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ビジネス情報
通信事業と鉄道事業、料金設定の違い

一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会 副会長 櫻井 浩

このメルマガがスタートした当初、2回ほど「リアルとバーチャル」いうタイトルで、バーチャルを運ぶ通信と、リアルを運ぶ鉄道の類似と違いについてのコラムを書きました。

メルマガ委員会から第3弾の強い要望がありましたので、今回はその続きとして、ユーザー料金や事業者間精算について、通信と鉄道の違いをまとめてみます。

通信は発側が料金を設定

現在、普通の音声通話の通信料金は、複数の事業者を経由する場合でも、「マイライン」等の事業者指定がある場合を除いて、発側の事業者が設定しています。事業者指定の有無にかかわらず、接続した時点では1単位料金(度数)であり、複数の事業者を経由していることを利用者に意識させないようになっています。

一方鉄道では、相互乗り入れとして元町中華街発飯能行きのように最大4社間(この例では、横浜高速・東急・メトロ・西武)に跨る運行がされていますが、当然1枚のICカードで乗下車可能です。この場合の運賃は、基本的に各事業者の運賃の単純合算になります。基本的にというのは、一部区間で合算額からの割引が設定されている場合があるからです。

通信も当初は単純合算方式

30年以上の昔話になりますが、通信が自由化された当初の電話料金は、複数事業者を経由する場合、鉄道の運賃と同じように通話料金を単純合算する方式でした。電話の場合、発事業者-中継事業者-着事業者という接続形態になりますので、接続された瞬間に10円×3という料金が発生しました。また、携帯電話への着信料金は携帯事業者が設定しておりました。料金が分かり難い、運用コストが高いといったことから、事業者間で協議を重ね、現在のような形態になっています。

通信の事業者間での精算は、自社区間の精算用課金データを次の事業者に送り、次の事業者は自社区間の精算用課金データを追加します。これを繰り返して、最終的に着事業者は精算用課金データが積み上がったものを経由した事業者を含め発事業者に向けて逆に返します。このデータを各事業者が取り込み、他事業者に請求する額を計算して、精算します。

事業者間精算は「通信は分散、鉄道が集中」

鉄道でICカードを利用する場合は、下車時に運賃をICカードから収受します。運行事業者が複数、ICカード発行事業者も複数あることから、これらの事業者間の清算は、一元的に行う方式が採用されています。

一般的な感覚とは異なり、事業者間精算は、通信では分散、鉄道では集中という形態が採られています。また、使用する漢字も異なっており、変換ミスではありません。。

最後に、何故この話題を取り上げたかについて触れます。先日、久しぶりに九段の関東総合通信局に出向いた際、東日本大震災後閉鎖されていた九段会館に解体準備のための囲いが設置されているのに気づきました。そう言えば、会社の会議室に入りきらないほど多くの事業者が九段会館に集まって、前述した通信の事業者間精算の仕様を決定したんだなあと思い出した次第です。会の名称は、記憶が定かでありませんが、事業者間精算方式検討会だったはずです。文書の保存期間は優に超えていますが、仕様としては現役です。


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