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技術情報
sXGPの進展とPHSのゆくえ

技術・調査委員会 松村直哉

先月のメルマガでアンライセンスバンドの5Gを利用したキャリアサービスLAA(License Assisted Access for LTE)についてご紹介しました。

今月はWi-Fiと少し離れてしまいますが、現在、PHSが利用している帯域にsXGPというモバイルキャリアベースの方式が検討されているのでご紹介します。

モバイルキャリアのネットワークで交換機のような役割を果たすコアシステムはEPC(Evolved Packet Core)と呼ばれ、複数のノードと呼ばれる装置から構成される大規模なシステムとなっていました。

しかしながら、昨今のIAサーバにおける仮想化技術の進展とその信頼性向上、処理能力の向上により1台のサーバに仮想化環境を構築することでEPCシステムを実現することができるようになりました。

この流れはOSSのオープンなソフトウェア開発の世界にもEPC技術が取り込まれていることも一因と考えられます。これにより一般的な仮想化OSにEPCの各ノードの実装が可能となるということです。
さらに、EPCのOSSの取り組みとしてOpenAirInterface Software Alianceがあります。これはOSSというだけではなく5Gに向けた重要な取り組みとも考えられます。

このような状況の中より低コストで構築できるEPCシステムはモバイルキャリアだけでなく、エンタープライズ向けにも利用が可能になりました。
アンライセンスバンドを利用したLTEのシステムとしてはMulteFire Allianceで仕様が作られています。

以下の構成はEPCを利用したPLMN(Public Land Mobile Network)になります。北米では3.5GHz帯域をMulteFire用の帯域として、利用が始まっています。詳細については『Wi-Fiのすべて 無線LAN白書』を参照していただければと思います。

 

日本国内においてはPHS(自営、公衆の共通利用帯域)で利用している帯域をsXGPといったMulteFireベースのシステムで利用する検討が進んでいます。利用される周波数は以下の1.9G帯になります。
自営PHSとの混在を想定して制御チャネル(自営PHS専用)を避けた仕様が考えられています。

 

PHSは8kHzの網同期クロックに同期したフレームを利用しています。この同期クロックを利用することでフレーム同期がとれ、BS(ベースステーション)同士での干渉を防いでいます。さらに自営網専用の制御チャネルを利用することで、通話チャネルのアサインを行っています。将来は現在、12ch、18chではなくsXGPと共存しやすい35ch、37chの利用が検討されています。

sXGPはTDD-LTEという方式でこちらの方もGPSの受信機により精度の高い同期をとる必要があります。エンタープライズ向けといってもモバイルキャリア基地局のノウハウが必要だと思われます。
どちらもWi-Fiとは異なり、網同期またはGPS同期といった方式により通信品質を確保しています。

現在、ビー・ビー・バックボーン株式会社がサービス開始に向けsXGP方式普及促進の取り組みや、端末間接続の実施結果等を発表しています。
今年から来年にかけてsXGPのサービスが開始されるようです。

◆sXGP方式普及促進の取組みについて
http://www.bbbackbone.co.jp/company/index_pr.html
◆IP-PBX – sXGP端末間接続試験の実施結果について
http://www2.bbbackbone.co.jp/info/index_pr2.html

自営PHSは病院や量販店では通話品質の良い点や低価格が受け入られ、根強く利用されています。PHSは日本発の技術であり、一時は中国でサービスも開始されていました。

冒頭に述べたEPCのオープンソース化のようにPHSシステムもオープンソース化していれば、通信システムの一つとして広く世界で利用されていたかも知れません。


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