いましょうかと話しました。企画・運用委員会の「企画」の部分がやっと取り組めるようになってきたという感じです。メンバー1人1アイデアで、今年新しくやることを出してもらうようにしています。そういう意味で昨年は少し特殊な年でした。

一方で、昨年は無線LANビジネス推進連絡会という名前からすると、会員同士でいろいろと仕事をもらうことが多くて、この団体がなければ知り合えなかった人たちと出会えて、個人的にはこの団体の意義を非常に感じることができました。

江副 先ほど、田中副会長が仰っていたビジネスの推進という面では、総務省の防災用のWi-Fi整備促進に、3年間でおよそ100憶円の予算がついていて、それの促進を進めてきています。これは、自治体にも進めてもらわないといけないことで、Wi-Bizの会員だけが頑張って進められる話ではないわけです。

会員企業の皆様も、自治体に提案に行かれる訳ですが、自治体はまだ動く気がないとか、来年でないとなかなか動けないところがたくさんあるので、自治体の取り組みを進める方向にしたほうが、ビジネス推進につながるのだろうと、今年すごく感じました。整備しなければいけない側が、本当に必要であると認識しないと進まないわけで、そういう意味では昨年は災害が多かったというのは大きなファクターになっていて、例えば「避難所ができたけどWi-Fiはあるのですか?」といった話をストーリー立てて説明し、自治体の方がそれを進めたいと思っていただくようにすることが大事だと感じます。

新製品、Wi-Fi新活用、IoT、連携拡大で市場活性化の年に

櫻井 それでは、次に「2019年がどのような年になるか」ということについて、議論を進めたいと思います。まず田中副会長から総体的に提起していただき、3委員長から担当する分野についてご意見を頂ければと思います。

田中 今年はWi-Fiという観点からすると、11axの製品が出そろってくる年ですし、ITの市場ということではIoTのキーワードにITを使ってマネタイズするビジネスが加速していくのではないかと思います。日本は攻めの投資が非常に少ないので、IoTで世界を引っ張っていくという国のメッセージがあるにも関わらず、「じゃあ何をしたらいいのだろう」ということが日本のユーザ、企業・自治体などにはあるのではないかと思っています。

IoTにおいては、何で繋がるのかというと、LPWAやZigbeeやBluetoothなどいろいろな形態がありますが、ある市場データで見てみると、やはりWi-Fiが圧倒的に大きいのですね。axが入ってくると、さらにそこは広がってくると思うので、先ほどのビジネスを推進する面でいくと、IoTを推進するときにWi-Fiがどういう役割をするのかという啓蒙活動を行う必要があると思います。また、セキュリティも考えなくてはいけないわけで、IoTセキュリティやAIを使ったセキュリティなどや、会員企業の皆さんはソリューションを持っているわけで、それをシェアしていきたいと考えています。

それと、これは江副委員長の委員会が大変になってしまうかもしれませんが、Wi-Bizは、これまでは総務省と一緒にやるケースが多くキャリアが中心となって地方自治体の取り組みの推進を進めていますが、さらにビジネス推進ということを考えていくと、経済産業省と何か取り組めないかということもあると考えています。

江副 今も、国交省や観光庁から、そういう連携の話は頂いています。総務省とは引き続き、協力を進めながら、もっと広げる意味で、経済産業省との連携も重要ではないでしょうか。IoTやビッグデータが広がるなかで、Wi-Fiがその中でインフラになるという展望は重要だと思います。また、各省庁との連携を深めたり、予算上の自由度が大きくなる点から、Wi-Bizの一般社団法人化が必要ではないかと考えています。

田中 実際は簡単ではないと思いますが、新たな取り組みを検討してみて貰えばと思っています。

杉野 2019年にあたって考えてみると、弊社では昨年は単にWi-Fiを打つというのではなく、何かをするためにWi-Fiを打つことが多かったと思います。例えば、何かのビジネスをするためにWi-Fiを打つとか災害対策をするためにWi-Fiを打つとかです。今までは、インターネットができますよというだけだったのが、昨年の後半から流れが大きく変わってきているような気がします。

今年はオリンピックの準備が始まり、IoTやビッグデータなどもあり、そういう流れが更に加速し、5GやLPWA、Bluetoothなども含め複合的につながっていくので、単にWi-Fi設備のことだけを意識するのではなく、利用目的も含めいろいろなことを考えていかないといけないと思っています。その中で、無線LANビジネス推進連絡会として、先進事例の紹介などができると良いのではないかと考えています。

小松 今年は11axが来て、WPA3が来てと、テクノロジーサイクルで見ると良い年ではありますが、昨年の後半から、今までと同じようなことをやっていてはなかなか伸びないのではないかと感じていて、Wi-Fiが欲しいですというところにWi-Fiを持っていっていくというのは、一巡したという感じです。

ではこれからどうするのかというと、もう少し違う角度でアプローチする必要があると思うのです。例えば、民間、自治体で提供するフリーWi-Fiはその都度認証が必要ですが、利用者の方からみると、あまり使いやすいものではないと思います。そのようになっているのは理由はある訳ですが、それを使いやすくして活用してもらうためにどう解決してくのか、Wi-Fiの特性をどう生かすのかなど、全体としてビジネスのボリュームを上げるために活用の範囲をもう少し広げるようWi-Bizが主導してできるようになると、大きく日本のWi-Fiが変わっていくのではないかと思っていて、今年はそのような年になればよいと思っています。

江副 「2019」という数字を見て思うのは、一昨年まで「2020委員会」というのがあってそれは今、私がやっている渉外・広報委員会に吸収されたのですが、まさに来年はその2020なんです。
今年はすごく良い年で、「Wi-Fi6」がちょうどシンクロして出てきます。昨年は訪日外国人が3000万人を超え、2020年には4000万人を目標にしていて、これは射程圏内に入っています。多くの外国人が来るときに、その膨大なサブスクライバーをWi-FiでさばくためにWi-Fi 6というのは大きな武器になります。すると、その設備投資をするのは今年になるわけです。

今年、Wi-Fi6で設備投資していかないと2020年には間に合わないと思うので、それを気付かせるPRが必要になってきて、それが僕らの今年の仕事じゃないかと感じます。訪日外国人が来る喫茶店でも、これまで11b/g/n、Wi-Fi5でやってきたところをWi-Fi6に切り替えることで、訪日外国人はビックリすると思うのですね。どこに行っても日本はWi-Fi6じゃないかと思わせるくらいになると凄いと思うのです。2019年というのは非常に大事なターニングポイントだと感じています。

櫻井 2019年は2020年に向けてWi-Fi6などの攻めの投資を行う年になるということだと思うのですが、そういった中でWi-Bizの役割と課題について3委員長からご意見をいただき、田中副会長にまとめをお願いしたいと思います。

小松 日本でWi-Fiを使うためにはいろいろなレギュレーションの対応が必要で、そこに人を出しているのですが、そのリソースが非常に弱いと感じています。日本においてWi-Fiのルールを決めましょうというときに、ユーザの立場で発言できるのが唯一Wi-Bizくらいではないかと思います。そういったところへWi-Bizがリソースを割けるような体制になるとありがたいと思います。当然、ビジネスをしている我々がコントリビュートしなさいということだと思いますが、会員企業の皆さんはそれぞれ自分の会社でコントリビュートされているわけで、そういうところをWi-Bizが後押しできればと思います。

江副 渉外・広報委員という立場でいうと、外向けのPRというのは大きな役割になるのですが、今まで私たちが何をするのかと考えた場合、「Wi-Fiの普及」という大きな命題があるのですが、それは少しぼんやりしていて、本当に何をすればWi-Fiの普及になるのかもっとフォーカスした上で動かないといけないのではないかが、今の課題だと思っています。その意味では、まさに今年は2020年に向けてWi-Fi6は準備できていますか、という分かり易いPRを行うべきではないかと思っています。

杉野 去年できなかった発動システムの対応や、観光庁から訪日外国人向けに何かできないかとリクエストもらっていますので、Lアラートへの対応を考えなければいけないとか、これらを粛々とやっていかないといけないと思っています。

一方、訪日外国人が来たときに、日本のWi-Fiは海外とは感覚が全然違っていて、海外の10分の1くらいしか距離が飛ばなく、そこの違和感があるのではないかと思います。アクセスポイントは沢山あるのですが、点でしかなく面になっていないのです。Wi-Bizにはこれだけの会社が集まっているので、そこを何とかできないかと思っています。

また、IoTが広がってきますが、総務省でも一定の条件下であれば「技適」を取らなくても端末を使えるようになるということなので、連携しながら、何か面白いことにチャレンジできる企画を委員会で考えたいと思います。

私はコンテンツ業界と仕事をしているのですが、彼らはGAFAに相当不満を持っており、コンテンツで売り上げても3割も取られたり、気に入らない端末はいつまでも審査が通らないとか、いろいろあります。Wi-Bizのなかでは全然議論されていませんが、海外ではいろいろと動きがあって、ある日突然ビジネスの根底を覆されることにもなりかねないので、これだけの会社が集まっているのでいろんなところへ発信ができるようになったら良いと考えています。

田中 まずはベースとしては、11axやWPA3をきちんと広めることをやらないといけないと思っています。その上で、杉野さんが仰っていたように会員同士が繋がって、ふつう会わない人同士が繋がって、たとえばインフラだけじゃなくアプリケーションを作っている人たちと繋がり、そこでエコパートナーシップのようなものが出てくるとよい、そのような仕掛けができたらよいと思います。

あとWi-Fiを扱っているベンダーとしてですが、5GイコールIoTかのように経済新聞を中心に書かれていて、非常に不満です。5Gも当然使いますが、IoTの普及にはWi-Fiというキーワードが出てこないのは非常におかしいと思います。お客様と話をしていると、5Gが出てくるとWi-Fiがいらないですよねと言う人も出てきます。IoTにおいて5GとWi-Fiはこういう位置関係ですよ、それぞれのメリット・デメリットは何ですよと、きちんとアピールしていくことができたらなと思いました。

新会長のもと交流を活発化し新たな分野にも挑戦

櫻井 それでは最後に、会員の皆様に向けて、新年の抱負と決意のメッセージをお願いします。

江副 Wi-Fiはもともとオープン系です。Wi-Bizもボランティアで成立しています。委員会の皆さんも、シャイで意見がなかなか出てこない。渉外・広報は、そこをうまく進める潤滑剤になる役割があると思っています。

田中副会長からも話があったように、交流会のようなものをもっと頻繁に行って、交流できる場をつくるべきだろうということで、昨年末、実験的にやってみて、大変、盛り上がりました。皆さん互いに面識を持ち出すと、言いやすいし、意見や提案が活性化します。今年の抱負でいうと、会員コミュニティを一気に増やしたいというのが、私の抱負と決意になります。

杉野 私は、昨年は「企画」の文字が小さくなるような企画・運用委員会でしたので、今年は企画に力を入れていってみたいと思います。それに尽きます。

小松 技術調査委員会は、割と技術寄りの方が多いので、会社の枠を超えて悩みや、これっておかしくないか、みたいなことを相談しやすいのではないかと思っています。ただ、残念なことに、皆さん少し引き気味なところがあるので、そういったところを江副さんの力を借りながら、もう少しフランクに活発にしていけたらと思っています。

田中 私は先ほど大風呂敷を広げたわけですが、それを皆さんにどうですかねぇと、チクチク言うのが役割かなぁと思っています。あと、昨年から北條会長になられて未だ日も浅いということで、北條会長を盛り上げていくことも、きっちりやっていきたいと思っています。あと、昨年スタートした、11ahの普及に向けて、ah推進協議会のメンバーとして取り組んでいきたいと思います。

江副 昨年は渉外・広報委員としてah推進協議会の参加メンバーの募集で協力してきました。当初は30社が目標でしたが、今は70社を超えており、そこはニーズが大きかったということで、Wi-Bizとしても推進していきたいと思っています。

櫻井 それでは、北條会長のリーダーシップのもと、本日の皆様のご発言の具体化に向けて、Wi-Bizの活動を進めていくことを一同決意したということで座談会を終了したいと思います。皆さん、ありがとうございました。


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