海外情報
来日外国人が実感する日本のWi-Fi

岩本賢二

2017年5月24日から東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレスジャパン2017」(リックテレコム主催)に行ってきました。
海外企業の出展ブースで説明をしていたOferさんに「無線に詳しい外国人が日本に来て日本のWi-Fi事情についてどう感じているのか?」と話しかけたところ、「日本のWi-Fiについて不満がある」との意見でしたので、考えをまとめて頂きました。
2020年に向けたWi-Fiインフラサービスの展開に、こういった意見が反映されることを願っています。Oferさんの英語論文を日本語に訳して、ご紹介します。


仕事だけでなくレジャーでも頻繁にアジア圏を旅行する一人として、常にネット環境に接続できることは決して贅沢な要求ではなく、実際問題として無くてはならないものです。

仕事であれレジャーであれ、質の良いローミングサービスを楽しみながら、なおかつ大金を叩くこと無く最後まで安心して旅を続けるために、旅行者にとって一番コストパフォーマンスの良いローミングサービスを選ぶことはとても重要な課題です。

海外を旅する際、ほとんどの国でローミングパッケージはかなり高額です。
一番コストパフォーマンスが良いのは、データ通信と音声パッケージ付きのローカルSIMカードを購入する方法で、大抵の場合は旅行日程にも、使用目的にもぴったりです。
Wi-Fiサービスへ接続可能な場合、ほとんどの国では、選定した会社のWi-Fiサービスを使えるSIMカードと組み合わせて使用することができます。

仕事であっても、もちろん日本は私の好きな訪問先の1つで(魅力的な文化に素晴らしい料理!!!)大半は東京が多いですが、他にも大阪などにも訪問します。

実はアジアのほとんどの国でローカルSIMを購入し、ローミングサービスと、そしてWi-Fi接続が可能な時にはWi-Fi接続へ切り替えるというサービスの利用が可能なのですが、日本ではそれが出来ません。
日本に到着した旅行者は空港でSIMカードを買うことが出来ないので、妥当なオプションとしては現地のルーターを借りるか、ローミングパッケージを使うしかありません。

ルーター利用サービスの品質はかなり良いと言わざるを得ませんが、決して便利とは言えません。
ルーターが使えるのはデータ通信のみで、バッテリーが数時間しか持たないので充電が必要になります。
レンタルと返却の手続きに時間もかかり、いつでもレンタルが可能とも限りません(前もって予約していない限りは。)

それに一番重要なのはその価格です。日本でのルーター利用にはかなり料金がかかり、1日に12〜14ドルします。
私はデフォルトのローミングパックを好みますが、料金はほぼ同じです。

しかし、もう一度言いますが、ローミングパッケージで利用するLTEサービスはローカルサービスを利用する場合と同じではありません。どんなに簡易なスピードテストでも簡単にそのギャップを検証できます。

都内の公共交通機関における外国人のWiFi利用体験

日本の公共交通機関は私がこれまで経験してきた中でベストなサービスの1つです。地下鉄、モノレール、新幹線、空港を往復するシャトルバスなどがあり、多くの人たちが仕事やレジャーで、このとても効率の良い、便利な公共交通機関を利用しています。

ローミングパッケージの料金や制限付きのサービスの不便さで悪戦苦闘する代わりに、私はいつもWi-Fiホットスポットを探して接続するようにしています。
公共交通機関を利用する際(但し新幹線を除く。VIP車両のみ接続可能)、たいていは接続可能なアクセスポイントが見つかり、そこへ接続することができます。

しかし、Wi-Fiを使ったサービスを利用しようとすると、たいていは接続不可能だったり、制限がかかっていてかなりパフォーマンスがひどいことに気がつきました。
日本は洗練されたサービスを提供するハイエンドの国であるという事実を考えると、私はこれをとても奇妙に思いました。

 

簡易調査によると、乗車中にWi-Fiサービスが利用できると主張しているほとんどの公共交通機関が、実は1社以上の携帯電話会社に接続するセルラー方式もモデムを(Wi-Fi接続のバックボーンに)利用していることがわかります。

ではここで、公共交通機関に乗っていて、空港で借りてきたWi-Fiルーターを使って、周りにいる何百人もの人たちとその Wi-Fiサービスをシェアする、という場面を想像してみてください。言うまでもなく、これは不可能です。

 

この実際には使えないサービスを提供しているという事実は、サービスを全く提供していないことよりもひどい話しです。

単純に考えて、サービスを提供していることで乗客に公共交通機関の利用を促せば、もちろん彼らはそのサービスが当然使えると期待しますし、特に日本であればなおさらです。

モスクワやアメリカの地下鉄で実際に見たことがあるのですが、サービスプロバイダーと電車間での送受信に必須となる大容量通信を中継するために、LTEベースではない解決策(もしくはLTEとSub-6GHzの組合せ)を採用し、かなり大容量の通信を実現しながら、需要の高い移動しながら使えるブロードバンドの要望を満たしています。

地下鉄のような短い移動距離ならさほど大きな問題ではないかもしれませんが、もっと長い移動距離で、かなり高額を払ったのに(時には飛行機と同じくらいの金額)利用できるブロードバンドサービスがないとなると、これはもうなんと説明していいか分からないほどです。

言い換えれば、アメリカの高速列車は顧客基盤を維持するために、LTEだけに依存しないこのようなブロードバンドサービスの実装を開始していて、既に国内線のフライトにもこのサービスは提供されています。

こんなことを書いている間にも、何千万もの観光客やビジネスマン/ビジネスウーマンたちが毎年日本を訪れています。
2020年のオリンピックまであと数年というところで、東京に来る外国人の数は信じられないくらい膨むでしょう。

言うまでもありませんが、彼らのほとんどが公共交通機関を使うでしょう。そして、移動する際にこの疑問点の残るWi-Fiサービスを利用しようとして、彼らがどれほどのフラストレーションを感じるのか私には想像もつきません。
多くの国で Wi-Fiサービスは無料で提供されており、人々はこれにお金を払うとは思いません。

ですから、サービス提供会社は公共エリアでWi-Fiサービスを無料で提供するために使った投資額を回収できる効果的なビジネスモデルを見つけるのに苦労しています。

タイで活用されていた効果的なビジネスモデルを紹介したいと思います。

バンコクに到着すると、空港や街中にあるどのサービス提供会社のショップでも簡単にローカルSIMカードを購入することができます。
好きなデータパッケージを購入すれば、その購入額の中からWi-Fiサービスを利用することが可能です。

ですから、空港やショッピングモール、他にも公共の場所にはたいていWi-Fiのアクセスポイントがたくさんあって、ローミングパッケージに関係なく無料で使えます。(厳密には無料ではなく、私も一度払ったことがありますが。)


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