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インタビュー
Ruijie Networks Japan株式会社
カントリーマネージャー 李 天遠 氏
日本の市場に即したWi-Fi製品を開発
ローカル5G、キャリア5G、FTTRで新製品を準備

中国のネットワークインフラ製品のベンダーで、エンタープライズ向けWi-Fi製品の高いシェアを持つRuijie Networks日本法人(曽 志 代表取締役)が、本年、無線LANビジネス推進連絡会に参加しました。
日本法人のカントリーマネージャー 李 天遠(リ テエン)氏に、Ruijie Networksの事業戦略と日本市場に向けた取り組みの状況を聞きました。

 

 

技術の先端を走ることを心掛けている

–RuijieNetworksは2019年に日本法人設立ということで、まだなじみが薄いかと思いますので、会社の紹介をしていただければと思います。

李 親会社のRuijie Networksは、2003年に中国で設立されたネットワークインフラ製品のベンダーです。ネットワークのインフラ製品とソリューションの研究開発・設計・販売を主にしています。今年で20年目となります。
Ruijieのミッションとしては、技術とビジネスシーンを融合したものに注力していまして、ユーザーに寄り添った製品の設計を心がけています。Ruijie製品は、世界50カ国以上にビジネスを展開しています。自身による開発能力というところを特徴としています。社員数がほぼ8000人ですが、半分の4000人以上は開発エンジニアとなっています。採用は大学院卒・大学学部卒がほぼ半分ずつです。中国国内に7カ所の開発センターを設けて開発を行っています。テスト環境も他社より非常に力を入れています。開発センターには3000ポート以上のテスト環境を設けています。

 

 

グループ全体の売上は約2000億で、20年連続30%増を超えています。今年は2600億を超える予定となっています。アメリカの調査会社IDCのレポートによると、Ruijie Networksはエンタープライズ向けのWi-Fi製品が中国市場で44.6%のシェア1位です。エンタープライズワイヤレス製品も中国市場で2位となっており、イーサネットスイッチは3位となっております。

 

 

–日本法人は2019年に設立と聞いています。

李 Ruijie Networks Japanは2019年に設立しています。ミッションとしては、「今の素晴らしい会社とともに、もっと世界をリードする会社に一緒になりましょう」と掲げています。特に日本市場においては、全ての製品が日本向けの製品になっていて、ローカル化が非常に進んでいます。我々の型番も全部、日本のみの製品として販売させていただいています。例えば我々のクラウドサービスに関しても、サーバーも開発・管理も全部日本に置いており、東京で管理していますということを特徴としています。

 

 

–Ruijieは漢字表記はどうなるのでしょうか。

李 漢字表記は「鋭捷」となります。鋭は、先端とかエッジという意味で、捷は非常に敏捷だという意味です。常に先端的なものを考えさせていただいています。社内でよく使うのは「マイファースト」という言葉です。意味としては、他社が持っている技術あるいは他社が持っている製品の開発よりも、我々のほうが初めて製品を出したり、機能を出したするという意味で、常にそれを考えながら製品を製作しています。

–技術志向というか、絶えず技術の最先端を引っ張っていこうということを心がけている経営ということですね。

李 そうです。我々は他のメーカーよりまだ歴史が浅く、最初はいろいろなメーカーの代理店として企業を起こした会社です。徐々にお客さんが増えてきているなかで、やはり自社の製品を持っていかないといけないという経営陣の判断をしていまして、それで自社開発、自社製品を出すようになっているのです。今は製造工場をいくつか持っています。
最初は中国の教育分野からスタートした会社です。大学、中学校、高校のソリューションが非常に強いといえます。例えば中国の学生寮は、1つのキャンパスの中に2万人か3万人ぐらいが一緒に暮らしています。通常であれば、そういうボリュームの製品は、なかなかメーカーが出しておらず、我々が独自で開発して、同じネットワークで数万人がネットゲームをやっていたり、オンラインの授業を受けたり、ネットサーフィンができるようなソリューションが我々からスタートしていまして、それで徐々に他の領域にも展開していくような形に今はなっています。

日本のマーケットに合った製品を開発する

–日本法人はどういう位置づけでしょうか。

李 我々はグローバル化したのが2016年ぐらいです。今は50カ国に進出していますが、日本市場が断トツの成長率と売上を立てています。

–日本での主な戦略、中心となる分野はどこですか。

李 中国の説明をしましたが、我々は大学の寮に強みがある会社です。日本市場では中国のような規模の寮は少ないですので、寮ではなくてマンション・アパートに対するソリューション提供からスタートしています。現在、集合住宅というキーワードに関しては、Ruijie Japanの売上の90%を占めています。

–集合住宅のネットワークインフラの提供のビジネスですね。集合住宅の各住戸でWi-Fi環境がないと困るわけで、そういうところを充実させていこうというのがポイントですか。

李 そうです。私たちの最初のターゲットとして、開拓に力を注いでいます。今後、似たソリューションとして、例えばケーブルテレビ業界、あるいはホテル、そして今後はデータセンター事業も展開していこうと考えています。さらに、日本メーカーのOEM・ODMもやらせていただいています。

–中国本国と日本とでは、製品戦略的には違いがあるのでしょうか。

李 日本のマーケットに即した商品を開発しています。例えば、目玉商品がこちらの壁埋込型のアクセスポイントですが、こちらはコンセントに入り込むようなソリューションになっています。日本で唯一Wi-Fi 6対応の壁埋込型のアクセスポイントとなっています。他社メーカーはWi-Fi 5のものがありますが、技術の壁がございまして、Wi-Fi 6の製品が出せない状態です。我々は2020年から発売していまして、今は2年たっていますが、まだ日本唯一のWi-Fi 6の製品となっています。

 

 

中国でも似たような製品はございますが、ビジネス習慣あるいはお客様が使うときの習慣が違っているので、中国の製品は壁から出すタイプのものです。日本においては見た目が非常に気になる市場なので、中国の既存の製品ではなくて、日本市場の調査を行って、それで製品を開発しています。2020年後半にリリースしていまして、2021年は出荷台数が15万台ぐらい。今年は、まだ年末になっていませんが、すでに30万台以上を出荷しています。

–中国の製品をそのまま持ち込むのではなく、日本のマーケットに向けて独自に製品戦略を進めていくということですね。

李 そうです。製品を見ていただくと、「JP」のマークが入っているものが結構ございまして、基本的に「to JAPAN」というものになっています。Wi-Fi関連が日本の我々の売上の90%以上を占めています。今後、Wi-Fi 5から6・6Eに伸びていくことを期待しています。そのあたりの関連製品を今、我々も考えています。

–Wi-Fi以外の商品にはどうでしょうか。

李 今のところ、マンションというキーワードとして出させていただいていて、その中に一連のソリューションも構築しています。スイッチとルータ、ゲートウェイを提供しています。
我々の事業の柱は2つございまして、1つがワイヤレス製品、もう1つがデータセンターです。中国のインターネット業界のデータセンタースイッチに関しては、シェアはナンバー2になっています。例えばAlibaba、Tencent、TikTokでは、我々がメインのベンダーとなっています。今後は、そういった製品も日本に展開したいと考えています。

お客様と議論してソリューションを提供していく

-日本では、企業がDXへの組みを進めています。どのようにDXを一緒に進めていきますか。

李 コロナにより日本市場がだいぶ変わっていると認識しています。在宅・テレワークの企業が非常に増えています。そのため、通常は自宅あるいは会社であまり使わないネットワークも使うシーンが増えています。また、IoT製品が最近は住宅でも会社の中でも増やしています。そうすることによって、例えば機器の品質あるいは同時接続数を非常に求めるようになっている状態です。ですから、各企業が使っているWi-Fi 5、11ac、あるいはもっと古い11nの製品が今は物足りない時代となっています。そこで、我々は今後、11axあるいはWi-Fi 6EあるいはWi-Fi 7をメインに事業展開をしていきたいと考えているところです。
もう1つは、半導体不足ということがキーワードになっています。大手の機器メーカーも納品が不透明、不確定的な時代になっています。納品が1年後とか、納品時期が全然分からないとか、そういうところもあります。

我々、出荷台数ベースが非常に多いメーカーとしては、半導体不足の中でも製品をちゃんと短納期で納品できるところも我々が努力しているところです。

こうしたなかで、我々が具体的にどのようなことをするのか。我々日本法人はただの営業窓口に留まるのではなく、お客様の利用するシーンあるいは将来にやりたいことを、営業と技術を含めヒアリングさせていただいて、今何が足りないのか、どの機能が足りないのか、どうやって技術で実現するのかというところを、お客様と議論しながらソリューションを開発したり問題解決に向けて製品を提供させていただくような形になっています。
我々は、日本市場においては、現場力というものに注目しています。つまり、自社内で考えることではなく、お客様の現場、お客様の社内で、お客様の技術者と議論しながら、一緒に仕事をしながら、実際にあった問題を体験しながら、調査したりサポートしたり価値をつくることが、我々Ruijie Japanのミッションとなっているのです。
そういう形で事業を進めながら、日本企業のDX推進を一緒に進めさせていただきたいと思っています。

 

 

–半導体については、大手企業も非常に苦しんでいます。御社がスムーズに製品出荷できるのは、特別の調達ルートがあるからですか。

李 我々は中国のエンタープライズ市場で44%ぐらいのシェアを持っていて、それなりの出荷ベースがございます。我々は独立系の会社ですし、チップメーカーも中国市場での売上を考えないといけないですから、我々が大口になっているところでは優先的に入手ができるようになっています。我々はグローバルに展開する際に、日本が地域的にも中国と近いし、文化も似ているところが多いので、我々のグループの中でも日本市場は注目する市場になっています。社内的にもリソースを日本に寄せてくるような感じとなっています。

–本社国からの日本市場への期待、日本法人への期待はどのようなものですか。

李 Ruijie Japanの売上としては、2019年はだいたい5,000万、2020年は2億、2021年は14億、今年はたぶん40億を超えるのではないかという見込みをしています。倍増というより、毎年4倍か5倍くらいの成長率をしています。我々はグローバルの中で成績を一番出している市場ですので、会社としは日本市場を他の市場が学んでいくような市場につくりたいというところでもあります。なので、我々、営業窓口のみではなく、製品ベースのプロダクトマネージャーや開発者などが常に日本にいるような状況になっています。

–今後、どのビジネス分野に注力していきますか。

李 我々はリソースが限られている中で、メーカーでもございますので、業界の大手をターゲットとしてやらせていただいています。例えば今、注目している市場はマンションISP市場です。そういう市場でトップ9社がございまして、今、トップ9社全社と議論しています。

集合住宅向けのソリューションを開発中

–Wi-Fi事業、ローカル5G事業での、主な取り組みと製品を教えてください。

李 先ほどご説明させていただきました壁埋込型のアクセスポイントがメイン商品となっています。
その他には、古い建物ですとまだADSLを使っているところが非常に多いです。おそらく、建物は何百万棟を残しているはずです。しかし、ADSLサービスは来年1月で終了です。そういうところを、これからどう対応していくのかということから、我々は電話線・同軸ケーブルソリューションの検証機を出しています。製品はまだリリースしていませんが、今、実証実験をやっています。G.hnという技術を使わせていただいて、最大1.7ギガ、つまりLAN方式と変わらないぐらいの速度のソリューションを今後、提供させていただくような形になります。

–どのケーブルになるのですか?

李 電話線と同軸ケーブルの両方を準備しています。電話線と同軸という2つのソリューションです。ADSLを使っている古い建物ですと、LANの工事をするのが非常に難しくて、しかもコストが掛かりますので、LANを使わずに既存の電話線を転用してインターネット構築をするソリューションとなります。
同軸も同様に古い建物ですとLAN配線ができない建物が結構多く、特に団地はLAN方式が構築しづらいです。既存の同軸線を転用してインターネット構築をするものです。

 

 

–電話線・同軸をそのままで高速化できるということですね。

李 そうです。今年の年末あるいは来年初めの製品となっています。

もう1つがローカル5Gです。マンションに関しては、今までのやり方としては配線工事をしないといけません。それに人的なコストあるいは金銭的なコストが掛かっています。しかし、今、総務省が推進しているのはローカル5Gです。建物の周りに5G基地局を構築し、宅内にSoftBank Airのような機器を1台置けば、それでローカル5G電波を拾って、Wi-Fi電波を端末に出すようなソリューションを提供するため、実証実験を年末に行う予定となっています。商品化するのは2024年スタートからと考えています。

 

 

 

–この冬から実証実験の予定ですか。

李 早ければこの冬から、遅くとも年明けからとなっています。

もう1つのソリューションを準備しています。先ほどローカル5Gで、ケーブルテレビやISPが基地局を作ってサービス提供する方式を話しましたが、もう1つ、我々が新しく作っているODUとIDUというソリューションがあります。
こちらは、KDDI、ソフトバンク、ドコモ、楽天のキャリアの5G電波を拾ってWi-Fi化するというソリューションです。これはSoftBank Airのようなものですが、5G電波は浸透性が弱いので、宅内に入ることが難しいため、そういうところでIP68、つまり防塵・防水の規格を持っているODUをベランダに1台付けて、LAN方式で中に1台アクセスポイントを置くようなソリューションを提供するものです。実証実験はすでにやっていまして、来年での期待が非常に大きいと考えています。

 

 

 

–住宅ごとにアクセスポイントを窓際に置いて5Gを使いましょうという、簡便な方式ですよね。

李 そうです。大手のディベロッパーとキャリアと手を組んでやらせていただいています。

–主にワイヤレスを中心に日本のビジネスを進めていくという戦略をお聞きしました。

李 もう少しあります。例えばFTTRです。日本のネットワーク構築をするときは基本的にFTTH(Fiber To The House)が多いのですが、我々が中国で実行していて人気のソリューションがFTTR(Fiber To The Room)で、日本でも展開させていただきたいというところです。まだ日本ではFTTRは今のところ新しいソリューションで、今後、こちらのソリューションも期待しています。

 

 

–HomeとRoomの違いは何ですか。

李 Houseが光ファイバを建物の下、MDFなどにしまっていて、その後は全部LAN方式で構築するやり方です。新しいソリューションのFTTRは光ファイバを部屋まで持っていきます。例えば3LDKの部屋があって、3のRoomのところまでいきます。1台ずつ1Room・2Room・3Roomというところで、非常に高速度で安定化しているインターネットを使っていただけるようなソリューションとなっています。

–光ファイバーを分岐しないでダイレクトにRoomまで持っていき、高速で利用できるようにしようということですね。

李 はい、そうです。新しいソリューションですので、まだ実証実験の段階前のソリューションです。これから展開していくような形になります。これがまさに日本での「マイファースト」みたいなソリューションとなっています。

Wi-Bizと一緒にWi-Fiの普及をさらに進めたい

–Wi-Bizは創立10周年を迎えます。北條会長のもとで取り組みを広げています。Wi-Bizに加盟された理由と、今後、Wi-Bizの活動をどのように協力して進めていくのか教えてください。

李 創立10周年、おめでとうございます。Wi-Bizは、無線LANの普及および拡大を中心的に担っている組織だと考えています。ワイヤレスブロードバンドの時代が来るかなと思いつつ、どこまでも無線LANが活用できるようなことを実現したいという理念があることを非常に理解しています。
人と人のコミュニケーションは、コロナがきっかけでもありますが、対面ではなくオンラインで、スマホ同士あるいはPC同士でコミュニケーションを実現させています。東京のような大都市は無線LANの普及は著しいですが、地方は東京のような環境ではありませんので、電波が悪かったり、ネットワークが整備されてないところが多いという現状もございます。Wi-Bizと一緒に最先端のネットワーク技術で日本全国をカバーして、より安定的なネット速度が提供し、特に最近は災害も多いので、災害時もすぐに対応できるワイヤレス環境を実現できるような事業を我々も推進していきたく、弊社も力を尽くしたいと考えています。

Ruijie Networks Japan株式会社
HP:https://www.ruijie.co.jp/
問い合わせ先: https://www.ruijie.co.jp/sales

 


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