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海外情報
3GPPが5G NRの仕様「リリース16」を決定

岩本賢二

新型のコロナの影響で延期になっていた「リリース16」が3か月遅れで、7月3日無事にファイナライズされました!

ひとつ前の「リリース15」は5G NRの基本的な技術を定義していましたが、リリース16では、拡張機能が定義されました。

実はこのリリース16は5Gを5Gらしくする重要な機能の多くが含まれています。今回はその代表的な機能を紹介していこうと思います。

アンライセンスバンドの利用

今年3月にFCCは6GHz帯の1.2GHzという膨大な周波数をアンライセンスバンドに指定しました。これはWi-Fiだけに利用するということではなく、5Gのアンライセンスバンド利用にも割り当てられたということです。つまりFCCはWi-Fiを味方につけながら、5Gで利用可能な帯域を大幅に増やし、米国が5Gの覇者となるべく布石を打ったと考えられます。

LTE時代に物議を醸したLTE-UやLAAですが、これら技術が踏襲され、5G NRのリリース16ではアンライセンスバンドをWi-Fiと5Gで共有利用できる「NR-U」が定義されました。NR-UはLAAをベースとしており、ライセンスバンドをアンカーバンドとして使い、6GHz帯の後半部分を他のアンライセンスバンド利用機器と共有利用することができます。これにより5Gが膨大な通信帯域を利用できることになり数ギガbpsの通信を可能とします。

一方でプライベート5Gのようにライセンスバンドを利用せずスタンドアロンでアンライセンスバンドだけで5Gを動作させることも可能となります。これを「スタンドアロンNR-U」と呼びます。どちらもWi-Fiなどのアンライセンスバンドのシステムと共用利用が可能です。

日本ではテレビ局の中継用などに使われている6GHzですが、テレビをよく観ている人は分かると思いますが、最近のテレビ中継ではLTEを利用しているケースが増えています。これは既存の6GHz中継装置は設備費用が高く技術的に古いため、LTEを利用するほうが安く性能も良いためです。しかし、テレビ局の既得権益として未だに占有を保証されており、5GやWi-Fi普及の足枷となっています。

eURLLC(拡張型超信頼低レイテンシ機能)

IoTの重要なインフラとして5Gが期待されているのはこの「eURLLC」のリリースが後ろに控えていたからです。ようやくこの機能仕様が確定しました。eURLLCはミリ秒レベルの低レイテンシを保証し、最大99.999%の信頼性(ファイブナイン)を提供することで、産業向けIoTに革新をもたらすと期待されています。

もちろん産業用で使うということはプライベート5Gとしてアンライセンスバンドの利用を想定しているのですが、日本では6GHzについてまだアンライセンス化は決まっておらず、28GHz帯などを半登録制などで運用するしか道がなさそうです。

低消費電力機能

初期型の5Gデバイスは消費電力が非常に大きいのですが、今回のリリース16に沿ったデバイスには「WUS(ウェイクアップ信号)」技術が搭載されます。これによりデバイス全体を常に起動していなくても低電力モードで待機させておきWUSで起こすことで必要な時だけ消費電力の大きい処理をさせればよくなるので、全体として消費電力が大きく下がります。これはスマホの電力の持ちを長くするだけでなく、産業用IoTなどの分野でも重要な機能となってきそうです。

位置情報機能

リリース16では5Gベースで位置測位が可能となります。誤差は屋内で3m、屋外で10m程度となります。これはITS(高度道路交通システム)などでの利用を想定しており、同時にC-V2Xもされています。C-V2Xは自動車同士が相互通信を行い情報を共有したり、高速道路の課金でETCのようなバカでかい門を建設しなくても柔軟に課金ができるようになります。

米国ではすでにDSRC(日本でいうETC2.0)については縮小(限りなく終了)する方向が決定しており、次世代の交通システムをいち早く実現すべく明るい未来に向かって進んでいます。

一方日本ではETC専用化などが検討されており、暗い未来しか見えません。日本でしか使えそうもないETCを頑張ってもメーカーは輸出ができませんので、時間の問題で衰退ビジネスとなりそうに思えます。

IAB(統合アクセスバックホール)

リリース16からはミリ波(28GHzなど)のアクセス用では使いにくかった周波数をアクセスとバックホールの両方で利用できるようになります。これにより高密度に基地局を配置する際はミリ波をバックホール用として利用することで光ファイバの敷設コストを下げることが可能になります。

本来ならミリ波はバックホール専用で仕様化するほうが良かったのではないかと思うのですが、期待が先行した5Gではミリ波をアクセス用で使うことが最初の仕様で決まっていました。リリース16からは胸を張ってミリ波をバックホールに利用することができるようになります。

2021年にはリリース17の確定を予定しています。5GとWi-Fiがうまく共用されながら次の世代に胸を張って残せるインフラが作られていくことを切に望みます。

参照:

https://www.fiercewireless.com/5g/3gpp-completes-latest-5g-nr-spec-release-16


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