ビジネス情報
技術革新によって歴史は繰り返す
無線LANビジネス推進連絡会会長 小林忠男

コンピューターのメインフレームが、スティーブ・ジョブスとビル・ゲーツによってパソコンに変わり、さらに現在のクラウドの時代になりました。

情報を処理・蓄積する場所がユーザーから遠く離れたメインフレームへ、そしてユーザーが所有する端末に移り、再び上位のクラウドに移りました。
端末の能力が低いので高度な演算を出来なかったためにメインフレームで処理するしかありませんでしたが、インテル等の技術革新によりメインフレームの処理能力を持ったCPUが登場しメインフレームとやり取りをしなくともパソコンで高度な処理が出来るようになったわけです。

次に、インターネットの普及と光/ワイヤレスの技術革新による回線速度の高速化の実現によって全ての情報がクラウドに集められるようになり、ユーザーのどこでもインターネットにつながりたいという要望とOTTによる新たなビジネスモデルの出現により、どこでも、どの端末・デバイスでも、いつでも好きな情報にアクセスすることが可能になりました。
ユーザーから離れたところにあったものが手元に移り、また離れたところに収容格納されるようになりました。端末、ネットワークとアクセス回線、情報処理装置の技術革新によりこれらが可能になりました。
技術革新により歴史は繰り返しているといえるわけです。

技術の内容そのものは大きく進化しているのですが、どこに情報がありどこで処理されているかという視点でみればメインフレーム時代とクラウド時代は相似だと言えます。

今日、自動車や部屋やいろいろなモノの共用が、シェアリングエコノミーとして新たなビジネスに成長しつつあります。
昔の主要な交通手段は乗り合いバスや電車でした。技術革新によりマイカー時代が到来し誰もが車を持てるようになりました。現在の日本の車の台数はオートバイを含めて8,000万台になります。三人に二人は車を持っていることになります。
最近は、クルマをライドシェアするウーバーや部屋をシェアするエアービーアンドビーが出てきました。
ワイヤレスでつながったスマホがどこでも瞬時に車を使いたい人の要求を取得し自分のクルマをお客様と共有することが可能になりました。
多くの人が一台のバスを共用する時代から、クルマを自分で所有するパーソナル時代になり、次にその車を他人と共用する時代が本格的になりつつあります。

所有形態の変化で見てみると、技術革新のもと歴史は繰り返しているのです。

通信とは関係ありませんが、商品、製品をどこで生産するか。昔はすべて国内で生産していました。戦後の荒廃から日本は奇跡的な復興を果たしましたが、その結果、人件費が上がり国際競争力を確保するため、生産を人件費の安い国外へ移しました。これからはAIロボットによる人件費のコスト削減が可能になり再び海外生産から国内生産へと移行するかもしれません。

スマートフォン全盛の時代ですが、「歴史は繰り返す」の観点からみると、私たちが使う端末は今後どのようになるでしょうか。

図のように、電話、パソコン、カメラ、オーディオ、辞書、電子ブック、ゲーム機などの機能、目的別に個人が所有していた端末、デバイスがスマホの登場により一台に集約され、「All in One」になりました。
スマホの中に,その人の人生が入っていると言っても過言ではありません。
個人のすべての情報がスマホの中にあります。便利と言えば便利ですが、紛失したときのセキュリティや自分好みのデザインや機能を選択することが出来ません。

スマホの次は、部品技術やワイヤレス技術の革新とクラウドの進化により、All in Oneの端末は再び機能分化し、これまでになく洗練された自分のお気に入りの端末、デバイスをユーザーが選択し使うようになると私は思います。

アップルがiPhone7でAirPodsを採用しましたが、私はこれはスマホの機能分化の始まりではないかと感じています。iWatchも同じです。
何故ならば、IoTのためにこれまでにない先進的なワイヤレスモジュール、チップが商品化されます。これらを、AirPodsやiWatchに採用すれば必ずしもiPhoneに括り付けにする必要性はなくなり、単独に動作しネットワークにつながることが可能になります。
最近、Appleが折り畳みの出来るスマホを開発しているとの記事が出ました。この折り畳み端末はどんどん進化し、ペーパーディスプレイになるでしょう。これが実現すれば、もうスマホ本体に縛られる必要はなくなります。
音楽はAirPods、時計はiWatch、インターネット、YouTube、電子ブック等はペーパーディスプレイで見ることになりスマホ本体は不要になるかもしれません。

歴史は繰り返すということは、そのたびにビジネスモデルがゼロクリアされるということです。
機能ごとに分かれた端末がスマホの出現により「All in One」の端末になり、そしてデバイスやモジュールの技術革新により機能分化した端末やデバイスを持つようになるでしょう。

パソコン市場が飽和しこれ以上の拡大が見込めなくなった時にクラウドが登場しました。これまでのビジネスモデルを破壊し、全く新しい形のビジネスを再構築することにより、今までよりははるかに進化した内容となり、大きな市場を創出してきました。

アメリカの企業は、こうしたビジネス創出に優れています。国、企業が一致団結して古いものを破壊して新しいビジネスを立ち上げ、その新ビジネスの主導権を握るということです。

端末、システムが多様になればなるほど多くの企業、人に新たなビジネスチャンスが生まれることになります。私はそう考えています。


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