ビジネス情報
IoTの多様性とワイヤレスの多様性

無線LANビジネス推進連絡会会長 小林 忠男

新聞、インターネット、雑誌で、「IoT(Internet of Things)」という言葉を見ない日はありません。
現在のパソコン、スマートフォン、タブレット、カメラ、サーバー等に加えて、クルマやロボット、各種センサーなどすべての人とモノがインターネットにつながる時代が到来する予感がします。
その数は、億ではなく「兆」の単位になると言われていますが、これらの端末、モジュール、デバイスはインターネットに「何によって」接続されるのでしょうか。

IoTには動かないモノだけでなく動き回るモノもたくさん出てくるでしょう。また、これらのモノはどこに設置されるか分かりません。それを考慮すると、IoTは、今や多くの人たちが毎日手放せなくなってしまったスマートフォンのように「ワイヤレス=無線」でインターネットにつながることになると私は確信しています。

人だけでなく何百億個のIoTが、もしかしたらソフトバンク孫社長が言うように3兆個ものIoTがワイヤレスでつながる時代が到来するかもしれないということです。

毎日、Wi-Fiの普及拡大を考えている私にとってはこれまで感じたことのないワクワク感がある夢のような時代がやって来るということになります。

IoT時代には、どのようなワイヤレスシステムが使われることになるでしょうか。

アンライセンスバンドを使うSIGFOX、LoRa、802.11ah、Wi-Sunと、ライセンスバンドを使うNB-IoTという言葉をIoTに興味ある方々は目にしたことがあると思います。それぞれがどんなシステムであるかを簡単に図1に整理しました。伝送速度と距離にそれぞれ違いがあります。

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無線LANビジネス推進連絡会としては、802.11ahの早期商用化を期待していますが、認証スケジュールが確認するたびに、後にずれています。
様々なIoT機器が実用化されてもこれらをインターネットにつなぐワイヤレスアクセスがなければ何の役にも立ちません。

何故、遅れているのか。私なりに調べてみますと、図1にあるように、いくつかのシステムが開発中であるため、どのワイヤレスシステムがIoTの本命になるのか、勝ち馬はどのシステムになるのかを注意深く見守っているという状況のようです。確かに、IoT用の半導体を開発製造するには莫大な投資が必要であり、それが負け馬になってしまった時のリスクを考えたら簡単に大きな投資をするわけには行きません。

私は、どれかが勝ち馬になりどれかが負け馬になる心配をする必要はないと考えています。

図2をご覧ください。

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モノには、自販機、電子決済、ホームネットワーク、3Dプリンタ、ヘルスケア、様々なセンサー、クルマ、ロボット、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル、IPカメラ、4K・8Kディスプレイ等、多様なモノがあります。

故障した時は少ない情報だけど確実に監視センターに送りたい、常時接続で画像をセンターに送りたい、手軽に安く様々な情報を自分好みのネットワークでインターネットに送りたいなど様々な要求条件のモノがあります。

通信距離、通信頻度、情報量、品質・信頼性、同報性、形状・大きさ・容量等のパラメータをどのようにワイヤレスシステムで実現し、お客様に提供するかが非常に重要になります。

一つのユニークなシステムですべての要求を実現することは不可能だと私は考えています。

距離は長くなくても高速性を必要とするモノもあれば、コストを安くするために伝送距離の長いワイヤレスシステムを必要とするモノもあるかもしれません。

アンライセンスの誰でもが草の根的に自由にワイヤレスネットワークを実現できるアンライセンスのWi-Fiが、現在ではモバイルキャリアが提供するLTEと補完関係にあり、毎日の生活になくてはならないものになっています。IoTのネットワーク構築において誰でもが自由に出来る電波と、限られた人が独占的に電波免許を獲得しきちんとしたIoTネットワークを実現することも絶対に必要です。

IoTの時代にはIoTの数だけワイヤレスアクセスが必要になります。これからはIoT創世記です。創世記には、最初から特定のシステムに全てを期待するのではなく、多様性のあるIoTに多様なワイヤレスシステムで顧客の要望を実現することが成功の基本であり、多様性のあるシステムを実現することがIoTビジネスをダイナミックな市場にする方法だと思います。

IoTをビジネスにしようとする企業や人たちは、まずは決め打ちをせずに図2に示すシステムの実用化に取り組むべきだと考えます。


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