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イベント報告
第12回技術セミナー
オンラインで「ニューノーマルにおけるWi-Fi活用 + 特集:Wi-Fi 6E」開催

技術・調査委員会 本橋 篤

7月7日、七夕の日の午後、「ニューノーマルにおけるWi-Fi活用 + 特集:Wi-Fi 6E」と題し、12回目となる技術セミナーを開催しました。セミナーの登壇者やスタッフも、自宅・会社などそれぞれの場所から参加するオンライン開催は、技術セミナーとしては初めての試みでしたが、180名を超える非常に多くの方の参加登録を頂き、盛況に終えることができました。

冒頭に、北條博史会長から開会の挨拶がありました。新型コロナの影響によりテレワークが増え、ネットワークのトラフィックも増えている。家庭内でも複数人が同時にネットワークを利用するようになり、家族間でWi-Fiの帯域を取り合うようになっていると、提起がありました。今後、長期的には生活様式が変わって行くため、ニューノーマルの時代は、これからも続いていくことになる。そのような時代において、新たな6GHz帯などの非常に広い帯域がWi-Fiで活用できるようになることで、帯域不足の問題が解消していくとし、Wi-Fi 6Eへの期待を述べました。

Wi-FiニューノーマルとWi-Fiを使った位置情報の活用

講演のトップバッターは、シスコシステムズ合同会社 シニアプロダクトマネージャーであり、技術・調査委員会 副委員長の前原朋実様が登壇し、「Wi-FiニューノーマルとWi-Fiを使った位置情報の活用」と題し講演を行いました。

前原様からは、ニューノーマル・Withコロナの時代には、ワークスタイルもハイブリッドになり、コミュニケーション、インフラ、アプリケーションの対策が必要となると課題提示がありました。これらの課題に対応するオフィスでの新しい働き方を支えるネットワークの要素として、Wi-Fi高速化、ユーザベースでアクセスポリシー制御と可視化、位置情報の把握が示されました。

Wi-Fiの高速化としては、Wi-Fi 6による多端末の安定した高速通信の実現を、また、快適なWi-Fi提供のためには、LANだけでなく、クラウドへの直接アクセスとなるローカルブレイクアウトやVPNなどWAN環境の考慮も必要となり、家庭のネットワークが企業ネットワークの一部になるなど、オフィス内外のセキュリティポリシーとトラフィック制御の一元管理の重要性が説明されました。

位置情報の把握については、Wi-Fiを活用することで、ネットワーク接続とともに位置情報を利用できるメリットが示され、ヘルスケアでの資産管理・導線管理・モニタリングでの活用、流通や製造での活用などが紹介されました。

Withコロナ時代の働き方を変える、Wi-Fi所在情報活用の実践・取り組み

次に、NECネッツエスアイ株式会社 マネージャーの鈴木良太郎様と、峰岸拓矢様が登壇し、「Withコロナ時代の働き方を変える、Wi-Fi所在情報活用の実践・取り組み」と題し講演を行いました。冒頭、コロナの影響により、10年分の働き方の変化の波が1年でやってきたと説明がありました。

鈴木様、峰岸様からは、NECネッツエスアイ(NESIC)様での取り組みの説明があり、2019年にオフィスを分散型に再編し、Zoom、Slackを全社導入するなど、先進的なテレワークの取り組みを実施していることや、三密対策の実践として、Wi-Fiを活用した位置情報を見える化するクラウドサービスの事例が紹介されました。

また、Slackボットの活用により、出社人数を自動的に集計・予測することや、社員のWi-Fiデバイス・社員証のBLEビーコンタグなどで検知されたデバイスのMACアドレスを自動的に収集し、ユーザの滞在履歴・想定接触人数をトレースするなど具体的な仕組みが説明されました。これらの仕組みを活用することで、人数の密集のアラートや、濃厚接触者のリストアップが可能になり、出社前と出社後、感染者発覚後のそれぞれのフェーズにおいて、いつ、どこに、だれといたかといった、新型コロナ対策のトータルな取り組みとして紹介されました。

Wi-Fi 6Eに対応する周波数の世界動向

最後に、クアルコム合同会社 標準化部長の城田雅一様が、「Wi-Fi 6Eに対応する周波数の世界動向」と題し講演を行いました。

城田様からは、6GHz帯を免許不要帯域として使う動きがあるが、現在は固定衛星通信や放送で使われており、既存システムと共存が前提となっていること、移動通信業者からは5Gのライセンスバンドにしたい希望があること、地域によって6GHz帯すべてを免許不要にするか、一部をセルラーに割り当てるかは異なることが説明されました。

次に各国・地域での状況が紹介されました。米国では、6GHz帯を免許不要帯にすることは承認済みで、夏には製品が市場に出ること、中国では、バンド全体ではなく、一部をセルラーとする承認がされたこと、韓国では、バンド全体を免許不要にする動きがあり、速いスピードで規定が進んでいること、欧州では、Wi-Fi以外にも技術ニュートラルで検討が進められていることが紹介されました。

また、日本においては、無線LAN の利用拡大に関しては、国際的な調和を念頭に置きながら、既存の無線局との共用を図りつつ検討する状況となっていることが示され、最後に米国および欧州の周波数共用検討の状況が紹介され、講演を終えました。

QAセッション

講演中に頂いた質問に対し、登壇者が回答するQAセッションを実施しました。司会は技術・調査委員会 副委員長の本橋が担当しました。

以下に質疑を示します。

「Wi-FiニューノーマルとWi-Fiを使った位置情報の活用」について

  1. ローカルブレイクアウトが進むとVPNは不要になるのか?

→A. クラウドアプリ自体はTLSで保護されておりVPNは不要。VPNの要否は用途ごとに精査が必要。

  1. 家庭のネットワークを企業ネットワークの一部に接続する場合、コスト比較ではどのような構成順になるか?

→A. VPNアプリが一番ポピュラー。営業はVPN、バックオフィス系は自宅に企業向けAP設置というようなハイブリッドな形態が多い。

  1. Wi-Fiタグもシスコの製品か?

→A. スタンレー製品でアイランドシックスから提供している。シスコ認定製品としている。

「Withコロナ時代の働き方を変える、Wi-Fi所在情報活用の実践・取り組み」について

  1. トレースに使うWi-Fi情報はプローブかアソシエーションかどちらか?

→A. 両方を使っている。ビーコンタグでは、両方を使う。スマートフォンはMACを登録する必要があるので、アソシエーションする必要がある。(プローブには、ランダムMACが使われるため)

  1. 実現に必要な追加システムはあるか?

→A. 基本的にお客様が現在ご利用の無線LANコントローラの環境をそのまま利用するため、新しいシステムは不要。

  1. テレワークにより移動時間がなくなったことで、会議が密になった。オンライン疲れ等の対策はあるか?

→A. 会議時間が増えているのは事実。定期的なコミュニケーションの場を持つように取り込んでいる。雑談用のSlackチャネルを用意するなど、オンラインでもリラックスしたコミュニケーションの場を設けている。

「Wi-Fi 6Eに対応する周波数の世界動向」について

  1. 6GHz帯をセルラーで使いたいという声はあるのか?

→A. 携帯電話のライセンスバンドと6GHz帯を組み合わせる動き(LAA)と、6GHz帯でセルラー技術を使いアンライセンスバンドで5G通信をするという動き(5G NR-U)がある。5GHz帯の時との違いは、この帯域をライセンスバンドとしたいという動きがある点になる。

  1. 米国でのAFCは、オンラインで自動動作するのか?

→A. 無線APは、その場所で電波を送信できるか確認する必要があり、AFCへのアクセス機能を実装していないといけない。

  1. 6GHz帯でWi-Fi利用できるようになった場合、どんな世界が想像できるか?

→A. 無線通信に対する需要が高くなってきている。セルラーの5Gだけでなく、手軽に使えるWi-Fiに関する需要もあると考えている。無線の利用用途が広がることで需要が増えることを期待している。

セミナー参加者の方は、以下URLより当日の資料をダウンロード頂けます。

資料ダウンロードページ(参加者限定)


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