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海外情報

2022年「Wi-Fi6出荷数10億個超え」の現実味

岩本賢二

新年明けましておめでとうございます。今年最初の記事として明るいニュースをお伝えしたいと思います。昨年末、ABI Research社という最新技術動向調査で世界的に評価の高い調査会社が面白い市場予測を発表しましたので紹介させて頂きます。

この発表ではWi-Fi6(IEEE802.11ax)のチップセットは2019年の商用リリースからわずか3年後の2022年までに年間10億個の出荷を越えるそうです。IEEE802.11ax規格は策定から標準化までに7年程度要しましたが、商用リリースからたった3年で年間10億個を超えるだろうというかなり大胆な予測です。

一方、携帯電話の最初の5G規格はたったの2年程度で完成しましたが、商用リリースから年間10億台に達するには6年掛かると見込まれています。つまりWi-Fi6は5Gの倍の速さで普及していくと言うことを意味します。

2020年(早ければ2019年の後半)には主要なスマートフォンベンダーの主力製品において、Wi-Fi6が本格採用されます。これによりスマートフォン利用者は現在のIEEE802.11ac(Wi-Fi5)からWi-Fi6にスムーズに移行し、一気に普及が拡大すると考えられます。ひょっとすると日本ではWi-Fi6対応のアクセスポイントの普及が間に合わないかもしれません。

現時点で、Wi-Fi6のプレ版チップセットは既に各チップベンダーから容易に入手できる状態にあります。そのため、各デバイスメーカーはWi-Fi6前提の開発が既に可能な状況です。市場では既にWi-Fi対応機器が急速に普及し、ユーザあたりのトラフィック需要の増加、アクセスポイントあたりの接続数の増加、携帯オフロードの増加、高密度Wi-Fi設置需要の増加、屋外Wi-Fiの増加などがあり、これらの多くの需要増加がWi-Fi6普及の原動力となることは容易に予想できます。実際、Wi-Fi6は高密度環境で高速な通信が出来るということで、通信分野だけではなくエンタープライズアプリケーションの分野でも注目されています。


Broadcom社の11ax対応チップ

10月号の「海外情報」(https://www.wlan-business.org/archives/16648)で書いたとおり、米国のFCCが6GHz帯において、1200MHzもの広帯域をアンライセンスバンドに割り当てることに合意しています。802.11axワーキンググループはこの帯域が利用可能になることを見越して、6GHz帯を802.11axに統合するための方法を策定しています。これが進めば6GHz対応のチップセットがWi-Fi6として市場に容易に普及していくことが予想されます。802.11axに6GHz帯が追加されればWi-Fiはこれまで以上に優れた高速通信とサービスを提供可能となります。

ABI Research社のシニアアナリストであるAndrew Zignani氏は次のように語っています。「追加の帯域を割り当てられた802.11axは今後年間10億個の市場へと成長し、今後10年間のトラフィック需要をサポートする技術となるだろう。そして今後リリースされるほとんどのアクセスポイントやデバイスは2.4GHz、5GHz、6GHzをサポートするトライバンド製品となることが予想される」

ひょっとすると「Wi-Fi Halow(920MHz帯)」や「Wi-Gig(60GHz)」もサポートしたペンタバンド製品(5バンド!)も出てくるかもしれませんね。

一方、Wi-Fi Allianceによって発表された前出のWi-Fi6という呼び方ですが、Wi-Fiをオタクから一般市場へ普及させるにあたり重要な役割を果たしてくると考えています。これまでは「11nサポート」「11aサポート」「11acサポート」などと、どれが一番早いのか一般人には全く分からない表記でデバイスが販売されていたため、違いが利用者には分かりにいという背景がありました。そのためスマートフォンメーカーによっては通信キャリアが5GHz対応を提唱しているにもかかわらず、製造コストを下げるだけのために11n(2.4GHzで新しい呼び方はWi-Fi4)のみをサポートした製品を平気で新発売するという始末です。

当然この製品の利用者は広大な5GHz帯の恩恵にあずかることは出来ず購入後不便を強いられてしまいます。(皆さん自分のスマホをチェックしてみて下さい!)もし、購入検討するスマートフォンにWi-Fi4(11n)のみが表記されていて、隣に置いてある競合のスマートフォンにWi-Fi5(11ac)と書かれていれば、「Wi-Fi4は古いタイプである」ということに容易に気づくことが出来る訳です。規格に詳しくない利用者の無知を利用して、コスト削減のために最新技術を採用しないメーカーの戦略を不利にすることが可能となり、結果的に利用者を救うことができます。

今後Wi-Fiデバイスの全てにWi-Fi5やWi-Fi6の表記がなされるようになれば、全ての利用者にどちらが新しいのか容易に理解されるため、最新の技術を採用しようという健全な競争が発生してくると思います。これにより、ABI Research社が予測する「2022年にWi-Fi6出荷数、年間10億個超え」が実現されていくと思います。

参考:

https://www.wlan-business.org/archives/16648

https://www.abiresearch.com/market-research/product/1032023-wireless-connectivity-technology-segmentat/

https://www.abiresearch.com/press/wi-fi-retain-connectivity-crown-5g-era-wi-fi-6-chipset-shipments-break-1-billion-unit-barrier-2022/


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