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技術情報
「万博」でのOpenRoamingの運用と
大阪・関西に遺されたデジタルレガシー
一般社団法人無線認証連携協会(Cityroam) 代表理事
株式会社グローバルサイト 代表取締役
山口 潤
2025年大阪・関西国際博覧会における会場のWi-FiサービスはOpenRoamingで提供されました。OpenRoamingは、利用者認証の情報を安全にやり取りできる認証連携基盤を通じて、複数の事業者にまたがる無線LANローミング環境を実現します。端末に普段使用しているプロファイルがインストールしてあれば、自動的に接続できることがメリットです。
また、証明書ベースの認証により、APの正規性も確認ができますので、過去の大規模イベントで問題になった偽基地局対策にも効果があります。
今回は、万博周辺における運用の紹介と効果、そしてデジタルレガシーとしての今後についてお話させていただきます。
万博におけるOpenRoaming運用スキーム
万博会場におけるアクセスポイントの提供やOpenRoamingのシステムは「未来社会ショーケース事業出展」事業のうちデジタル万博の協賛を行うシスコシステムズ合同会社のソリューションをベースに構築が行われました。
また、OpenRoamingを利用するにはIDの発行と端末へのプロファイルのインストールが必要になりますが、こちらは大阪観光局が提供するOsaka Free Wi-Fiのプロファイルを万博公式サイトでも案内する形とし、会場内と会場外で一元化が図られました。
会場外へのOpenRoaming展開
大阪では万博の開催を睨み、1日最大12万人の来訪者を誇る心斎橋筋商店街が2024年6月よりOpenRoamingの実証実験を開始(2025年3月より本運用)。
10月には大阪観光局によりOpenRoamingに対応した「Osaka Free Wi-Fi 」がスタートし、万博への乗換拠点となる駅やリムジンバスへの搭載が始まりました。
大阪以外でも、2020年から設置されている京都をはじめ、万博の開始までに神戸や奈良、そして周辺の鳥取や福井などで運用が始まり受け入れ体制が出来上がりました。
<心斎橋筋商店街では約600mに渡りOpenRoamingのエリアが構築された>
利用者への情報提供と課題
このように各自治体、事業者の準備のもと開幕日を迎えます。
しかし、初日に携帯通信にて入場QRコードを発行しようとする方が多かったため、入場ゲート付近の携帯通信キャリアが繋がりにくくなるという状況が発生しました。
実際にはゲート付近においてはWi-Fiが提供されており、OpenRoamingのプロファイルがインストールされていれば自動接続され、スムーズに入場QRコードを発券することは可能でしたが、案内が来場者に浸透しておらず、予めプロファイルをダウンロードして来場して来た方が限られていたからだと思われます。
結果、協会は急遽共通パスワードで接続できるQRコード表示用のSSIDをゲート前に用意することとなりました。
私見ですが、これについては、来場者に対してプロファイルのインストールを促すための広報不足も一因であると考えます。今後のイベントでも重要な課題として取り組んでいきたいと思っています。
<入場QRコード発行対策として急遽ゲート専用の
共通パスワード接続用SSIDが用意された>
会期中の利用者推移
図にありますように、会場アクセスポイント(ANP)はCisco Spaces、ID提供プロバイダ(IdP)はOsaka Free Wi-FiではOpenRoamingへの接続点が異なっています。Osaka Free Wi-Fiのプロファイルをインストールした端末は会場内でアクセスポイントに接続するとCisco SpacesのOpenRoamingエンドポイントからCityroamの認証ゲートウェイを経由し、Osaka Free Wi-FiのIdPサーバに認証要求が行われます。
結果、万博スタートとともにCityroamの認証中継サーバを経由し、来場者の端末による大量の認証要求がIdPサーバにもたらされました。
以下は、Cityroamと東北大学サイバーサイエンスセンター後藤准教授の分析による、開催期間中に万博会場からCityroamの認証ゲートウェイに来たユニーク端末数のグラフです。
※ グラフのプロットは週平均値をもとに作成しています。Cityroam認証基盤側でのデータのため、海外発行のIDは含まれません。
※ Osaka Free Wi-Fi の他に、Cityroam基盤を経由するTOKYO FREE Wi-Fiなど各自治体発行したID、au Wi-Fiアクセス、Japan Wi-Fi auto-connectなど、国内事業者で提供しているIDが含まれます。
初日翌日が最も少なく、一般来場者数70,488人に対して、認証でユニーク端末数は約6,500台です。右肩上がりに増えていき、10月の一般来場者が24万人を超える日には、ユニーク端末数が30,000台を超える日が出て来ました。
なお最終日は一般来場者以外に関係者も多く、50,000台を超える接続と231万回という認証要求が行われています。
<最終日 来場者24.4万人+関係者3.6万人=28万人の来場に対して
IdPも認証ゲートウェイも耐えきりました>
会場外でも利用者数が万博開幕とともに増加しました。
下のグラフは大阪市内のある商店街における3月から8月までの一日の利用者数推移です。Cityroamのスポットは学術系の国際ローミングであるeduroamも同時に吹いていますので、合わせてグラフ化しました。
3月はeduroamとOpenRoamingともに4,000人前後で推移していましたが、開幕後にOpenRoamingの利用者は一気に増加し4/14は8,000人に、5/25には1万人に達しています。なお、eduroamも学術関係者の万博来場や訪日の増加からか1.5倍程度増加しているのも興味深いところです。
※ グラフのプロットは週平均値をもとに作成しています。アクセスポイント側での数値のため海外事業者発行のIDも含まれます。
万博のレガシーとして
2025年大阪・関西国際博覧会会場におけるOpenRoamingの184日間にわたる提供は、OpenRoamingでのセキュアな公衆無線LAN提供とグローバル認証連携における重要なマイルストーンとなりました。
公式で案内されたOsaka Free Wi-Fiだけでなく、ロンドンや東京からの来場者が利用するプロファイルを含む、様々なアカウントを統合することに成功しました。
会場内のインフラは撤去されますが、会場外のエリアはレガシーとして運用を継続します。
また、万博終了後も自治体や商業施設、サービスを運用する各社はさらなる拡大を予定しています。この地域に未来を築くCityroam/OpenRoamingの今後の取り組みにご期待ください!
<南海なんば駅と丸井の間に設けられた「なんば広場」でも
OpenRoamingが使えるようになりました>
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