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ビジネス情報
2020年を5GとWi-Fi-6の年に

一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会顧問 小林忠男

5Gの次の次世代ワイヤレスシステム開発に2000億円を超える国の基金が創設されるそうですが、直近の来年を考えると、Wi-Fiでは802.11ax(Wi-Fi-6)がいよいよ本格的に使われるようになるでしょう。iPhone11に搭載されたことはWi-Fiにとって今年一番のニュースだと思います。
InternetWatchでも、次のように紹介されています。

『Appleから歴代13代目となる「iPhone 11/iPhone 11 Pro/iPhone 11 Pro Max」(以下iPhone 11シリーズ)が発売された。カメラ機能の充実などが主な改良点だが、個人的な注目はWi-Fi-6のサポートだ。この登場によって、今後、国内のWi-Fiルーターも本格的なWi-Fi-6時代へと突入していくことになるかもしれない。(中略) 簡単ではあるが、新型iPhone 11のWi-Fi 6性能を検証してみた。PC向けの160MHz幅対応製品ほど速くはないが、近距離で800Mbps、中距離で500Mbpsは十分に立派な値で、実用上は全く問題ない。順当な進化と言えそうだ。』

モバイルでは、言うまでもなく5Gのサービスが本格的に始まります。どんな端末が出現し、どんなサービスがどんな料金で提供されるか本当に楽しみです。ローカル5Gという、今までのモバイルビジネスにはなかった新たなサービスが可能になったことも注目されます。

さて、802.11axの仕様書上の最高速度は9.6Gbpsで、5Gの最高速度はLTEの10倍の10Gbps、遅延時間はLTEの10分の1の1msec、多数同時接続は100万台/㎢と言われています。
どんな時に最高速度が出て、どんな時は最高速度が出ないのか、電波は目に見えないので専門家でないと詳しいことは良く分からないと思いますが、スマートフォンの表示に電波の強さが表示され、4本のバーが表示される時は電波が強く、電波が弱い時はバーの数が少なくなり、電波が受信できない時は「圏外」が表示されますので大まかな目安になると思います。

私たちが毎日使うスマートフォンや携帯電話、ノートパソコンやIoTデバイスは近くにあるWi-FiやLTEの基地局、アクセスポイントと電波でつながっています。テレビやラジオやGPSも同じです。
当たり前のことですが、「基地局から電波が十分に届く場所に私たちが使う端末、デバイスがあれば」、802.11axや5Gは約10Gbpsの最高速度をお客様に提供することが出来るということです。逆に、電波が届かない場所にいる場合は802.11axや5Gの速度を享受することが出来ません。
Wi-Fiはエリアが狭い、5GHz帯を使いWi-Fiがせいぜい100mしか飛ばないということは、使用する電波の周波数が高くなると電波の性質上、直進性が強くなり遠くまで飛ばないからです。
遠くまで飛ぶ電波を使うシステムは一つの基地局で広いエリアをカバーすることが出来ますが、周波数が高くなり5Gのように28GHzというミリ波帯を使う場合には電波が飛ぶ距離は極端に短くなるので一つの基地局がカバーするエリアは狭くなってしまいます。

要するに、必要な強度の電波が届いていれば今までにない高速通信が可能ですが、そのシステムが使用する周波数によって届く範囲が極端に変わってしまうということです。この点を十分理解したうえで、新しいシステム、サービスのビジネス性を考えることが重要です。

昔、札幌でPHSのフィールドトライアルを実施した時、モニターになった方に、使えるエリアは家の中とトライアルエリアの基地局の中だと何度ご説明しても、「何故、何処でも使えないのだ」という苦情が沢山ありました。
Wi-Bizの「00000JAPAN」も大規模災害時の有用性と知名度はどんどん高まっていますが、それでもWi-Biz事務局に、「00000JAPANは何故、自分の家で使えないのだ」という問い合わせがあるそうです。
便利なサービス、モノであればあるほど、何時でも何処でもそれを使いたいという要望は自然なものだと思います。

Wi-Fiはスポットでしか使えないというということは多くの方が理解するようになりましたが、LTEは基本的には日本のほとんどのエリアで屋内外問わずに使うことが出来、お客様はモバイルサービスは基本的に何処でも使えるサービスだと考えています。
これから始まる5Gの周波数はサブシックス、28GHz帯と周波数が高いのでサービス開始当初はLTEのように何処でも使えるようにはなりません。5Gのエリアは5Gで、5GのエリアでないところはLTEで通信することになるでしょう。

新聞やインターネットの記事をよく読めば、最初の5Gサービスエリアは面的でないと分かりますが、毎日スマートフォンを生活必需品として使っている人たちが果たしてどれだけ認識しているでしょうか。5Gのサービスが始まると、何処でも凄い高速で今までに出来なかったことが出来るようになると期待している人が多いのではないでしょうか。これまでの3G、4Gシステムとサービスエリアは基本的には一体的ですから。

因みに、私の妻も5Gという言葉は既に知っていて、「最近、5Gという言葉を度々耳にする。何でもできる世の中を変える画期的なサービスらしいんだけどPHSやWi-Fiとどこが違うの」と聞いてきます。
サブシックスより低い周波数も使うので面的エリア展開も可能だという考えもありますが、これも色々と考えなければなりません。
周波数が低くなって電波が飛ぶということは、サービスエリアが広くなるということです。電波が5倍飛んだら、面積は周波数の2乗で拡大しますので、そのエリアの中に、お客様密度が一定なら25倍のお客様が存在することになります。10倍飛べば100倍のお客様が存在します。

最高速度が**Gbpsという場合、この速度は1基地局当たりの速度を言っているのか、1端末当りの速度を言っているのか一般ユーザには理解できません。1基地局当たりの情報量であれば、エリアが広くなれば1端末当りの情報量は2乗で少なくなります。
多数同時接続数の100万台/㎢という数字も分かりにくい数字です。北海道の原野では必要ない数字に思えますし、東京の人口密度が第1位は豊島区の22,380人/㎢です。1人当たり50台近い端末デバイスを持つ時が来るかもしれませんし、本格的IoT時代の到来により工場、学校、商店等々で様々なデバイスが5Gでネットワークにつながる時代になるかもしれません。
そんな時代が到来し、SDGs実現のための新ビジネスの創出や労働力の一部になって欲しいと思いますが、サービスの料金や接続のための番号はどうなるのか良く分かりません。

Wi-Fi-6についても、技術的な進化が強調され新しいWi-Fiの利用シーンが可能になると言われていますが、現在のWi-Fi-5との比較が定量的にどのように改善されるのか分かりません。
毎日の生活に欠かせなくなったスマートフォンはLTEやWi-Fiという電波を使ったシステムによりネットワーク、インターネットにつながっていますが、多くの人たちは電波、ワイヤレスのことをあまりよく知りません。
使用周波数は28GHz、その帯域幅は1GHzと言われても、分かる人は極めて少数でしょう。しかし、5Gの時代にあると素晴らしいことが起きると多数の人が期待しています。

ワイヤレスはつい最近までケーブルでつながっていた様々な端末をケーブルから解放し利便性と多くのビジネスを創出してきましたが、万能ではなく、可能なことと不可能なことがあります。また、ワイヤレスの区間だけが進化してもインターネットのネットワークやそれを構成するクラウドが一緒になって進化しないとエンドエンドの進化を実現することが出来ません。
お客様の期待に応える、お客様の役に立つワイヤレス新時代を実現するために、革新的技術とサービスを分かり易く説明し、提供することが必要なのではないでしょうか。
「創造的破壊」という言葉が使われて久しいですが、「CASE」「量子コンピュータ」「AI」等、今までにない連続性のない進化の時代になって来ているようです。
5GもWi-Fi-6も新しい時代のワイヤレスだと思います。今までとは違うアプローチは必要なのかもしれません。


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