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技術情報
採用を加速する自治体、民間へも広がるOpenRoaming
一般社団法人無線認証連携協会(Cityroam) 代表理事
株式会社グローバルサイト 代表取締役
山口 潤
この一年で鳥取県や福井市などでも始まり、OpenRoamingを導入した自治体はさらに増加しました。設置箇所も自治体アセットを利用したものだけでなく、駅施設や商店街など市民や観光客により利用しやすいエリアへの展開が進んでいます。
既存の設置自治体でも利用者数は増加し、東京都の整備するTOKYO FREE Wi-Fiでは、接続数が1年半で約40倍もの増加 ※1 となっています。
また、今年は万博も開催され、会場内ではOpenRoamingでの提供が行われており、本年度はより利用者数の増加が見込まれます。
万博会場内ではOpenRoamingの提供が行われている
また、民間自らがOpenRoamingを採用する事例も増えて来ました。
昨年から実証実験として進めていた年間歩行者総通行量1億人※1で日本最大規模の来街者を誇る大阪の心斎橋筋商店街が本運用を開始。こちらは自治体の補助金によるものではない、純粋な民間設置のものです。
この商店街では、既に無線LAN環境を提供していましたが、今まで行っていたSSIDを発見し設定を行うというプロセスは必要なく、到着した時にすぐに接続するOpenRoamingは来街者には利便性が高いため、市内で行われている万博からの流動も含め利用者数が伸びる結果となっています。
心斎橋筋商店街では580mのアーケードで切れ間なく利用が可能
海外でもさらに展開が進む
ロンドンのウェストミンスターでOpenRoamingの提供が始まりました。市役所・市議会、図書館や児童センターといった公共施設の他に平日開催される露店営業のマーケットにも設置され、住民の利便性にも重きが置かれています。
ブラジルでもサンパウロにあるメディア複合企業が運営するガゼータ劇場のほか、イタウ銀行が2,000の支店に展開することを表明しています。
孤立したコミュニティへの整備事例も出てきています。オーストラリアでは、砂漠環境にある集落への提供が行われています。低軌道衛星をバックホール回線として利用し、太陽光発電にて駆動したものです。
キャリアグレードWi-Fiの提供により、Wi-Fi Calling ※3による通話サービスや電子政府サービスや医療、教育、救急へのアクセスが容易になりました。
ロンドンでは民間再開発での導入も進む(ビショップスゲート22番地)
ID発行サービスの増加
OpenRoamingを使用するにはプロファイルのインストールかOpenRoamingに対応するキャリアのSIMが必要です。
一部端末メーカーではアカウントと連携したプロファイルがインストールされており、ユーザが「インストール」を意識せずに接続できる仕組みを用意していますが、今までは各自治体のプロファイル発行ページを通したインストールが一般的でした。
昨年度からはID発行対応サービスも増え、普段利用しているサービスからの自動インストールで「OpenRoamingのプロファイル」を意識することなく利用することも可能になってきています。
Wi2(ワイヤ・アンド・ワイヤレス)の「ギガぞうWi-Fi」や「au Wi-Fiアクセス」のアプリ、NTTBP(エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム)の「Japan Wi-Fi auto-connect」アプリにOpenRoaming接続機能が搭載されました。
また、企業のLINE公式アカウントと連携するアプリやGoogle WorkspaceなどWi-Fi以外のID発行基盤と連携するソリューションも出てきています。
対応機器の増加
OpenRoamingを提供するには、Wi-Fi Allianceによって制定された「Passpoint®」の規格に準じたアクセスポイントが必要です。対応機器が限られており、選択肢が少ないという意見もありました。
今年5月に開催された「Interop Tokyo」では、会場内で構築される、最新のネットワーク技術を駆使したライブデモンストレーションネットワークShowNetにおいて、商品化前のベータ版ファームウェアの機材を含め7社の機材でOpenRoamingの運用が行われました。
また、複数社からPasspoint/OpenRoaming対応の機器が出品され、キャリアグレードから小規模店舗対応のものまで選択肢が広がりを見せています。
Interop TokyoではマルチベンダによるOpenRoamingが提供された
協会の発足と役割
NGHSIG(セキュア公衆無線LANローミング研究会 Next Generation Hotspot Special Interest Group)としてOpenRoamingの前進であるWBA City Wi-Fi Roaming 2017トライアルに参加し8年目を迎えます。昨年にはOpenRoamingを含めたセキュアな認証連携の普及促進・課題解決を行う団体として社団法人無線認証連携協会を創設しました。
しかし、普及に伴い新たな課題も増えてきています。セキュリティやクオリティの確保は認証部分だけではなく、無線LANビジネス全体を俯瞰して解決しなくてはならないものであり、各機関・団体、企業様の協力が必要ですので、今後とも皆様方のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
※1 出典:都政の構造改革ポータルサイト #シン・トセイ 「進捗状況(2025年1~3月):OpenRoaming対応Wi-Fiの整備プロジェクト【デジタルサービス局】」 2025.4.24 公開より
※2 出典:シービーアールイー株式会社「第7回 心斎橋筋商店街 歩行者通行量調査レポート」2025.3.26 発表 心斎橋筋商店街振興組合提供データより
※3 携帯電話ネットワークが提供する携帯電話基地局の代わりに、Wi-Fiを使用したIPネットワーク上で通話やSMSの送受信をする機能。日本では導入されていません。
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