ビジネス情報
802.11acによるさらなる市場拡大と802.11ahによる新たな市場創出
無線LANビジネス推進連絡会会長 小林忠男

現在のWi-Fiは802.11nが主流ですが、市場拡大と新たな市場創出に向けWi-Fiの進化が図1に示すように進められています。

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Wi-Fi Allianceは、Wi-Fiのパフォーマンスを向上させる「Wi-Fi CERTIFIED ac」の認証プログラムを今年6月に開始しました。
また、802.11acに続き、IoTに適した802.11ah、4K、8K等の高画質映像伝送に適した802.11adがこれからデビューします。

まず802.11acですが、5.4GHz帯の802.11nの機能拡張により高速化させたこれから2020へ向けてのメインストリームになるWi-Fiです。
使用する周波数は基本的には5GHz帯で、帯域幅は160MHzまで取ることが出来、最大速度は理論値で6Gbps超になります。今の11nの最大伝送速度が600Mbpsですから10倍以上高速になります。2020年にスタートする予定のモバイルの第5世代の先駆けのスピードになります。

802.11acの詳細についてはWi-Fi Allianceの以下の記事をご覧ください。
http://www.wi-fi.org/ja/news-events/newsroom/wi-fi-alliance-wi-fi-wi-fi-certified-ac

802.11acは、これから本格的にWi-Fi化が始まる自治体、観光地、学校、病院等の新設Wi-Fi基地局として導入されるとともに、家庭、企業の高速Wi-Fi基地局として多く導入されることになるでしょう。また、既に様々なスポットに設置されている100万を超える公衆無線LAN及びWi-Fi化率40%を超える家庭用Wi-Fi基地局の更改用として、2020年までに膨大な数の需要が発生すると思われます。

5GHz帯の802.11acの導入が進めばこの帯域の周波数逼迫が深刻な問題になります。そこで、私たちは、現在の5GHz帯の屋外、屋内における使用条件の緩和、拡大のための具体的活動をさらに精力的に進めるとともに、アンライセンスの5GHz帯をLTEとして使いたいという動きにどのように対応するかきちんとした見解を明確にして行動していきたいと考えています。

スマホの登場によりサービスプロバイダーによる公衆無線LANインフラの設備投資が急増しWi-Fi業界は非常に潤いました。それ以上の波がやって来ると思います。業界あげて一致団結してこの大波を掴み取りましょう。

次に、802.11ahです。IoTという言葉を聞かない日はありません。2018年には認証がスタートされると言われている802.11ah は、IoTのワイヤレスシステムとして最適なシステムの一つであり、Wi-Fi業界にとっては久々の「ニューフェース」だと確信しています。

ただ、802.11ahをIoTのために導入して金のまわる儲かるビジネスにするためには、図2に示す端末・デバイスからクラウドまでのエンドエンドのシステム構成がきちんと実現されなければなりません。創設費と経年的にかかるコストの詳細を含めて明確にしなければなりません。

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もちろん、802.11ahが期待値通りのパフォーマンスを提供できるシステムにすることは言うまでもありません。
IoT関連の記事を読んでいると、デバイスやセンサーを開発した、データ処理のためのクラウドが出来た、有効なアプリケーションを開発した、という内容のものを多く見かけます。しかし、そのコストはいくらで、どれだけの効果があったかについては多くの場合、はっきりしていません。単発的に出来た、実現したという類が多く、どこまで普遍的に使えるかはっきりしていないものが多いのではないでしょうか。
また、最も重要と思われるIoTのデバイス、端末をネットワークにつなげる「ワイヤレスアクセス」についてはすでに前提とされていて、LoRaやSIGFOXはどのくらいの創設費とランニングコストで使うことが出来るかはっきりしていません。

図3は極めて簡素化したIoTネットワーク構成とコスト内訳を示しています。これらのコストと効果をバランスするために、それぞれの性能とコストがどのような関係になるか明確にする必要があります。

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IoTはこれから本格的にスタートするビジネスであり、802.11ahはWi-Fi業界にとって期待の星となるワイヤレスアクセスです。
802.11acは802.11b、a、g、nの延長線上にあり、基本的には同じビジネスモデルの上で市場が形成されていくと考えられますが、802.11ahは、図3に示すようにahシステムに加えて、IoTデバイス、基地局~ネットワーク間回線、インターネット、クラウドのトータルのシステム構成において、エンドエンドで何がどのくらいのコストで実現可能かを明確に明示しないと、金の回るビジネスにはならないでしょう。
即ち、802.11acとは違い、ゼロからまったく新たなWi-Fiビジネスを創出するということです。

Wi-Fi市場拡大のための絶好のチャンスがやって来ます。この動きを逃すことなく、さらに拡大するためにWi-Bizは様々な活動に取り組んでいきたいと考えています。


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