全体報告
総務省「2020年に向けたWi-Fi整備・利活用推進会議」を開催
2020委員会 小山栄治

1月31日、「2020年に向けたWi-Fi整備・利活用推進会議(平成28年度)」が海運クラブ2階ホールで開催されました。

当会議は、平成29年度補助事業についての説明と地方における活用事例報告、さらにパネルディスカッションが行われました。

基調講演には、NTTデータ オープンイノベーション事業創発室部長 吉田淳一様が立ち、『Wi-Fiで実現する「空間共有」と地方創生』というテーマで、企業や自治体のWi-Fiを活用した取組みと可能性についてお話しいただきました。

Wi-Fi環境整備に関する予算説明会を開催

午前中は総務省 情報流通行政局 地域通信振興課 課長補佐 渡邉様、午後は 課長 加藤様が説明されました。
29年度の整備計画は31年度までの3か年で最も計画が高く、予算案31.9億円、整備率68%となる6千箇所とし、そのうち補助対象は2千か所となっています。
総務省としては、多くの自治体が31年度で整備を検討されているが補助枠を多く取っている29年度に是非前倒しをして欲しい、と提言されました。

29年度の支援施策の主なポイントは下記となります。
・事業主体は財政力指数0.8以下または条件不利地域の普通地方公共団体・第三セクター
・帯域は5GHz帯の使用が条件
・既存Wi-Fiとの交換、改修、重複設置は不可
(無線通信ができない状態を解消する事が目的のため)
・Wi-Fiステーションは必要がない限り建柱を行う必要が無い
・Wi-Fiステーションの搭載機能の変更(監視カメラは補助対象外、サイネージが追加)
・Wi-Fiアクセスポイントの耐用年数が6年間に変更
・認証方式の要件は原則としてSMS連携方式、またはSNS認証とメール認証方式併用のいずれか

当初予算のスケジュールは概ね以下のように想定されています。
・公募開始:3月
・公募締切:4月
・審査:4~5月
・内示・交付決定:6月

続いて地方におけるWi-Fi活用取組事例報告として長野県小谷村、新潟県燕市の事例が発表されました。

長野県小谷村観光振興課が実証実験を報告

長野県小谷村観光振興課長の横澤様が、「全国初!国立公園へのWi-Fi環境整備による観光利用と近隣1市1村と連携した実証実験」の取り組みを報告しました。

小谷村は村内に2つの国立公園と3つのスキー場を有し、観光客の来訪総数は100万人を越え、外国人の来訪者も増加しています。
一方、過去には地震や豪雨災害を経験したこともあり、観光客を含めた防災対策の一環として27年度にWi-Fiの整備が行われました。
標高1900mの自然公園でありWi-Fiステーションの整備では、無線伝送でのネットワーク化、電力はソーラーパネルと蓄電池を使うなど景観や環境へも配慮されました。
実証実験では大町市、白馬村と連携したWi-Fi連携の実証実験では3市村で異なる複数のシステム構成で認証連携が取れるよう公衆無線LANの利用手続きの簡素化の実地検証が行われました。
これによりそれぞれの市村からの認証済みユーザーの流入の割合が把握できるようになり、今後のWi-Fiの媒体価値の向上も期待できると発表されました。
また多言語音声翻訳の利活用実証を今年2月まで続けており、外国人への案内が積極的に行えるようになる等の成果が出ていると発表されました。

新潟県燕市総務部がWi-Fiステーションを報告

新潟県燕市総務部総務課主幹(情報企画担当)高橋様が、「燕市観光・防災Wi-Fiステーションについて」報告を行いました。

燕市は金属洋食器を中心とした文化を持っており、PR大使などで全国へ積極的にアピールをしています。一方、地理的な特徴による河川の氾濫、地震に対する災害も想定されるため地域防災計画を策定しています。
この地域防災計画に掲げている市民参加の防災を促すという観点から、避難場所への無線LAN環境と観光防災Wi-Fiステーションを整備しています。
Wi-Fiステーションは史料館や体育館、アーチェリー競技場にはライブカメラを設置し、平時には賑わい状況やキャンプの模様を発信し集客促進に活用していますが、災害時には災害状況を配信できるよう蓄電池を備え、水没を避けるため機器の収容ボックスを高い位置に設置するなどの工夫を施しています。
また、スマホの防災・情報サイトには多言語対応、カメラ映像の確認、投稿画面を備え災害時だけではなく、平時の道路の補修依頼も投稿できるようにしています。投稿された画像での状況把握、画像のGPS情報による位置の特定により、いち早く対応できるようになりました。

今後はさらにこのサイトおよび使い方の周知をはかり利用頻度を高めたい、と発表されました。

熊本県熊本市総務局行政管理部がWi-Fi無料開放を発表

熊本県熊本市総務局行政管理部首席審議員兼情報政策課長 桐原様が、「平成28年熊本地震におけるWi-Fi無料開放」について発表されました。

24年度は商店街へ外国人旅行客の購買行動の促進などを目的としWi-Fi整備を行い、25年度には防災Wi-Fiステーションを導入し、観光と防災の双方で整備を進めました。
熊本地震でのWi-Fiでの活動は00000JAPANを前震の直後4/14から開始。くまもとフリーWi-Fiは4/15(本震の前日)より災害対策モードへ切替えを行いました。災害対策モードは認証無しで繋がる状況とし、接続して最初の画面は熊本市による防災のお知らせが出るようにしました。
平時の利用状況はだいたい8拠点16APに対し2000を切る程度でしたが本震の直後は2倍以上の5000程度まで増加し、その後次第に落ち着いてきました。
この結果から明らかに無料のWi-Fiエリアがあれば繋がろうとする事がはっきりしました。その後の復旧作業でもモバイル端末の通信手段として役立てることができました。
反省点としては外国人の方々に対し情報提供が十分にできていなかった点があげられます。と発表されました。

パネルディスカッション「ICTを活用した地域づくりの課題と期待」

パネルディスカッションは、次のような形で行われました。

モデレータ 総務省情報流通行政局地域通信振興課長 加藤様
パネリスト 株式会社NTTデータ 吉田様
無線LANビジネス推進連絡会 武井様
長野県小谷村 横澤様
新潟県燕市 高橋様
熊本県熊本市 桐原様

パネルディスカッションのポイントは「災害発生時に無料Wi-Fiをいかに迅速に効率的に活用するか」「無料Wi-Fiの活用によって地域づくりをどう図っていくのか」「無料Wi-Fiを全国にどう広めていくか」の3つで議論されました。

冒頭、武井様が00000JAPANの取組みについて報告されました。東日本大震災、広島土砂災害において通信事業者独自で無料Wi-Fiを解放していました。はじめて00000JAPANが無料開放を実施したのが熊本地震でした。このときは携帯電話事業者3社が中心メンバーとなり、自治体のWi-Fi環境も含め九州全域でアクセスポイントが開放されました。
また、周知啓蒙として自治体、総務省の告知に加え、メディアやSNSを通し個人でも周知啓蒙された結果、トラフィックが増加しました。
今後さらに00000JAPANの拡大と体系的な周知啓蒙を進めたい、と発表されました。

迅速な無料Wi-Fiの開放については燕市の高橋様から、コントローラーからの作業や日頃の訓練が必要と感じている、と提言されました。
NTTデータの吉田様は災害時のインフラの活用にはSNS等民間のコミュニケーションツールが重要で、スタンプなどを活用すれば文字を打たなくてもシンプルにコミュニケーションが取れるのではないか、また利用者の写真をマップ上に表示できれば災害マップの代わりにも使えるのではないか、というアイディアを出されました。

災害時のみならず平時におけるWi-Fiの利活用について、武井様より、通信環境を見ると日本人の環境は十分整備されているので外国人向けの通信環境を充実することが重要なのではないか、と提言されました。
桐原様からは熊本市の商店街への説明ではWi-Fiでなぜ売上アップにつながるのか、という点で、外国人の口コミが結果的に売上に繋がるため、その情報発信のためのWi-Fi整備が重要とご説明し納得いただけた、という経験を紹介されました。
吉田様からはWi-Fiは合わせ技だと思っていて、例えばお店や家のビーコンからプッシュ型の情報が発信されたり、見守りにビーコンを使うなどプッシュ型のサービスとの組み合わせで色々な可能性が広がるのではないかと考えています、と提言されました。

Wi-Fiを全国に広める方法として、吉田様からは認証を簡単にする必要があると提言されました。さらに自治体の観点から横澤様は、外国人観光客が急速に増えており、それに対応する整備を進めていきたいとの意見が出されました。
また、燕市の高橋様は避難場所に指定されている学校のグランドや校庭に整備を進めるのは教育、災害時対応の両面から有効と考えていて、できれば学校の近くに来られた外国人に向けてもエリアを拡大できる無線間通信なども利用したネットワークづくりのプランもいいのではと考えています、との意見が出されました。
熊本市の桐原様からは将来的には路面電車など移動体でのWi-Fi整備で空港から移動される外国人観光客にもサービスを提供したいと考えています、というプランも紹介されました。

資料等

一般財団法人長野経済研究所様ホームページにて講演資料のダウンロードが可能です。
http://www.neri.or.jp/www/contents/1485755789260/index.html


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