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インタビュー
総務省 情報流通行政局
地域通信振興課長 高田 裕介 氏
「地域社会DX推進」へ、先進的な通信技術を使って
社会課題の解決手法を編み出していく

総務省は、「総務省重点施策2026」として「デジタル変革を通じた持続可能な地域社会と強い経済基盤の実現」という戦略方針を掲げています。情報流通行政局地域通信振興課は、まさに情報通信技術で地域振興を図る事業を担当しています。今年7月に着任された高田 裕介課長に、地域通信振興課の主な取り組みを伺いました。高田課長は係長のころからこの分野に取り組んだ経験から「地域社会DXの推進」へ、先端的な情報通信技術による地域課題解決の取り組みの重要性を述べられました。

 

 

「総務省重点施策2026」の方向性

ーー「総務省重点施策2026」は「デジタル変革を通じた持続可能な地域社会と強い経済基盤の実現」と銘打たれています。このなかで、地域通信振興課は「地域社会のDX」という大テーマを任されていると聞いています。

高田 「2024年問題」と言われていますが、2040年には「3人の働き手が2人の高齢者を支える」時代が到来します。人口減少の問題は、すでに顕在化しつつありますけれど、これがいよいよ本格化するわけです。人口が減ってくるなかで地域経済を支える術は、3つしかなくて、地域内の人を増やす、地域外から連れてくる、もう1つは働き手一人当たりの生産性を上げるということです。
デジタル技術そのものは、出産・育児支援や移住促進といったように人口増の直接的な手段にはなりえませんが、労働生産性を上げるという部分についていえば、有効なツールになりえます。デジタル技術、少し前はIT、その昔は機械化といわれたものは、これまでは一定の定型的なものでしか省力化効果は発揮できなかったけれど、クラウドとかAIが導入されることで、様々な事業活動において省力化あるいは合理化効果を発揮できるようになってきました。その部分で、特に通信事業を所管する観点からお手伝いするということが、私たちのミッションです。
今年1月の石破総理の施政方針演説で「かつて人口増加期に作り上げられた経済社会システムを検証し、中長期的に信頼される持続可能なシステムへと転換していくことが求められています。」というくだりがありますが、まさに「DX」がそこで応えるべきソリューションだと思っています。

ーー地域通信振興課は、そこの責任を持ってやっていくことですね。

高田 そうです。20年前、私が係長でこの仕事に初めて携わったときからずっと言われてきたことですが、「地域課題を通信技術、当時はICTを活用して解決していくこと」、これが私たちのミッションのセンターポジションです。
昔はインフラの導入がすなわち情報化そのものでした。かつて、富山県の山田村という人口2000人の地域の各世帯にパソコンを導入し、インターネットをつなげようという取り組みがありました。ツールを入れること自体が地域の活性化の推進力となった事例です。基盤整備自体がすなわち情報化、ICT化だという時代を経て、そういうところに片足を置きつつ、それを使って何ができるかというところを追い求めてきたのです。

「地域社会DX推進パッケージ事業」を開始

ーー今年度の課題、取り組みの柱は何でしょうか。

高田 「地域社会DX推進パッケージ事業」という事業があります。この肝は、自治体の取組みのステージに応じて、地域のデジタル化の支援をしていく、DXの支援をしていくということです。

 

 

取組みのステージには、①②③があります。基礎となるのが①の「デジタル人材/体制の確保支援」というところです。地域において、デジタル技術でどの課題を解決すべきかよく分からないという段階です。まずここを説明できるようにしていくということが第一段階です。
具体的には、「地域情報化アドバイザー」という、アドバイザーさんを派遣して、課題感を特定していく。課題の特定をしたら、どのようにその課題を解消していこうかという道筋を付けてもらうわけです。それは「計画策定支援」と呼ばれるもので、僕らが仕事をお願いしたコンサル事業者を派遣して、各自治体のデジタル実装に必要となる導入計画を作ってもらうお手伝いをするという「計画策定支援」の仕事となります。

ーーまず専門家による助言で、地域課題の整理、導入の計画を策定するわけですね。

高田 次に「推進体制構築支援」です。人的又は財政的に体力があるところはそれぞれの自治体でやってくれればいいんですけれど、「一人情シス」のようにデジタル化をやるにも人手が足りない自治体があります。そういうところは県に音頭を取ってもらい、県下の小規模自治体を束ねて、広域的に推進体制をつくってもらう、そういったところのお手伝いをさせてもらっています。

ーー地域の個々の実情に合わせるというか、現実の段階まで下りていなかないと、実際には進まないだろうということですね。

高田 私が若いころは、情報通信部門がやっている事業に手を挙げる自治体は、県庁所在地級か、県で人口3~4番目ぐらいまでの大きい都市、それ以外は、感度が特別に高い首長がいるところしかなかった印象です。ただ、直近の「計画策定支援」でお手伝いしたところをざっと見ると、半分ぐらいは町・村となっています。

ーー地方自治体の基礎単位のところが、動き始めているということですね。

高田 そういった自治体が、我々の事業の門を叩いてくれていることは特筆すべきことだと思います。DX推進というと、実証や補助が頭に浮かびますが、私は肝は人材育成だと思っています。

ーー経験がない、計画がない、基盤がない、方向感がない、そういうところが実は一番重要なのですね。

高田 そうです。特にDXは専門技術への通暁を求められるので、「ヒト・モノ・カネ」といいますけど、「チエ」を持つ「ヒト」が重要になります。技術と地域のそれぞれが抱える課題、その両方を理解する人材がいなければいけないのが、事業の特徴です。

ーー確かに、新技術を入れるのも大変だけど、入れてから活用し地域でその成果を出すというのは難しいことです。

高田 そのとおりです。だから、計画的にやらなければいけないし、導入したシステムを入れっぱなしでもいけない。地域の総合通信局や地域情報化アドバイザーもうまく使っていただいて、成果を出して欲しいと思います。

ーー「地域情報化アドバイザー」は随分、前から聞いています。

高田 平成19年度に立ち上げられた制度です。自治体からの求めに応じて、DXに通じた人材を派遣する仕組みで、「この人」と言われればその人を出しますし、「こういう課題を解決したいんですけど」ということだと適材をマッチングさせていただいています。

市町村でDXの取り組みが始まる

ーー全国1,740のうち、まだまだ計画段階のところと、すでに実証・実装に入っているところとは、どれくらいの比率ですか。広い意味でDXの取り組みは半分くらいは進んでいると考えてよいですか。

高田 この夏に当省で自治体にアンケートをしたのですが、4割ぐらい自治体が「まだDXの取り組みに着手していい又は検討できていない」と回答しています。
もっとも、私たちの聞いた先は自治体の情報部門なのですが、自治体の企画部門由来のDX部門も最近増えているのですよね。DX担当部門と言っても、組織の出自は様々なので、ひとつの切り口から見た数字と思ってもらえればと思います。

ーー企業でもDXは、情シス担当者に限定するのではなく、経営トップがやりましょう、企画部門がやりましょうとなっていますが、同じなのですね。

高田 企画部門由来のDX部署が増えているのは、DXが首長の関心事になっている証左だと思うので、好ましい傾向と思います。このほかに産業部門だったり、財政部門由来のDX部門もあり、ひとくちに「DX化」と言っても、自治体ごとに「色」があるのを感じますね。

先端技術での「実証」をどう進めるのか

ーーまさにテーマはDXですから、そういう専門家がいないと進みませんね。実証はどのように進めていくのですか。

高田 地域で課題を特定し、どのように解決していきましょうかという時、ここ数年、有線技術・無線技術の進展は目覚ましいものがあります。Wi-Fi HaLowもそうだし、スターリンク、NTNもそうだし、HAPSもあります。有線まで目を向ければAPNもあります。使える通信技術の可能性が増えているわりに、それのソリューション化技術ないしスキルとの間にギャップが出てきているわけです。そこのギャップを埋めるというのが、この実証という取り組みです。
新しく出てきている先進的な通信技術というものを使って新しい社会課題の解決手法を編み出してください、トライした結果、すぐ実用化が出来なくとも、課題を洗い出して、後から出てくる人たちが、より早期に導入できるようにしてくださいねと、というのが、「実証」と呼ばれるものです。

ーーいろいろな技術が出ていますが、優劣はつけているのですか。

高田 そこは技術中立です。「ローカル5Gを特にやってください」とか、「アンライセンスだからダメ」とか、色を付けることはありません。当該課題に対して適切な技術にアプローチをしてくれればいいと思います。
重要なのは「どんな課題を解決しようとしているのかを、明確化してほしい」ということです。課題の捉え方が適切でないと、いかに最新の技術を使ったとて役に立たない、ないしはオーバースペックになってしまいます。

ーー地域課題の解決に資する可能性が高い技術でないと。

高田 地域課題解決とマッチするということですね。「実証で終わりにしない」こと、費用対効果も踏まえて現実的に社会実装できるものであることです。
あとは先進的なソリューションであるということです。すでに他でやったことのない実証であることが必要です。

ーー対象は、市町村がメインになりますか。

高田 住民向けサービスを提供しているのは、わが国では、市町村なので、結果的には市町村が多いと思います。

先端技術を活用するということ

ーー②の「AI・自動運転検証システム」は、地域では凄く期待されますよね。このあたりは重点というか、注力ポイントになりますか。

高田 そうです。「AI・自動運転」は一見「先進通信システム」と別枠みたいですけど、基本は兄弟分なんです。自動運転の「レベル4」の安全の条件は、遠隔監視が要件になってくるわけです。通信が使えない状態だと、そもそもレベル4の自動運転は実現しないわけです。そこで、レベル4を見据えたときの通信技術はいかに途切れさせない通信を実現させるか、あるいは、それをやろうとしたときの課題は何かというところを検証していくというのがポイントです。
同様に、例えば「公衆網の5Gと自営網のローカル5Gの切り替わりを検証したい」とか、「複数のキャリアの電波を連携して使いたい」とか、いかにつながっていく通信となるか、そこが着眼点になります。

ーー③は「地域のデジタル基盤の整備」となっています。

高田 これは実証して、成果が出て、ある程度の完成品が見えたときに、それを他の地域に「輸出」するための横展開支援という感じです。全国1,700自治体がやっていることは、みんな同じとは言わないけれど、例えばある地域の河川監視と別の地域の河川監視は別に全く違う必要性はないわけです。だから、せっかく出来たものを他の地域に輸出して使ってもらいましょうということです。

ーー成功したものを横展開というイメージですか。

高田 実証で出来たモデルが、勝手に広がっていけば一番いいのですけど、なかなかうまくいかないんです。

ーー「地域社会DXの推進」をどのように進めていくつもりですか。

高田 一番重要なのは、他省庁なり省内の他部局とちゃんと連携していこう、大きな政策のプログラムの中で僕らのやるべきことをやって、政策効果を最大化していこうというところです。今、総合通信基盤局で次世代ITS自動運転の検討会を開催しています。今回が「第三期(3rd Season)」なんですが、僕らも事務局に入っているんです。
私たちが、個として取り組むだけじゃ自動運転の社会実装は進まなくて、まず省内・省外でインフラなり規制を持っている組織としっかりと連携をしてやっていく、これまでもしていたんですけど、そこを本当にがっちりやっていきましょうということが1つ。
デジタル化は、他の政策効果との相乗効果が働くことで非連続的に展開をしていくというのが特徴だと思っていて、できるだけシナプスを他省庁に対して広げるという連携を促進していくことが一番大きいところかなと思っています。

「自治体DX」と「地域社会DX」

ーー「地域DX」「自治体DX」「地域社会DX」といろいろな概念が出てきましたが、いずれも省庁としては総務省のマターになるのですか。

高田 「地域DX」というのは「自治体DX」と「地域社会DX」の統合概念です。

 

 

 

「自治体DX」とは、主に自治体事務のDXのことといいます。「窓口が自動化されます」とか、マイナンバーカードとかマイナンバーの活用など主に自治体が提供するサービスをDX化することです。他方、「地域社会DX」では、水産、鉄道、観光、自動運転といった、便益を受ける主体が住民になります。

ーー厳密に区分すると、中身が明確になりますね。

高田 そうですね。ただ、住民目線で言えば、どちらのサービスも数ある生活サービスの一つにすぎないので、違う世界が2つあるというわけでありません。「地域DX」という枠組みで、「自治体DX」「地域社会DX」というのは政府が支援する際のアプローチの仕方の違いくらいに思っておく方が正しいのかもしれません。

先端技術と地域課題解決

ーーこう考えてくると、地域社会DX、地域DXというのは、ある意味でエンドレスですよね。自治体がある限り、また通信技術がある限りエンドレスで、3カ年や5カ年計画などをしながらステップが上がっていくということになりますね。

高田 結論だけを言えば、おっしゃる通りで、通信技術が枯れた技術になるまで営みは永続的には続いていくことになります。

ーー自治体が衰退、人口が減ってくれば、ますます比重が高まります。

高田 そうです。加速度的に人口減少が進む中で、より効果的なソリューションが必要になってくる。より先進的技術を入れようと思うわけじゃないですか。そうすればそうするほど今の世の中の社会水準とギャップが出てくる。それを使いこなそうと思っても、すぐはできないわけで、そこのギャップを実証で埋めていくというところです。

ーー③について言うと、総合通信基盤局は基盤局でネットワーク基盤の構築を急いでいますね。それとはどうかかわってくるのですか。

高田 ここの③は、主に自営網なんです。例えば「河川の監視が必要だ」という話になって、「そこに携帯電話の基地局を置きましょう」ということにはなりづらい訳です。そこで自治体を支援、補助して、こうしたネットワークを整備しようとするわけです。

ーーまさに、Wi-Fiや11ah、ローカル5Gなどの「プライベートワイヤレスネットワーク」はとても身近で重要ですね。

高田 相性がいいと思います。

ーーそれらと地域課題解決がうまく結び付いて効果が上がって、それが広がるというのが一番効果的ですね。先ほどいくつか例示が出ましたが、重点分野はあるのでしょうか。

高田 誤解のないように申し上げると、「農業」「水産業」「防災」といった個別分野を掘り下げているかというと別にそういうわけじゃないんです。あくまで有線なり無線なりの通信技術を活用し、それを有効活用しているかどうかが視座になります。たとえば「Wi-Fi HaLowか、ローカル5Gをうまく使っているから、こういう例を広げていきたい」ということであるとか分野を問わず社会課題解決にトライしてないような新規性のある試みを先端技術でやっていきたい、そういうものが出てくることを期待はしています。

ーーまだ実用化されてない先端技術を地域課題解決にうまく活用していく。

高田 そうです。国の役割としては、民間がなかなか初めの一歩を踏み出せないところの背中を押してあげるというところなので、実証を通じて未踏分野を開拓していくことがこの課としてやっていくべき重要な仕事だと思います。

ーー先端技術と地域課題解決とが「スパーク」するというか、そこで新しいものが生まれるようにする、それが仕事ですね。

高田 化学反応を起こすことです。ただ、導入の段階でスパークさせたときに、正しく煙が上がるもの、美しい火花が散るようなものじゃなければいけないわけで、実証の段階でもできるだけ「毒ガス」が出ないようにしていくということです。
他方、タックスペイヤーに対する説明責任がある中で、どれだけ上のステージ、実装に上がっていく「玉」を実証で見分けるかが大きい課題だと思うんです。他方、そこを突き詰めると挑戦的なものは手が付きにくくなってくるので、悩ましいところだと思っています。

ーーそういう点では、現在の「Wi-Fi×IoT」は非常に実践効果が大きいですね。

高田 無線技術に期待するところは、そこです。人の通常の活動範囲外のところで、無線技術とデバイスを組み合わせることで、人間の社会活動や経済活動をこれまで以上に広げていくことで、とても有益な成果が出ると思います。
かつて考えたよりIoTの質が上がっているのは事実なので、AIも組み合わせて、スマートなことができるようになっています。
いずれ今度はロボティクスが入ってくると、より人間の活動範囲が広がっていく。ドローンもそうですね。期待できると思います。

ーー Wi-Fi、11ah、ローカル5Gなどは、公衆インフラじゃないところ、プライベートのところで頑張ってやっています。

高田 公衆網が届いてないところは、往々にして人の活動範囲外だから届いてないわけです。でも、人の活動範囲外だから一切人はいないかというと、そんなことはなくて、そこでも人間にとって死活的な活動は行われています。林業・農業が典型です。自然のメンテナンスも入れれば防災もそうだと思うし、人やモノの移動みたいな話だと、人が住んでない地域だって道は通っているわけなので、ドローンや車が通る必要性がある。これまで公衆網は基本的に人の活動範囲をカバーするという思想でやっているわけですけれど、そこを人の活動外というところで、とても有益です。

ーー今までは携帯電話などのように、一律に人口加入率で評価していましたからね。

高田 しかも、人が減っているわけなので、単純計算でいくと公衆網は縮退する可能性だってあるわけです。そういったときに人の活動範囲の後退をできるだけ止めていく手段として、プライベートのワイヤレスはポテンシャルを秘めたものだと思います。

Wi-Bizの新たな役割と期待

高田 「官と民のつなぎ役」ですよね。僕らが政策として無線なり有線の先進技術を扱おうとしたときに、生の技術者の用語をそのまま持ってこられても、咀嚼することはなかなか難しくて、かといって、技術進展が早いと詳しい人を役所に置くことも難しいのでそこの間に介在する橋渡しの人なり組織は絶対にいると思っているんです。賛否両論があるとは思うんですけれど、官民連携がうまくいっている産業分野はやっぱり強いんです。
一個社・一企業を代表するのではなく、業界なりコミュニティを代表する存在がいていただくことは、政策を企画立案していくうえで、本当にありがたいと思っています。官民連携を進めていくには、そういう存在は必須だと思いますので、ぜひ期待をしたいと思っています。


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