巻頭特集
世界最先端のワイヤレス活用へ官民の力を合わせて進めよう
新年対談 総務省 富永総合通信基盤局長 × 無線LANビジネス推進連絡会 小林会長

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対談を行う、富永局長(右)と小林会長(左)

2020年へ大きな飛躍が期待される新しい年を迎え、小林会長が総務省総合通信基盤局 富永昌彦局長を訪れ、ワイヤレス分野における総務省の取り組みと今後の移動通信市場の方向性について、対談を行いました。
富永局長は、多方面での積極的な推進策を述べ、国内はもちろん国際的にも期待の高まる無線LANの利活用を一層進めるため、無線LANビジネス推進連絡会など民間団体と協力していきたいと語りました。

ワイヤレス分野における
2020年に向けた総務省の取り組み

小林会長 安倍内閣は成長戦略を掲げていますが、2020年に向けて総務省では、特にワイヤレス分野において、どのような取り組みを進めているのでしょうか。

富永局長 今日、携帯電話は国民に広く普及しておりますし、鉄道、警察、消防などさまざまな社会インフラで電波が活用されております。無線による通信は国民の日常生活や社会活動、経済活動においてとても重要な基盤となっています。

これからは、あらゆるものがインターネットにつながるIoTが進展し、医療、農業、交通などさまざまな分野で電波の利用が広がることが想定されています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、わが国の取り組みを全世界に示す絶好の機会と考えております。新たなイノベーションを起こす基盤として電波を最大限に生かすことが重要です。

2016年6月に閣議で「日本再興戦略2016」が決定され、そのなかで政府の目標として、「モバイル分野の競争促進」、「IoTに対応するための情報通信インフラの高度化・周波数確保」など、情報通信環境の整備が掲げられています。
例えばモバイル分野の競争促進については、スマートフォンに代表されるモバイル通信は、今や国民の日常生活や社会経済活動においてなくてはならないものとなっていますが、MVNOを含めたモバイル市場が健全に発展し利用者がより高度で多様なサービスをより低廉な料金でより自由に選択できるよう様々な取り組みを進めています。

それから、本格的なIoT時代の到来に向けて、IoT、ビックデータ、AI、ロボットなどとともに第4次産業革命を支える技術の一つが5Gです。5Gの実現により、国民のモバイル通信ニーズのさらなる高度化に応えなければいけないと考えております。
もう一つはITSです。これについては日本はかなり前から先進的に取り組んでいます。IoTの一環としても、社会インフラとしての様々な電波を活用した次世代ITSの推進に取り組みたいと考えています。

それらのベースとなりますが、今後の電波利用の急激な拡大に対処するため周波数資源の拡大のための研究開発や周波数の再編はしっかり取り組んでいくテーマだと考えています。

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富永局長

小林会長 私も40年以上も無線の仕事をしていますが、すべてのものが無線でつながるということは想像もしていませんでした。そういう時代がこんなに早く来るとは思いませんでした。
今後はますます周波数も足りなくなるでしょうから、ぜひ効率化の取り組みをお願いしたいと思います。
光ファイバーが出た当時は、無線なんかもういらないと言う議論もありましたが、モバイルがまだ普及していない当時と比べると、すべての人とモノがワイヤレスでつながる時代が来るとは、それは夢のようです。ワイヤレス業界は頑張る必要があると思います。

5Gの実現に向けた
取り組みを積極的に

小林会長 5Gについては、2020年に実現という目標掲げていますが、具体的にはどのような取り組みを進めているのでしょうか。

富永局長 5Gは新世代の移動通信システムとして、産業機器やスマートメータなどさまざまな分野での利用が想定されており、新たなライフスタイルやビジネスを創出するICT基盤として早期の実現が期待されています。
世界に先駆けて5Gを実現することで、わが国企業の国際競争力強化や地域活性化を推進することが大切であると考えています。
5Gは、様々な通信技術を柔軟に組み合わせたネットワークとなることが想定されており、「超高速」はもちろん「多数同時接続」「低遅延・高信頼」といった、これまでになかったモバイルネットワークの特徴を有しています。現在、各国各地域で研究開発や実証実験が進められている段階です。

総務省では、世界に先駆けて2020年に 5Gを実現すべく研究開発に積極的に取り組むとともに、欧州・アジア諸国との国際連携を図っています。来年度からは、5Gの社会実装を念頭に、産業界や国民の皆様に体験いただける実証実験を東京だけでなく地方でも実施する予定で、供給側だけでなく、利用者側の意見を聞いていきたいと考えています。

小林会長 第3世代も第4世代も日本は他国に比べていち早くスタートしました。エリア構築もとても速かった。2020年もありますし、第5世代のモバイルシステムもぜひ他国に負けないように早く良いものを作って欲しいと希望しています。

写真③

小林会長

富永局長 これまで、多くの情報を伝送するために高速化を図ってきたわけですが、それだけではなくて、多数同時接続ということで、色々なものを接続するIoTに対応することが必要です。さらに、ロボットや自動車など低遅延が求められるクリティカルなものにも対応できるようにしたいと考えています。

5Gで使う周波数帯の確保も実現に向けた重要な課題です。先進的な国・地域では検討が行われており、わが国としても5G用周波数帯を早期に明確化することが必要です。そこで、5G用の周波数確保に向けて基本戦略を策定するため、2016年10月に情報通信審議会に諮問しており、2017年夏ごろまでに一部答申をいただく予定です。
総務省としてはグローバルな動向を踏まえ、わが国のニーズに十分応えることができる5G用周波数をしっかりと確保していきたいと考えています。

小林会長 最近はノキアやエリクソンなど先進的企業は日本にテストベットを作って5Gの商用化へ向けて開発を積極的に進めていると聞いています。他の国の先進的な企業の取り組みと協調して、日本がトップで第5世代を始められたらいいなと思います。
あとWi-Fiも第5世代に対応する新しいシステムが出てきていますので、5Gと連携しながら、Wi-Fiもこれに負けないように、頑張っていきたいと思います。

Wi-Fi環境の整備支援や認証連携を進めたい
官民を挙げてさらなる普及を

小林会長 Wi-Fiについては、総務省は全国の自治体への整備支援や認証連携の取り組みを行っていますが、具体的にはどのように進めていくのでしょうか。

富永局長 Wi-Fiは誰もが利用できる免許不要のアンライセンスバンドで運用されており、世界共通の規格により世界中で同一の端末利用でき、高速大容量の無線通信ができることから、光ファイバー回線や携帯電話・スマートフォンなどとともにブロードバンドインフラを構成する重要な要素であると認識しています。
最近では訪日外国人旅行者の利用ニーズも高く、その重要性はいっそう高まっており、Wi-Fiの利用環境をいっそう充実していく必要があると考えています。

まず、整備支援については平成25年度補正予算から補助制度を設け、地方公共団体等が防災を目的として公衆無線LAN環境を整備する場合に支援することとしており、これまで139団体に対して支援を行いました。防災拠点などに公衆無線LANが利用できる環境を整備することは、大規模災害時の情報収集・伝達手段を確保する、という観点から非常に重要なことです。

「日本再興戦略2016」では、「外国人旅行者などが観光・災害時にも利用しやすいWi-Fi環境を実現するため、2020年までに主要な観光・防災拠点における重要整備箇所について、国が本年中に作成する整備計画に基づき、無料Wi-Fi環境の整備を推進する」こととしています。

総務省では、現在、この整備計画の作成作業を行っているところであり、今後速やかに計画を策定し、その計画に基づき、2020年に向かって環境整備を推進していきます。
*対談後の2016年12月26日に整備計画が策定公表されました。

読売新聞2016/12/26朝刊

また認証連携については、小林会長に議長を務めていただいている「無料公衆無線LAN整備促進協議会」と連携して取り組んでいます。
この協議会は、総務省と観光庁の協力の下、訪日外国人に対する無料公衆無線LAN環境の整備のため、平成26年8月に設立に至ったものであり、電気通信事業者、商業施設、宿泊施設、鉄道事業者等の業界団体・企業や地方公共団体など800以上の機関が参加しています。
小林会長は協議会の議長も兼務されていますのでよくご存知の通り、協議会では「整備促進」、「周知・広報」、「認証連携」の3つのPTを設けて各課題に取り組んでいます。

総務省では協議会における議論も踏まえ、2016年2月に「利用しやすく安全な公衆無線LAN環境の実現に向けて~訪日外国人に対する無料公衆無線LANサービスの利用開始手続の簡素化・一元化の実現等に向けた取組方針~」を公表しました。
この取組方針では認証連携のための、①共通の技術仕様の策定、②実証実験の実施、③全国各地への普及を行うこととしており、昨年2月から4月までの間に全国16箇所で実証実験を行いました。

この実証実験を踏まえて、2016年の9月に実証実験に参加した事業者により「一般社団法人公衆無線LAN認証管理機構」が設立され、この管理機構において認証連携のための仕様が策定・管理されています。10月には関西広域連合においてこの仕様を用いた認証連携が開始されました。
今後とも無料公衆無線LANの利用環境整備に向けた取り組みを推進していきたいと考えています。

小林会長 Wi-Fiは、スマートフォンが登場しトラフィックオフロードということで普及し、それが一段落すると、総務省のご指導のお蔭で自治体の支援などの制度ができました。裾野が広がって、キャリアが打たなかったところにもここ2、 3年で急速に拡大してきました。地方でも急速に進んでいることを実感しています。今後も補助金の支援などを引き続きよろしくお願いします。無線LANビジネス推進連絡会でも、支援制度の勉強会や告知を進めています。
もちろん、全部、国に頼るということではなくて、自分たちでお客様に対する普及を推進していくフレームを作っていきたいと思います。一歩一歩進め、国の支援と両輪となって2020年に向けてWi-Fi拡大に手を携えて進めていきたいと思います。
認証連携も、利用者が簡単に済むということはとても大事なことなので、積極的に取り組んでいきたいと思います。Wi-Fiの普及拡大へ向けて無線LANビジネス推進連絡会は一生懸命取り組んでいますが、まだまだやりきれてない面もありますので、今後、ご指導を受けながら、さらに進めていきたいと思います。

富永局長 Wi-Fiは、国内のみならず海外からもとても期待が大きいと思いますので、連携を取って進めていただきますよう、お願いします。Wi-Fiはよくここまでやってこられましたね。数年前までは、とてもここまで普及するとは思っていませんでした。

小林会長 そうですね。私は、約20年Wi-Fi一筋ですので何とか普及して欲しいと願ってきましたが、ここまで急速に普及するとは思っていませんでした。やはりiPhoneの登場が大きかったです。当時は、NTTでも約1万局しかありませんでしたが、今は15万基地局近くなっています。少し前の利用者は限られた人たちでしたが、今は日常生活に必要な普通の基本サービスになりました。それとともに、単なる高速ワイヤレスインターネット接続だけでない多様なビジネスモデルが生まれています。

富永局長 是非、今後ともさらなる普及に向けて、官民を挙げてがんばりましょう。

写真⑤


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