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第2期定時社員総会 特別講演 抄録
急いでください、病室Wi-Fiが公共事業に!

#病室WiFi協議会
元フジテレビアナウンサー 笠井信輔氏

6月8日に開催された、一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会の「第2期定時社員総会」で、「#病室Wi-Fi協議会」を共同で設立された元フジテレビアナウンサー笠井信輔氏から「急いでください、病室Wi-Fiが公共事業に!」と題して、特別講演が行われました。病室におけるWi-Fiの提供状況や、コロナ禍における病室Wi-Fiの重要性、さらに病室でのWi-Fi提供が公共事業になったいきさつなどについてつぶさにお話いただきました。その講演の抄録を掲載します。

ご紹介いただきました「病室Wi-Fi協議会」のフリーアナウンサー笠井信輔でございます。これまで、さまざまな講演をさせていただいておりますけれども、今回は特に嬉しく思っております。私ががんから退院してから積極的に活動を行っている「病室にWi-Fiを!運動」、まさにその関係者である皆さんにお話しさせていただける機会を設けていただけたからです。Wi-Bizの事務局の皆さんには、こういった機会をつくっていただいて本当に感謝しております。

厚労省からの通達

今日は「急いでください。病室Wi-Fiが公共事業になりました」、これをテーマにお話しさせていただきます。ご存じのように今年4月14日に厚生労働省から通達が出まして、病院内の病室に患者さん用のWi-Fiを開設すること、これを厚生労働省の予算で工事をしていいですよという、そういう通達が出ました。

 

 

これは厚生労働省から出た1つの資料で、Q&Aというもので、「入院患者のオンライン面会等のためのWi-Fi環境の整備等に要する費用も、補助の対象になりますか」ということに関して、「本事業の補助対象となります」とはっきりと明確に書かれております。
私たち協議会としても大変喜びました。ただ、非常に分かりにくい資料の中にこれが入っておりまして、普通に読み込んでいるだけでは分かりません。皆さんにも早くこのことに気付いていただきたいなと思っております。
上限はあるんですけれども、基本的に補助は10分の10ですので、申請の仕方あるいは規模によっては全額補助の対象になるというような予算でございます。これはとてつもないことなんだろうと思うんですけれども、ただ業界の動きはこれによって加速しているかというと、そのようには感じません。自分のご商売が公共事業になることは、ものすごくチャンスだと思うんです。ただ、そこにはさまざまな壁が現在はあって、動きがあまり活発でないということが言えると思います。
これまで病院の中のWi-Fi、患者用Wi-Fiに関して、「あまり課題や話題になったことがなかった。そういったことを研究している部署もない」というお話を聞いて、私たちは、病室のWi-Fiは一般のWi-Fi事業者の皆さんのお仕事だと考えております。そこにチャンスが非常にたくさんあると思っております。

なぜWi-Fiが病院に普及しないのか

なぜ病室にWi-Fiが普及しないのか、これは病院側の意識にもあると思います。さまざまな病院の方々にお話を聞いて、病室にWi-Fiが必要だとこれまであまり認識していないという方が本当にたくさんいらっしゃいます。
なぜかといえば病室にWi-Fiを付けたからといって病院が繁盛するという具体例がほとんどないからだということなんですね。これはよく分かります。患者側としては病院を選ぶ際、私もそうでしたけど、病気を治してくれるかどうか、いい医療体制、いい医療設備の病院なのか、さまざまなことに対応してくれるのか、そして病室の環境はどうなのか、この病室の環境というのは、きれいなのか、景色はいいのか、広いのか、そういったことですね。居住性といいましょうか。そして、病院食はおいしいのか。そういったところが判断の基準となっていて、病室にWi-Fiが通っているかどうかということに関しては、ほとんど条件に入っていないのが現状ということができます。

ただ、今の時代、皆さん、入院してから「え、Wi-Fiが使えないの?」と、ショックを受ける方がほとんどというのが現状です。これからは確実に新しいコロナの時代がやってきますので、病室にWi-Fiというのは当たり前の世の中になってくるのではないかと。その最初の黎明期のときに、どう動くのかというのがとても大事で、なぜならば私たちの協議会のもとには、あるいは私のブログやInstagramのもとには、いろいろな方から、特にコロナの時代に入院した方から、「病室でWi-Fiが使えなかった。誰もお見舞いに来なかった。なので、次、再入院のときには病室にWi-Fiが通っている病院を探します」という意見が少なからず寄せられています。2~3日の検査入院だったらWi-Fiがなきゃだめなんていう方が、どんどん増えているのが現状です。ですから、こういった段階で、病室にWi-Fiの事業を確固たるものにしていったWi-Fi業者の皆さんやキャリアの皆さんが、勝ち残って生き残っていくのではないかなと私たちは考えています。

病室での経験から

今回の予算化の原動力となった私たちの「病室Wi-Fi協議会」のことから、まずはお話しさせていただこうと思います。
去年、私はおよそ半年間にわたってがんの闘病生活を送っておりました。悪性リンパ腫という血液のがんで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫という型でございました。ステージⅣで全身にがんが散らばっている状態で、「ああ、もうだめかな」というような状況でありましたけれども、ここに出ている写真というのは、6回、抗がん剤治療を行いますので、それぞれの回数における体のダメージ具合を表しているものなんですけれども、通院で抗がん剤治療を行っている方が現在は多いんですが、私はステージⅣでアグレッシブなタイプだったものですから、かなり厄介なタイプで、大量の抗がん剤投与が必要ということで、このようにかなり厳しい抗がん剤治療をしました。

 

 

ただ、途中で全く想像もしていなかったことが起きました。2019年の12月19日に入院して2020年の4月30日に退院したんですけれども、まだコロナの「コ」の字もないときに入院して、武漢からコロナが年明けにやってきまして、そして2月になると東京にも蔓延し始めて自粛要請が出て、そして私が退院するときには、まさに緊急事態宣言1回目の真っただ中に退院するというような状況でした。
何もないところから、ずっと病院の中でコロナの時代の患者としての経験を最初にさせていただきました。本当に残りの3カ月半は誰もお見舞いに来ないという状況でした。孤独というのは、まさにこういうことを言うんだなと。家族は来ていましたけれども、コロナが蔓延するに従って家族も来なくなるという。私も家族が病院でコロナにうつるのが怖かったので、あまり来なくていいということを言いましたし、お互いにそういうことで、どんどんどんどん見舞いの機会は減ってまいります。

そんな私の孤独を救ってくれたのはインターネット環境でした。ブログを書いたりSNSに投稿したりYouTubeを見たり、あるいは連載を持っていましたので、新聞や雑誌などに原稿を書いて、今はラジオを聞くにもWi-Fiです。大きな病院だったんで、500床はあったと思います。しかし、Wi-Fiの使用は部屋では禁止でありました。ですから、スマートフォンのギガを自分で使ってiPadやiPhoneを使うという状況でした。
月末になると息子たちから電話がかかってきて、「お父さん、スピードが遅くなったんだけど」と。私は家族割で、家族でギガを使っていましたので、私が使い過ぎているということで、「ごめん、ごめん」と言って、1ギガ1000円追加で買う。そうすると、その日の夕方に「また遅くなった」と、また買う。だいたい毎月8000円か1万円ぐらい追加料金を払っておりました。基本料金は払っていますから、追加料金です。とにかくそれでもお金を払い続けていたのは、外の世界と病室の中でもつながっていたかったからということでありました。

#病室WiFi協議会のスタート

退院しますと、ずっと報道の世界にいましたので、自分もがんに関する活動をしなければいけないということで、さまざまながんの活動を行っておりました。
この8人で協議会をつくったんですけれども、私はこれを病室Wi-Fiアベンジャーズと呼んでいるんです。アベンジャーズと一緒で我々のチームに代表はいません。それぞれがそれぞれの得意なことをやっていくという。アイアンマンが一番目立っていますけれども、そういう意味では私が一応アイアンマン役なのかなという感じはしていますけれども。とにかくみんなで頑張っております。

政府への働きかけ

私たちは話し合いの中で、これは政府に頼まなければだめだ、国の予算で、政治家、省庁、官僚の皆さん、そこに頼まなければだめだということで、政治家の皆さんに絞って活動を始めました。

先生方は私たちが話をすると一様に驚いておりました。「病室ってWi-Fiが使えないの?」と。これは入院されていない方は本当に皆さん、分からない。私も分からなかった。「そりゃ大変だね。何とかしなきゃね」と、かなりの先生方が反応してくださいました。

私もブログはフォロワーが16万人、Instagramは26万人の方々がフォロワーで付いてくださいまして、その方に対して「こういう活動をしているんだよ」ということを訴え、多くの方、患者さんの方からたくさんの反応をいただきました。「病室でWi-Fiが使えないことを病院に訴えていいんですね」という意見が本当にたくさんありました。サイレントマジョリティーというか、サイレントメジャーかもしれない。声なき少数派じゃなくて声なき多数派なんです。
患者さんはみんな思っているけれども、声にしていないという。これは日本人特有の奥ゆかしい精神なんですけれども、「だから、これまで表面化していなかった、この問題が」ということが言えると思います。コロナの前から、入院している方々は、たくさんの方がそのことを感じていた。でも、患者のわがままと思われてはいけないと感じている方々がたくさんいらっしゃったわけですね。

しかし、私たちが活動をするに従って反対意見もやはり出てきました。私たち協議会にも届いてまいりました。「コロナで大変な時期にWi-Fiに回せるお金なんかありません。よく考えてください。」
「患者さんそれぞれがポケットWi-Fiを契約して持ち込めばいいんです。何でもかんでも病院に頼んじゃいけません、この大切な時期に」、こんなご意見もいただきました。確かにそれも分かります。「病院に頼まずに自分のギガを使いなさい」、そういう方もいらっしゃいました。
でも、厚生労働省は4月の通達で病室にWi-Fiをする工事は予算を使っていいですよという、とても早い段階で予算化してくださいました。これはやはり、今、病院内の病室で患者さんたちが孤立化していて、Wi-Fiを使うことは国家事業であると国が認めたということなんですね。本当に嬉しかったです。

 

 

その原動力になってくださったのは、厚生労働省の三原じゅん子副大臣です。私たちの話に真摯に耳を傾けて、「これはすぐにやらなければいけない」と厚生労働省の担当者に指令を下してくださいました。それで、これだけ早く私たちの訴えは予算として実現化しました。三原大臣には感謝しています。

この一報を聞いて大変たくさんの方が喜んでくださいました。「これから私の病院にも付くかもしれない」と、長期入院の方。「また再入院が決まっています。うちの病院でも付くかもしれない」なんていうお話も伺いました。また、最近では「うちの病院で入りました」という声をちょこちょこ聞くようになりました。ただここに来て予算化が決まって、私たちも大きく発信することによって、いろいろと気付きというものは病院関係者の間で広がりつつあると思います。

病室Wi-Fiは何を実現するのか

我々は、喜んで会見もやったんです、厚生労働省の記者クラブで。分かりにくい通達だったので、「病院のWi-Fi工事は予算が出ますよ」ということをお伝えしたいと思って、会見も開かせていただきました。

 

 

電波環境協議会というところで、医療機関における電波利用推進委員会の皆さんがいろいろなデータを調査してくださっておりまして、その最新データが今年の5月発表されました。それによりますと、2020年度無線LANを病院で導入されているのは90%近い。ほとんどの病院で無線LANを使っていると言っていいと思います。早晩9割超えて、コロナ禍ですからどんどんどんどん100%に近づいてくるのではないかなと思います。

 

 

ただ、無線LANを誰が使っているのか。青がお医者さん、看護師さん、事務員の皆さんがインターネットの接続用に使っていますという病院です。8割近い。

 

 

赤は患者さんなどが病室でインターネットが使える、あるいは受付でインターネットが使えるという病院が3割。ですから、受付しか使えない病院がありますので、実態としては3割もない、病室で使えるのは。さらに「病室で使えます」と言っている病院でも個室しか使えない病院がかなりあります。

ある大学病院では5万円の個室からパスワードを教えてくれるそうです。それ以下の個室は大部屋も含めてパスワードを教えてもらえない。でも、本当は逆なんです。富裕層の皆さんはギガだっていっぱい持っている。でも、お金があまりなくて病院に入らなければいけない大部屋の皆さんはお金がないですから、その方々に「自分たちでギガを払いなさい」と言って、お金のある方々に「あなた方はただで使っていいです」と。逆ですよね。病院は逆にすべきではないかと私は思うぐらい、あべこべの今、対応になっているのが、病室の中のWi-Fi環境です。

 

 

では、「このWi-Fiでどんな端末を使っていますか」というアンケートに関して、オンライン面会用端末。今は面会ができないので、タブレットなど、これを使って面会してくださいという、これをやっている病院が4割近い。そして、導入の予定があるのを含めると6割近い病院で、オンライン面会のためのタブレットで、あるいは端末で、Wi-Fiを使っているということが分かってきました。こういったことがとても大事なので、ここで無料のWi-Fiが通っていないと、こういったことが進んでいかないわけですよね。

病室Wi-Fi協議会でもアンケートを取ろうということで、がんの患者さんの組織、大きな組織のキャンサーネットジャパンのネットワークを利用しまして、入院経験のあるがん患者の皆さん、だいたい皆さん、長く入院されている方が多いんですが、そういった方々600人にアンケートを取りました。

 

 

その結果なんですけれども、院内でインターネットが6割の方が使えた。ただ、これは表向きのデータです。インターネットの接続方法を聞いたとき、病院の無線LANを使ったという方々はオレンジの36%、4割を満たしません。
有料の病院のWi-Fiを使っているところも結構ありました。ただ、私たちは有料であっても、無線LANが通っているのは素晴らしいと思います。そして、青は自分のスマホのギガを使ったということでして、その他のものを見ても6割以上の方が病院のWi-Fiを使えていないということが分かってきました。

 

 

さらにインターネットを使えなかった方へ「どのような工夫をしましたか」と聞きました。青、「我慢した」。コロナで誰も見舞いに来ない。家族も見舞いに来ない。下着はナースセンターまで来て、看護師さんが受け取って、そこで交換です。私もそうでした。そういう状況の中で我慢している。
「これはどういうことか」と聞いたところ、「ただでさえ家族に医療費、治療費、部屋代、迷惑を掛けているのに、ここでギガを増やしてほしい、ポケットWi-Fiを契約してほしい、レンタルしてほしい、そんなふうに頼むことはできない」という方の声が多かったです。だから、我慢する。
あるお母さんは、自分のスマホは格安スマホを使っているので、ギガは少ない。今は家に残した子供たちのPTAの連絡はLINEでやっているんです、一斉連絡だから。そうするとギガが使えなくなった途端にLINEができなくなるので、とにかく我慢して、子供たちの連絡のときだけLINEで連絡を取って、「今はこういうことになっているのね。明日、体操着を持っていくんだって」みたいなことをやる。それしか使わないと言うんです。あまりにもかわいそうなわけです。
そういう状況が生まれていることが私たちのアンケートでも分かりました。コロナの時代になって1年間、ほとんどの病院で面会禁止となりました。それを我慢している人が多いということも分かりました。そういう経済的なものも含めて、「自分でポケットWi-Fiを契約すればいいじゃないか。甘えるな」というのは、やっぱり違うと私は思います。入院したら誰にも会えなくなりますが、刑務所の人たちは面会ができているんです。

 

 

1つ忘れていました。「では皆さん、インターネットにWi-Fiでつながって何をしましたか」と言ったら、それに対して1位は「家族や親しい人たちとのコミュニケーションに使った」。やっぱりつながっていたいんです。娯楽は4位です。
病院関係者の皆さんは「癒やしや娯楽などのために使うものだから治療とは関係ないから」とおっしゃいますけれども、病院内でのQOL(Quality Of Life)を上げることは今、医療の世界でもとても大事なことだといわれていまして、海外ではその研究も進んでおります。ですから、心の安定といったものを、一番心細く思っている病院の患者の皆さんが、それを解消するためのインターネット環境はやっぱり必要で、だからこそ国はそこにお金を付けたのだと思います。

 

 

そして、先ほど話に出ました刑務所の皆さんは面会できています。これに関してNHKのニュースでこんなことがありました。横浜の刑務所でクラスターが起きました。そこで面会が中止になったんです。当たり前です。これが長期にわたった。そうしたら弁護士さんの皆さんが「これは受刑者の皆さんの権利侵害です」といった意見表明を公式にされました。じゃあ、入院して孤立化している患者さんがかわいそうだと、どなたか弁護士さんが立ち上がったかといったら、誰もそんなことはしてくださいません。患者さんの権利だって絶対にあるはずなんです。がん患者の権利がいろいろと最近は認められていますから。でも、誰も言わないから私たち病室Wi-Fi協議会はこうやって声を上げています。どれだけそれが大事なことなのか。

 

 

ようやくSDGsの概念が広がり始めました。その概念はこちら「誰ひとり取り残さない」、世界中のこれがスローガンです。leave no one behind。だけれども、今、コロナの時代になって病院の一番弱者である患者さんたちが取り残されようと、いや、もう取り残されています。私も取り残された一人です。私はお金を使って、そこから自分で脱出しましたが、脱出できない人がたくさんいるということなんですね。

私はお金を払ってギガを追加したおかげで、誰も来なくなったところで大学時代の親友たちがZoomでお見舞いをしてくださいました。これが本当に楽しかったです。こんなに楽しいものかと思いました。本当にお見舞いを受けているような気分で、落ち込んでいる気分を救ってくれました。こういったことが、Wi-Fiが無料で病室に通っていれば、本当にできるんですよね。だから、コロナの時代、新しいニューノーマルの中にWi-Fiがどれだけ大事かということは、これまでのお話の中でも分かってくださると思います。

 

 

例えば産婦人科の病室もWi-Fiが求められています。赤ちゃんはコロナがうつったら大変です。ですから、子供が生まれても誰も面会に来ません。面会禁止です。赤ちゃんが生まれた。普通は家族みんな来て「おめでとう」、それがないんです。本当に寂しい思いをしている。そして、産後の肥立ちが苦しい。夫、親がそこにサポートに来てくれる、そんなことも許されておりません。
とても寂しい思いをされている中、「Wi-Fiが通っていて良かった」という声が協議会や私にもたくさん寄せられました。それによってたくさんのお見舞いの言葉、喜びの言葉を、顔を見ながら受けることができた。自分の赤ちゃんの写真を撮って、動画を撮って、家族や親族に配ることができた。Wi-Fiが通っていないと、こんなこともできないんです。

小児病棟はどうでしょう。小児病棟は小児がんなど長く入院しているお子さんたちがたくさんいます。お母さん・お父さんは24時間付きっ切りのような形で看病に当たっておりました。なかには泊まり込むお父さん・お母さんもいました。だけれども、今、コロナで面会制限、一日3時間や4時間などに制限されている病院が結構あると聞きます。子供たちはほとんど1人で過ごしている。病棟の他の子供たちと交流して仲良くやっていく、今までのような院内学級がコロナで閉鎖されました。子供たちも孤立化されています。Wi-Fiが通っていればゲームの通信で、いつもの友達と声を掛け合いながら「いけいけ、そっちに回って」とできるんです。
ある病院では小児病棟の一画だけ公衆Wi-Fiが届いているところがあったんです。その病院の小児病棟のそこに子供たちがみんな集まって、友達とスーパーマリオとかをやっているんです。そこだけ密です。だから、小児病棟をとにかく早く、と言ってもいいぐらいです。Wi-Fiを通してあげてほしいんです。
子供が本当に見たいのは、お笑い、漫画。だから、YouTubeなんです。YouTubeはギガを使うんです。「お父さん・お母さんに迷惑を掛けちゃいけないから」と言って我慢しているお子さんもいると聞きます。そういう健気なお子さん、特に病気をしているお子さんは、そういう子が多いんです。「家族に迷惑を掛けているから」と言って。そんな子たちに精いっぱい遊ばせてあげたいじゃありませんか。

病室Wi-Fiを設置するには

こちらが厚生労働省の通達の資料の一部です。病院や有床診療所、25万円の補助、そして1床につき5万円。300床とか500床ぐらいのレベルの病院で病室のWi-Fi化が図れていないところがかなりあります。そういったところは1,500万円から2,500万円の補助金を得ることができます。

 

 

ただ、見て分かる通り、コロナ感染が拡大することに対応する事業です。ですから、この費用の中でコロナの消毒液や防護服など、いろいろなことに使ってください。そこにWi-Fiも付けていいですよというふうに入っています。
ですから、優先順位が高くないことは私たちも分かっております。緊急事態宣言が出ている病院とか、そういったところに声を掛けるつもりは全くありません。でも、全国にまだまだ蔓延していない地域があります。そういった地域は今のうちに申請をして、今のうちに設備を整えておいてほしいんです。9月末までですから、「あのときに申請しておけばな」ということにならないように、ぜひともそれを気付いていただきたいなと思います。

 

 

これだけのことが起きているけれども、病室にWi-Fiの工事が進まない理由は何かというと、我々がインタビューや取材をして感じるのは、金銭面と安全面の2つです。とにかくお金が掛かると思っている方がたくさんいらっしゃる。病院関係者の方もそれを言う方がいらっしゃいます。
私たちが調べると、見積もりはいろいろと差があるんです。安くやろうと思えば本当に安くあげている病院がある。徳島の公立病院は300床ですけれども、ここは先日、110万円で300床のところに患者用のWi-Fiを通しました。
これを細かく聞いたら、電子カルテ用のWi-Fiのアクセスポイントを利用して、それでも安全に運行できるということで、そこにもう1波別のWi-Fiを患者さん用に通した。これは大手のベンダさん、日本の有数の一二を争うベンダさんが、自分たちがやるということでやってくれたので、110万円で済んだ。
あるいは佐賀の好生館、100万円。岡山の病院は、設定を変えるだけでほとんどゼロでした。そういった病院もあります。安くもあげられるんです。
すでにWi-Fiが通っているところが8割あります。私たちは「そこに付けてください。もう1波、別の1波を通してください、アクセスポイントも利用しながら」ということでお願いしているので。

佐賀の好生館は100万円でもう1波を通したんですけれども、450床で、見て分かる通り地域の中核病院です。ここが100万円でWi-Fiを通すことができた、これだけの機能を持っている大きな病院で。

 

 

何をやったかというと、今まで3系統を業務で使っていた。お医者さん用、電カル用、看護師さん用、そこにフリーWi-Fi系を新たに追加した。アクセスポイントは利用したので、機器の追加はなく、設定変更のみで対応して、事業費は100万円。
ここにある佐賀の公衆無線LANの補助金は、佐賀が別に行っている「病院が無線LANを通すときには補助金をあげますよ」という各自治体の整備がありますので、そのお金を半分(5割)出してもらえたので、50万円でできましたということなんです。
また、別の業者では500床で470万円ぐらい、300床で350万円ぐらい、新たに追加Wi-Fiとしてお部屋に通すことができますというようなデータもいただきました。これは好生館とは別です。

これが私のところに届いたある投書です。「救命救急センターで働いています。Wi-Fi環境を整備しようと医師と働きかけましたが、電子カルテに支障が出ると電子機器メーカーから意見があり、工事は行えないという判断になりました」。
ここに引っ掛かっている病院が本当に多いんですが、なぜ好生館でできているのか、なぜ国立がんセンター、有明がん研でできているのか、全室Wi-Fiが。ここを病院の方々がなかなか詳しくなくて、ベンダさんの意見に左右される。

 

 

これは先ほどの電波環境協議会の最新のアンケートで、どのような機器を導入すべきか分からないとか、予算がないとか。でも、予算は出るんですよね。
病院の方々は「いろいろな不安がある」ということを言っていらして、さらに「管理・運用する上で十分な知識を持った人材がいない」が半分。「どのような管理ルールを設定すべきか分からない。トラブルの対処法や相談先が分からない」。こうやって病院の方々は悩んでいるんです。Wi-Fi業者の皆さんは、そこの手助けをしてあげてほしいんです。
SDGsの概念で、そこで救われる方々がたくさんいるということを考えてくだされば、積極的に営業をしてくださって、本当にそうしてくださるとありがたいなと私たちは思うんです。

 

 

私たちは病院にお金を出せと言っているのではなくて、国にお金を出してほしい。そして、国のお金を使う形で業者さん皆さんに病院にいろいろとアプローチしてほしい。病院側の皆さんは知識がないので、いったん断ります。でも、そこを患者さんのためにということで、もう一歩押してほしいんです。それをぜひお願いしたい。そうすることによって道は開けてくるのではないかなと思います。

テレビ局は20年前、インターネットは敵だということで切り捨てていました。ところが、6年前にはアプリを開発して、スマホでテレビが見られるようにしました。そうしないとやっていけないからです。病院のWi-Fi事情もおそらくそうなります。5年後には「病室にWi-Fiがないの? じゃあ、その病院はどうなの?」というような価値判断が下るような時期が来ると思います。
10年後にはWi-Fiではなく、別の技術で全ての患者さんが外の環境とつながることができる技術が開発されているかもしれません。それぐらい速いテンポで動いている中、やっぱり今、ここで皆さんが黎明期に一歩先んじて病室にWi-Fiを入れてくださると、多くの患者さんが助かります。
私たち病室Wi-Fi協議会は、まずは予算が出たので、次の活動に移っております。それは「この病院は全病室でWi-Fi使えます!大調査」という、ボランティアを募って全国の病院で、どの病院はWi-Fiが使えるのか、全室無料Wi-Fiが使えるのか、それを調査して一覧表で皆さんに見ていただこうという活動を始めました。多くの方々が応募してくださっていますので、時間は掛かるかもしれませんが、まずは全国のがんの基幹病院の451を全部調べ上げて進めています。でも、「ここが使っていませんよ」ということを責めるのではなく、コロナの事情もありますから、「ここが使えますよ」という皆さんの利便性のために応援団体として私たちは活動していこうと思っております。
ここまでで、今日の私のお話とさせていただきます。ぜひとも病院にWi-Fiを、よろしくお願いいたします。

 


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