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活動報告 第14回技術セミナー
「Mesh Wi-Fiって、実際どうなの?」をオンライン開催

技術・調査委員会 塚本 潤

9月10日、「第14回目技術セミナー」を「Mesh Wi-Fiって、実際どうなの?」をテーマに開催しました。シスコシステムズの小川様、バッファローの市川様、PicoCELAの古川様より、それぞれMesh Wi-Fiについてご講演いただきました。
3回目のオンライン開催となりましたが、過去最高の300人を超える方から参加登録をいただき、大盛況に終えることができました。

北條会長が挨拶

司会は技術・調査委員会の小松直人委員長が務め、冒頭に北條博史会長から挨拶がありました。
新型コロナもようやく収束の兆しが見えてきたところですが、これからはwithコロナの生活様式をどう作るかを考えていかないといけない、今回のセミナーも会場で開催していた時以上に集まっていただき、参加しやすいのがオンラインの強みです。新しい情報発信が加速し、このやり方はコロナが収束した後も続くでしょう。
自宅や会社、レンタルスペース等から参加されている方がいると思いますが、共通しているのはWi-Fiを使っていることであり、Wi-Fiがまさに生活の一部になっています。
Mesh Wi-Fiは、もともと2000年代後半に「IEEE802.11s」ができましたが、キラーとなるユースケースがなかったため広がらなかったが、サービスエリアを拡張でき故障に強い強固なネットワークを作ることができるなど、様々なメリットがあります。
日本では屋内限定やDFS等により使える帯域が少なくMesh Wi-Fiに不利な状況が続いてきましたが、6GHz対応の開放に向けて作業班が行われているところであり、Meshの短所であるスループット低下が解消できるかもしれません。
このように、提起しました。

Meshの概要について提起

1番目に、シスコシステムズ合同会社・エンタープライズネットワーキング事業テクニカルソリューションアーキテクトの小川正晃様にご登壇いただき、「Mesh概要」と題しご講演いただきました。

 

 

初めに、コロナ禍で出社が減った一方、リモートワーク・在宅勤務への対応やオフィス移転などに追従するためのネットワーク更新が増えていると述べました。
次いで、SEが現地調査やサーベイに行けないため、Mesh APを置きたいという相談に対して聴講者にリアルタイムアンケートを取ったところ、「現地をみないと物理的、電波的にちょっと心配」が44%、「このご時世なので、現地調査なく設計・導入したい」が35%と、まだMesh Wi-Fiに対する心配の方が多いことが分かりました。
続いて企業向けの一般的なMesh技術について、メーカー毎に独自の実装をしていることが多いのでメーカーを揃える必要があると説明し、有線接続APと比べた一般的なMesh APのメリットとデメリットを説明しました。

 

 

 

また、Mesh APのメリットとして、ケーブルの敷設費用を削減できること、スイッチのコストを下げられること等を挙げ、デメリットとしてホップ数が増えるとスループットが低下することを挙げました。
さらにスループット低下を防ぐための工夫として、ライセンスバンドの4.9GHz帯を利用することを説明しました。
APの設置間隔について、Mesh構成ではAPを有線接続より高密度で置く場合もあると述べ、指向性アンテナを使えば100m以上先にもホップ可能と説明しました。さらにMeshの経路切り替えについて説明し、APがダウンしても他のAPが出力を上げてカバーしたり、ルートを変更したりする製品を紹介しました。
最後に現地調査にいけないケースに対しては、プランニングツールを活用することで、APの数や配置を試算できることを述べて、締めくくりました。

Mesh Wi-Fiのコンシューマ向けのユースケース

2番目に、バッファローのネットワーク開発部内製FW第一開発課課長市川剛生様に登壇いただき、「Mesh Wi-Fiのコンシューマ向けのユースケース」と題し講演していただきました。

 

 

初めにAirStationシリーズの歩みとして、今まで一貫してお客様の困りごと解決のための商品開発をしてきたと述べ、代表例としてワンタッチで接続できるAOSSやMesh製品を挙げました。AOSSが独自仕様でメーカー間互換がなく端末の対応が必要だったため、WPSを策定し互換性問題を解決したことを説明し、Meshについても独自方式から業界標準のWi-Fi EasyMeshに対応したと述べました。

 

 

さらにルータの市場状況について説明し、2021年8月時点でWi-Fi6が47.9%を占めており、ユーザが電波到達範囲を重視していることを述べました。Wi-Fi中継器市場が17年度比で174%と急成長している一方、Mesh対応製品の比率は15.7%であり、まだ認知度が低いと述べました。
次いで、Wi-Fi EasyMeshの特長として繋ぐだけでMesh Wi-Fiが実現できる点を挙げ、最新世代のWi-Fi6対応製品はすべてEasyMeshに対応していることを紹介しました。また、従来のWi-Fi中継器の課題として経路が状況に応じて最適化されないことや端末が移動時に適切なAPに繋がらないこと、無線が中継できないことがある点を挙げ、Wi-Fi EasyMeshでは最適な通信経路の自動選択や高速ローミング、有線LANによるMeshで解決できることを説明しました。
そして、簡単セットアップやメーカー間の互換性が維持できることがメリットであると強調し、最後に対応製品ラインナップを紹介しました。

エンタープライズ無線Meshが拓く新しいWi-Fi通信の活用

3番目には「エンタープライズ無線Meshが拓く新しいWi-Fi通信の活用」と題し、PicoCELAの代表取締役社長古川浩様が講演しました。

 

 

初めにPicoCELA株式会社について紹介があり、18年度程エンタープライズ向けMeshに取り組んでいることを説明しました。そして、PBE(PicoCELA Backhaul Engine)について説明があり、様々なチップに組み合すことができること、ハードウェアも提供していること、PicoManagerというクラウド管理システムも利用できる点を特長として述べ、PBEを活用したソフトウェアビジネスについて売り上げ構成などを紹介しました。
Wi-Fi Meshの歴史について、2000年代のエンタープライズ市場のMeshブームからサンフランシスコショックによる冬の時代を経て、コンシューマ向け簡易Meshの普及が始まったことから、エンタープライズ向け本格Meshの普及が始まると述べました。
そして、PBEのオリジナリティ・優位性について、バックホール専用無線モジュールが標準である点と瞬時経路切替を実施する動的ツリー制御によって、ネットワークを断絶することなくAPを追加できる点を挙げました。さらに、LEDの点灯回数で簡単に設置確認できることやLANケーブルとのハイブリッド中継を説明しました。

 

 

続いて、従来のWi-Fiアクセスポイントとの比較実験結果を映像で紹介し、リアルタイムな経路変更を実現することで、ネットワークが断絶なくMesh経路の切替が起こる様子をデモンストレーションしました。
最後に、実際に製品が導入されたユースケースを紹介し、様々な産業においてMeshが導入されていることを強調しました。

QAセッション

講演中にとどいたWi-Fi Meshに関する質問に対し、登壇者が回答する「QAセッション」を実施しました。司会は技術・調査委員会の本橋副委員長が担当しました。

Q. 屋外でWi-Fi Meshに対応した製品もあるのでしょうか?
A. あります。屋外の方がMeshのメリットを活かせます。各社に防水に対応した製品があるので、そこからお選びいただけます。(小川様)

Q Wi-Fi EasyMeshは世界的に普及していくと考えてよろしいのでしょうか?
現時点では不透明でしょうか?
A  コンシューマ向け市場では独自メッシュからEasyMeshの流れがあり、これから普及すると考えています。(市川様)

Q 今後、価格面以外で従来の中継機を使い続けるメリットは殆どなくなると考えてよいでしょうか。
A ルータと中継器両方が対応している必要がありますが、EasyMeshとしてもルータ・中継器としても動作します。購入後にどちらで使うか考えていただいても良いです。(市川様)

Q 最適経路は通信量によってリアルタイムに変わりますか? トラフィックが増えたら別経路を通るなどできますか?
A 経路を切り替えても干渉は変わらないため、トラフィックに応じて経路変更はしていません。(古川様)

Q バックホールで利用するチャネルと端末へ提供するチャネルは別々に設定できるものでしょうか?
A 1つの製品で別々のチャネルを選択できる製品はあります。バックホールを使うと端末向けのアンテナが減ってしまったり、端末に電波を提供できなかったりする製品もあるので選ぶ際に注意が必要です。別チャネルを使うとチャネルの設計が難しくなるので、注意ください。(小川様)

Q 802.11k/v/rはスマホにはだいたい搭載されているとのことでしたが、PCにも搭載されているのでしょうか??
A 最新のPCには搭載されていると思います。(市川様)

Q Wi-Fi EasyMeshは有線で作ったエリアでも802.11k/v/rの効果はありますか?
A EasyMeshで繋がっていないところには効果はありません(市川様)

Q サンフランシスコショックのWi-Fi技術的な要因はなんでしょうか?ご紹介いただいたチャネルの数以外にあれば教えてください。またその問題は現在は解決できているものでしょうか?
A 技術に関する情報は把握していませんが、結果とMeshの効果があまりなかったため、ケーブルの敷設が多くなり工事費が高くなってしまったことが原因と聞いています。(古川様)

Q Wi-Fi Meshは工事費を削減できるが少し密にAPを入れなきゃいけない(APの数が増え、コストが上がる)というジレンマがあると思いますが、経済的にメリットが出やすいパターン(ユースケース)、難しいパターンの典型があれば教えてください。
A 屋外はコストメリットがあります。LANケーブルを敷設した方がコストが安くなる事例も当然あります。トラフィックが多いところはあえてMesh化する必要がないと考えています。エリアの充足性が必要な場合にメリットが活きると考えます。(古川様)

Q Wi-Fi6に対応するMeshAPは、Wi-Fi5と比較してどのようなメリットがありますでしょうか?
A まだMesh対応したWi-Fi6製品が出たばかりなので、お待ちいただけたらと思います。(市川様)

Q 6GHz帯が使えるようになると安定して使いやすくなると思いますが、いかがでしょうか?
A 利用CHが増えると干渉が減り安定するため、新しいユースケースが増えることを期待しています。(小松委員長)

 


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