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海外情報
米Wi-Fi周波数の拡張はDSRCか6GHz帯か

岩本賢二

米国でも、Wi-Fiで利用されている2.4GHz帯はすでにいっぱいになっており、5GHz帯も混雑し始めています。そんな中、高速道路など特定の場所でしか利用されていないDSRC(日本ではETCにあたるステム)が利用している5.9GHzが5GHz帯のすぐ上の周波数であるため使いやすそうだという理由から再割り当てを要望する声が上がっています。

しかし、自動車業界の反発は物凄く、なかなか譲ってくれそうにありません。自動車業界との戦いで疲弊するよりも、6GHz帯の割り当てを進める方が、割り当て帯域幅が1200MHzと広大な上に5Gや次世代Wi-Fi技術のエコシステムも利用できるので得策であるという見方が広がっています。

日本ではDSRCはITSスポット「ETC2.0」という自動車サービスで利用されており5.8GHz帯を利用しています。すでに、ETC2.0でできる遙か上の事がスマートフォンで「税金を使わずに」実現できてしまっており、それでいてETC2.0の普及には助成金が使われるという状況にあります。

これに対して、「こんなに速くスマートフォンが進歩するとは思っていなかったことに同情する」という専門家の意見が出ています。

5.8GHz帯は世界的には米国をはじめ無線LANで広く利用されている周波数帯となっているため、5.8GHz帯が開放されれば非常に安価にWi-Fiの利用周波数を増やすことができます。

米国では今、何が起こっているのか、「FierceWireless」の記事が大変参考になりますので、翻訳します。


エディターズコーナー 6GHzは5.9GHzよりも有望

モニカ アレヴェン

7月25日、米国上院で行われた5Gへの追加周波数割り当てニーズの公聴会では多くの意見が出ました。しかし、これらの意見のうち、かなり多くの声が「アンライセンス利用への更なる周波数の割り当て」を望むというものでした。

委員会の議長を務めるJohn Thun上院議員はアンライセンスバンドの重要な役割を米国が念頭に置く必要あることを皆に知らしめるためにこの公聴会を開始したのです。確かにライセンスバンドのサービスには低帯域、中帯域、高帯域が切望されていて、特に中帯域は絶対に必要です。

しかし、Wi-Fiの現在の混雑状態は明らかで、新しい周波数共有技術の導入や緩衝緩和技術の進歩、ならびにアンライセンスバンドのために周波数がさらに必要であることを確認することが重要です。実際に2.4GHz帯には空きが無く、5GHz帯も混雑してきているので、その直ぐ上の方のバンドである5.9GHz帯は魅力的なのです。

問題は20年以上前に米国では高度道路交通システム(ITS)の中の専用狭帯域通信(DSRC)に5.9GHz帯を割り当ててしまい、それを今後も開放する兆しが全く見えないということです。

だからこそ、その隣にある6GHz帯はますます魅力的に見えてしまい、もう一度DSRCを検討しなくてはなりません。しかし、クアルコムのディーン・ブレナー氏は、この公聴会の中で「DSRCは場所的に固定されているサービスなので、どこにあるかを知っているので問題を回避することができる」と指摘しました。

クアルコム、Apple、Facebook、Googleなどのハイテク企業グループが干渉防止ルールの枠組みを検討しており、これは6GHz帯を分割し、各サブバンドに合わせた特定の緩和策を適用できるようにFCCに提案しています。このグループはFCCに対して、6GHz帯を「提案ルールの通知(NPRM)」段階に進めるようプレッシャーを掛けており、FCCはこの秋にも検討を開始しそうです。

同時に自動車業界はDSRCを残すように圧力を掛けているため、5.9GHz帯の状況は更に混乱しているように見受けられます。たとえ、5.9GHz帯が何十年にも渡って衰退してきていても、特定の自動車メーカーはより安全な道路システムを構築するためには、これが最も実行可能な方法であるかのように振る舞っています。いくつかの州の高速道路部門はコネクテッドカー市場が実現するまでにDSRCとC-V2Xの両方を導入するという、自動車業界の賭けにリスクヘッジをしています。

トヨタは最近、LTEベースのV2Xが現行のDSRCの代替として利用出来るという主張に対して異議を申し立てるために、再度FCCを訪問しました。トヨタは、最近LTE V2Xの提唱者が開示したテスト結果の信頼性について質問をし、非DSRC技術が許可されて5.9GHzを利用した場合、アンライセンスバンドデバイスとこのバンドを共有することは更に困難になると訴えています。これは、ゼネラルモーターズが米国でのDSRC展開を更に拡大する計画を発表した後のことです。

これらの動きだけではC-V2Xのために5.9GHzを諦めるには不十分です。しかし、これまでの活動不足は既にいくつかのWi-Fiのステークホルダーが5.9GHzをほとんど諦めていることを示しています。それよりは6GHzに時間と労力を費やす方が良さそうです。

昨年Cory Gardner、R-Colo、 Maggie Hassan、D-N.Hの4人の上院議員は米国が3.7~4.2GHzならびに6GHz帯を含むライセンスバンドとアンライセンスバンドの用途について周波数を再割り当てするAirwaves Actを導入しました。それ以来、これは多くの超党派の支持を集めています。今週議員達はこれまでFCCに対してアンライセンスバンドが他にも利用機会があることにもっと注目するように働きかけてきた努力をアピールしています。

クアルコム社の周波数戦略と技術担当のシニアバイスプレジデントであるBrenner氏は議員達に6GHz帯の可能性について興奮する理由が次の通りあると語りました。6GHz帯は1200MHzと広帯域であり、既存利用サービスが存在するが、それらは移動しない固定通信サービスである。

(現在の”Listen before talk”技術とは対照的に)”Look before talk”技術は6GHz帯の一部で完璧な物になるであろう5Gと一緒に新しい技術として開発されていると言っています。もう一つ他の理由は、次世代のWi-Fiである802.11axが登場したことです。これは6GHz帯で利用することができ、ギガビットの速度を実現するLAAとして知られるセルラー技術にも使用できます。

多くの人が待ちわびている3.5GHzのCitizens Broadband Radio Services (CBRS) バンドのルールが完成すればFCCは150MHzの帯域を開放することが出来ます。そして5.9GHzで何かが解決されればそれは素晴らしいことですが、状況を考えると、アンライセンスバンドコミュニティーの望みが6GHzで叶うことが間違いなく簡単です。

 

参照
Editor’s Corner—6 GHz looks far more promising these days than 5.9 GHz
http://www.fiercewireless.com/wireless/editor-s-corner-6-ghz-looks-way-more-promising-than-5-9-ghz

ETC2.0、試して分かった問題点 専門家は同情
https://trafficnews.jp/post/50201

「ETC2.0」購入で1万円助成
https://trafficnews.jp/post/53809/


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