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活動報告
6GHz帯無線LAN(Wi-Fi 6E)の検討会への参加と今後の取り組み

技術・調査委員会 本橋 篤

4月19日、総務省は「6GHz帯無線LANの導入のための技術的条件」について、情報通信審議会から一部答申を受けたと発表した。これにより、6GHz帯無線LAN(Wi-Fi 6E)の国内での利用に向けて一歩前進し、広帯域を活かした高速・多端末での高精細映像配信や工場・医療における遠隔制御などの新たな利用シーンの実現、そして次世代規格802.11beを見据えて向けて大きく動き出した。

検討の体制

情報通信審議会 ※1情報通信技術分科会※2 陸上無線通信委員会※3 に「5.2GHz帯及び6GHz帯無線LAN作業班」※4 が設けられ、配下には既存の6GHz帯を利用する固定通信・衛星通信・放送番組中継・電波天文との共用検討を行う「6GHz帯周波数共用アドホックグループ」が設置された。
さらに、国内及び海外の動向調査や具体的な共用検討・実証実験を行うため、「『6GHz帯における無線LANの周波数拡張の検討に資する調査』調査検討会」と固定通信・衛星通信・放送システムの各作業班が設置された。
これらの検討結果が陸上無線通信委員会に報告され、2022年3月のパブリックコメントの募集を経て情報通信審議会にて審議され、今回の一部答申となった。今後、省令改正を経て6GHz帯無線LANシステムが晴れて利用可能となる見込みである。

※1 情報通信審議会https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/index.html
※2 情報通信技術分科会https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/bunkakai_index.html
※3 陸上無線通信委員会https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/idou/index.html
※4 5.2GHz帯及び6GHz帯無線LAN作業班
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/idou/5-2_6LAN.html

 

検討会での議論

Wi-Biz技術・調査委員会では、上記の作業班・アドホックグループ・調査検討会(以下検討会と記す)に、無線LANの利用者・提供者の業界団体として参加を行った。
検討会では、6GHz帯無線LANの需要動向・ユースケース、標準化動向・海外動向の調査が行われ、Wi-Bizでは主にニーズ・ユースケースと市場規模などビジネス面の情報提供を行った。
検討会のメインテーマである、無線LANと既存無線システムとの周波数共用の検討には多くの時間が割かれ、固定通信・衛星通信・放送システム・電波天文それぞれについて、シミュレーションによる検討と屋内・屋外の実証実験により、共用の可否についての慎重に検討が行われた。特に、シミュレーションモデルについては、複数の与干渉端末からモンテカルロ法による確率的数値計算で干渉を評価するアグリゲーションと、与干渉1局からの干渉を評価するシングルエントリーについて多くの議論が交わされ、干渉に対する既存通信システムとの考え方の違いが目立つ結果となった。

6GHz帯無線LANシステムの技術的条件案の内容

一部答申の結果、今回利用可能となる見込みの周波数は、5925MHz~6425MHzの500MHz幅であり、20MHzで 24チャンネル、40MHzで12チャンネル、80MHzで6チャンネル、160MHzでも3チャンネルが利用可能となる。

 

通信モードとしては、屋内限定で200mW以下となるLow Power Indoor (LPI)モードと、屋内外で25mW以下となるVery Low Power (VLP)モードが今回利用可能となる。
しかしながら、6425MHz~7125MHzの700MHz幅と、高出力で屋内外の利用を想定しているStandard Power (SP)モードについては、継続検討となっている。

Wi-Bizとしての今後の活動

今回の制度化を受けてWi-Bizとして以下の3点で継続して取り組んで行くことを考えている。

・セミナーでの発信
2021年11月の社員総会では6GHz帯作業班で主任を務められている南山大学理工学部教授、梅比良正弘氏より「ワイヤレスLANの将来展望と周波数共用技術」の特別講演を実施した。また、2022年3月にはWi-Fi 6Eの最新動向についての技術セミナーを開催※5 。今後のセミナーではWi-Fi 6Eの製品紹介やユースケースなどを取り上げていくことを考えている。

・メールマガジンによる発信
北米ではWi-Fi 6Eを屋外で利用する場合にAFC(Automatic Frequency Control)の運用が計画されている。既存利用者(衛星通信や中継通信システム)のいるバンドを含む6GHz帯をWi-Fiのようなアンライセンスバンドに提供する際に、既存システムと干渉を起こさないように中央集権的なデータベースを使って自動的に調整するシステムである。

 

 

このAFCに関連した海外の状況としてAFCシステムのオープンソース化の記事を2021年9月号 ※6で配信した。また、2022年1月には米国ではAFCシステムについて運用事業者を募るためFCCが公募を行った記事を配信 ※7した。メールマガジンでは継続して北米のWi-Fi 6Eの状況やAFCの運用状況、さらにOpen AFCの活動状況について発信していく予定である。

・作業班・検討会への参加
これまで技術・調査委員会のメンバーが中心となって、上記の検討会に参加し、6GHz帯における有効なユースケースの提案や海外の状況などを報告し、制度化に向け貢献をしてきた。今回制度化される5925MHz~6425MHzの500MHz幅のAFCを活用した屋外での利用の検討や、その他の周波数での屋内外での利用促進のため、検討会に継続参加する予定である。

※5 活動報告:第15回技術セミナー「Wi-Fi6E」テーマにオンライン開催
https://www.wlan-business.org/archives/36245
※6 海外情報:米国で「AFC」技術がオープンソース化
https://www.wlan-business.org/archives/33212
※7 海外情報:6GHz帯の効率的な運用を可能にする「AFC」運用者のメリット
https://www.wlan-business.org/archives/34586

 


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