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トップインタビュー
華為技術日本 
通信キャリア事業 マーケティング本部
本部長 曹 建銘 氏
AIで加速する通信業界の技術進歩
Wi-Fiの高速・低遅延を活かすソリューションに期待

グローバル企業として存在感を高めているファーウェイ。日本法人の華為技術日本株式会社が設立されて今年19年目を迎える。通信キャリア事業マーケティング本部長の曹建銘氏に、ファーウェイの事業戦略と日本におけるビジネスの取り組みについてたずねた。

 

 

「通信企業からAI企業への転換」といわれて

–通信業界では、5Gから6G、IoTの普及、衛星通信、ネットワークの自動化とAIなど、新しい技術が話題となっています。2024年のICTのビジネスの展望について、どう見ていますか。

曹 ITUはすでに6Gのビジョンを発表しており、衛星通信やより大規模なIoT接続性をめざした技術研究が進行中で、ネットワークの自動化とAIが6Gにおける重要な技術になることが期待されています。
日本でもBeyond 5Gや6Gなど、いろいろなテーマが出ていて、衛星通信はHAPSやStar linkなど、サービスが展開し始めています。
今年2月にスペインのバルセロナで行われた「MWC2024」でファーウェイは「5.5G」の進化を主張し、5Gの枠組みの中で6G向けの能力を徐々に構築することを目標としております。5.5Gとは「5Gから6Gに向かっていく途中経過のネットワークはどうあるべきか」ということです。簡単にいうと、5Gをもう1回アップグレードして、例えば帯域を10倍ぐらいにしていこうということです。その中で6Gに向けて性能を強化することを目指しています。
3GPPの技術標準でも、R18/19/20の3つのバージョンで進化を模索しています。商用化も加速すると予想されています。R17からR19、どこのバージョンから5Gで、どこからは6Gというのはなかなか難しいところもあるのですが、5Gができなかったことを6Gでカバーするという方向になるかと思っています。

私自身ずっと通信業界でやってきて、3Gはテキストや通話が中心で、4Gはキャッシュレス決済、動画も普及しました。5Gになってくると、動画は4Kや8Kなどもっと大量のトラフィックが流れるような世界になってきました。
6Gになるとどうなるかというと、例えば衛星通信で、今まで基地局が置かれなかったところのカバーができる。また、6Gではミリ波よりもっと高い周波数になるので、人体拡張というか、人の感触、低遅延の直感的なもの、そういった世界が実現されると思います。あとは遠隔の医療や手術など、本当にクリティカルな高い通信品質が必要となる領域に踏み込んでいくのではないかと思っています。

— AIも通信業界で活用が進んでいます。

曹 MWC2024後の報道では、ファーウェイが「通信企業からAI企業への転換」といったことも海外のメディアで取り上げられました。ファーウェイは技術の進化はあくまでも人類を幸せにすべきものととらえており、AIは企業や個人へより良いサービスを提供するためのものであることには違いありません。
今までは通信は人との連絡、会話やコミュニケーションのためにあったツールですが、これからはビッグデータ・AIでの活用となってきて、人のために自動的にやってくれるような世界になってくる。実際に範例としてはロボットや自動運転などです。B to Bの世界は業務が自動的に進み、事務手続きを全部自動でコンピュータがやってくれるというビジネスの展開になると思っています。
個々の端末からネットワークでつながれてデータセンターへ、データセンターの中にAIを実現するためのコンピューティングと算力があって、集めたデータをストレージに蓄積し分析によるAI化、サービスの形として個々の端末などへフィードバックするというような世界です。

–これまでの技術の進化を継承しながら、AIによって加速するというイメージですか。

曹 通信とコンピューティングさらにエネルギーなどは、それらを支える基盤だと考えています。ファーウェイは、これまで5G/6G、IoT、衛星モバイル通信など各分野での蓄積してきた技術に加え、継続的に技術開発に投入していきます。次の時代に向けてのビジネス展開を望んでおります。
2024年の展望はこういった世界でしょう。2023年末にChatGPTが登場してから特に人工知能が非常に身近に感じられるようになっています。弊社も2月にアップデートをした戦略のなかで、日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進するために、通信(コネクティビティ)、データセンター(コンピューティング)、端末(デバイス)へ取り込む構想を打ち出しています。

 

 

 

ただ、データセンターにあるコンピューティング、算力とも言える能力はもの凄くエネルギーを必要とします。特に日本は自然資源が少ないので、うまくやらないと、先ほど描いたAIの世界は行き詰まる可能性があります。
日本もそのような展開になっていく中、ファーウェイとして力を入れられるところには注力し、ビジネス展開できればいいと思っています。

2023年から2024年にかけて人工知能(AI)の元年とも呼ばれており、ファーウェイにとっても一新する年であり、アップグレードの年でもあります。日本のICT市場の成長は、「デジタルトランスフォーメーション」「データセンタ」「持続可能なエネルギー」と「人工知能」および「クラウドサービス」といったキーワードに集中的に表されると考えられます。これは世界的な傾向と同調していますし、ファーウェイが一層力を入れている分野でもあります。

 

 

 

「デジタルパワー」の取り組みを重視

–新しい技術、6G、IoT、衛星、AI、そういう先端技術については最前線で取り組んでいくということですね。さらに、エネルギー問題については、特に重視しているということです。クラウドもデータセンターも巨大な電力を使います、特にAIはその莫大な電気利用が懸念されています。エネルギー問題をちゃんと見据えなければいけないという問題意識があるわけですか。

曹 そうですね。日本経済産業省が2021年に宣言した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」には「Green by Digital」と「Green of Digital」と二つのキーワードがあります。前者はDXによる省エネ、後者はICTの製品そのものを省エネにすることです。

例えば遠隔の会議をやることで電車通勤がいらなくなるということは、本来はDX自身が省エネの世界に向かっています。
2つ目は、例えばデータセンターの中のエネルギーをどのように使うかということです。ファーウェイ製品の中に、データセンターの空調、UPS、電源の制御や変換装置、あるいはリチウム蓄電池といった省エネルギーに直結のソリューションがあります。

–「デジタルエネルギー」という言い方をしているのですか。

曹 弊社の中では「デジタルパワー」といっています。ある意味でデジタルは弱電、パワーは強電の世界になります。この両方をまたいでファーウェイはやっているので、珍しい形態のビジネスを展開といえるでしょう。電気はアナログですが、そこをデジタルで管理することによって、より効率良く使えるというのが、もともとの考え方です。パワーのDX、強電のDXともいえるでしょう。

–「エネルギーのDX」ですか。

曹 もともと弊社は基地局の予備電源を作っており、さらに室外における耐久性とか、いかに効率良く電気を変換するという技術を研究してきました。近年、エネルギー問題が大きく浮彫になったときに、こういった技術を有効活用しました。

AIの発展を多面的に推進していく

–「通信企業からAI企業への展開」ということですが、通信業界ではAIを使うことによって電波の有効利用やネットワークの効率化・自動化などが注目されています。御社の取り組みはどういうところがポイントですか。

曹 ファーウェイのお客さんは通信キャリアが多いです。今までは24時間、人力で対処しているオペレーションの部分で、これからはAI で24時間自動運転など、通信キャリアにとっての大きなテーマになっています。
ファーウェイはお客様に設備を提供しているわけで、こういったこともサポートしなければいけない。これが一番目のテーマです。
AIが賢くなるには大量のデータを学習しなければなりません。その中にはデータセンター間通信(DCI)、データセンターの中での通信、そういった基本となる技術をファーウェイが研究をし、さらにクラウドサービスといった形でお客様へご提供することになると思っています。

 

 

 

プライベートワイヤレスネットワークの展望

–日本では5G、ローカル5G、Wi-Fi 6・7、11ahなど、ワイヤレス市場は新技術、新サービスが登場して活性化しようとしています。ワイヤレス市場の発展について、どうみていますか。

曹 日本では中小企業の数が多く、デジタルトランスフォーメーションに対するニーズが高い反面、デジタル化能力不足、手軽なデジタル化サービスの入手が難しさ、予算の制約などの課題に直面していると思われます。
日本のモバイル市場におけるローカル5Gは非常にユニークなアイデアであり、日本のアプローチを参考にしている国もあります。しかし、現在の進歩は依然として検証試験段階が多く、実際商用化の規模は非常に限られており、この市場がよりオープンに、より多くのプレイヤーが参画できれば、ローカル5Gビジネスの繁栄を促進することを期待しています。
ファーウェイ過去の経験からも最初のトライアルに凄くお金が掛かるので、海外の優良事例を参考にして、日本に合ったソリューションがこれから作っていけたらよいと思っています。
ファーウェイは、5G、Wi-Fiを含めて、一連のソリューションを扱っていますので、日本と海外の橋渡しとしてお役に立てるかなと思っています。

–海外はキャリア主導のプライベート5Gが多いようですね。

曹 先日、日本の大手通信キャリアも「プライベート5G」のサービスを始めました。ローカル5Gがエンタープライズでの展開に一番のネックになっているものはコストという感じがします。日本ではやろうと思っても資金力と人材と力が足りていないというジレンマがあると思うので、外部の力を借りることが手としては1つあります。

–ローカル5Gは日本独自色が強いですが、「プライベート4G」はヨーロッパでは結構広がっていると聞いています。海外で、そういう取り組みを進めているのですか。

曹 ローカル5Gは、周波数をローカル5G用に割り当てるユニークな取り組みだと思います。日本、韓国、イギリスでは行われていますが、その他の国では「プライベート5G」が主流になります。
「プライベート4G」は4Gの時代は普通に行われていましたが、「ローカル4G」的なものは実用化された場所は決して多くありません。例えば一部の鉄道沿線もしくは短時間エリアなど、特殊な環境でのみ使われているというケースでした。大多数を占めたものはプライベート4Gです。それは、通信事業者の4Gネットワークから一部をその企業専用として使っているということです。それなりに数としてあったのですが、今のプライベート5Gに比べると、はるかに規模としては小さいです。
4Gのときに使っていた標準規格が、コアネットワークの一部の機能をローカルに寄せるというところの標準化がまだ弱かったのです。なので、いざ実装となると、コアネットワークの部分で難易度が増してしまうということで、なかなか5Gほどは普及しませんでしたが、それでもさまざまな国で多かれ少なかれプライベート4Gを実装した事例が出ています、キャンパスとか、大規模工場とかですね。

–先ほど「ローカル5G市場のオープン化を期待している」ということは、コスト力を発揮して、中小企業でも使えるようにして貢献したいという趣旨ですか。

曹 コストも含めてです。5Gの基地局は中国国内に、世界中に半分以上あって、大量生産によってコストダウンの効果はあります。中国の中ではローカル5Gはないのですが、中小企業の5Gの使い方、その成功事例があります。昨年末の時点で、中国の中ではPoCを5000件以上やっています。そういった蓄積した経験がありますので、日本のDXのシーンの中で、うまくはめられるものがあるかと思っています。

Wi-Fiのこれからの発展の方向

–次にWi-Fiですが、6・6Eから7へと発展しています。今後、どのようにWi-Fiが普及し、活用が進むと考えていますか。

曹 Wi-Fiは、2つ大きなポイントがあって、1つは標準化、もう1つは事例の応用です。Wi-Fi 6に関しては、昨年7月に4つ目のドラフトは完了して、今年5月から正式に発効します。Wi-Fi 7の標準化の話は、たぶん落ち着いてくるのではないかと思っています。
それに向かって昨年からメーカー側はアクセスポイントや端末などを作り始めています。弊社も今年、関連製品を日本でリリースしました。技適が取れています。そういう状況の中で、今年から一気に7の応用というか、実際の案件が広がっていくのではないかと。
予測としては、2025年、2026年あたりにWi-Fi製品は入れ替えのタイミングがあるのではないかと思います。Wi-Fi 5は老朽化されていますので、そのあたりに大きな市場が出るのではないか。それに向かって、新しいWi-Fi 7の規格に基づいて新しい利用方法、ビジネスを含めて、新しい使い方も増えてくるのではないかと思っています。Wi-Fi分野では、ファーウェイはWi-Fi 7で最も多くの特許を取得しており、Wi-Fi 7産業の発展を積極的に推進しています。

弊社は、他の国でやっている案件で2つのシチュエーションを紹介しています。1つは、実際にスタジアムの中で高密度スポーツシーンになります。多数のユーザーがアクセスできるワイヤレス体験と、複数の端末への平等なアクセスを保証します。例えば、カルテルワールドカップ決勝戦で使用されたファーウェイのWi-Fi製品では、8万人がWi-Fiを通じてネットワークにアクセスできます。
もう1つはメタ、XR、そういった低遅延のコンテンツに使われています。新しいWi-Fi 7は、メタやXRリモートコラボレーションなどのアプリケーションに対して、低遅延で信頼性の高い通信をリアルタイムで実現します。家庭でも応用の場面が出てきたり、あるいは製造の現場、どうしても5Gと比べるとコストメリットは非常に大きいので、成長を含めて、実際にこの市場は広がっていくのではないか、たぶん機器の入れ替えが進みながら市場は拡大していくというように見ています。
将来のWi-Fi技術は、帯域幅、接続密度の向上、遅延の低減に加えて、ネットワーク全体帯域幅と融合能力を向上させることに注力し、セキュリティもより強固になります。前者は、大規模な製造工場や大面積の無線ネットワークの帯域幅の向上、後者は医療やデパートなどの場面での応用で、人々の生活をより安全でスマートにすることでしょう。

 

 

–Wi-Fi6、7で、圧倒的にスピードが速くなるわけで、XRも含めて用途がさらに拡大していく、広がっていくことは間違いないわけですよね。

曹 そうですね、実際にキラーコンテンツが出てきてから市場は加速するでしょう。家庭の中で使えるものが出てくると、一気に普及するのではないかなと思います。

–日本では、Wi-Fiはオフィスに入るべきところはほとんど入っています。あとは高速化がWi-Fi6、7で見えているわけで、順調に伸びていくはずです。問題は、公衆Wi-Fiサービスが5Gとの比較で、当初にあったダントツの高速化というメリットが弱くなってしまっています。日本の公衆Wi-Fiサービスは、需要が落ちているという状況があると思います。中国では、Wi-Fiサービスプロバイダーのビジネスはどうなっているのでしょうか。

曹 中国の公衆Wi-Fi事業者からすると同じような状態です。
昔は携帯電話のパケット料金が高かったのですが、今は完全従量制でも20円で1ギガとか、そういうレベルに来ているので、あえてお店に行ってWi-Fiに切り替えて使おうとする人は少なくなってきています。携帯電話の5Gをつないだままのほうが便利なわけです。

–すると、わざわざWi-Fiに切り替えては使わない。

曹 私個人的な感覚もそうですが、公衆Wi-Fiというものは全体が縮小していくと思っています。残るところは、例えば地下など5Gが届かないところや空港とか外国の方でモバイルの契約がない方は使うでしょう。あと、公衆Wi-Fiに関しては、Open Roamingで認証しやすくなるから、ファーウェイも、そこの開発は進めています。
あとは基地局との統合があるのではないかと思っています。5Gが十分安ければ、あえて公衆でSSIDを探すという習慣ではなくなります。
プライベート空間で制御しやすいところ、あとは工場などコストメリットが大きいところはWi-Fiが残ると思います。

–日本におけるファーウェイの取り組み、その重点を教えてください。

曹 日本が国を挙げて取り組んでいるDX推進において、弊社は通信機器の提供で役に立てると思っています。例えば光伝送装置、ルータやスイッチといったネットワーク装置、Wi-Fiは日本で提供しています。コンシューマー向けのタブレットやノートPCもあります。
もう一つは先ほど話した主にデータセンターで利用されている、高速化のスイッチ、オプティカル装置とストレージ製品、さらにデータセンター用の空調、UPS、蓄電池など必要となってくる製品は日本の中でも展開しています。

–AIも電力の固まりですから、莫大に消費します。

曹 どのデータでも2030年は、AIが必要とする電力は発電が追い付かないころになってしまいます。データセンターのコンピューティングがあっても電気がなければ、どうしようもないですね。バランスを見て作っていかないと、たぶんデータセンターが箱物になってしまいます。

Wi-Bizとともに積極的に取り組む

–Wi-Bizの活動に参加して積極的に活動していただくことになります。

曹 今日、こういうお話できる機会をいただいて感謝いたします。
我々は日本でビジネスをうまく展開していく上では、製品の良さだけではなくて、日本の皆さんが困っていることを一緒に感じながら、そういった輪をつくっていかないと、なかなか力を出し切れない状況に来ていると思っています。

弊社は日本を含めてビジネスを展開している一グローバル企業です。日本のお客様やビジネスパートナーとの相互理解を深めながら、信頼関係をつくっていって、一緒にビジネスをやっていくということが、たぶん自然の流れかなと思っています。
Wi-Bizは日本の関連産業界を理解する理想的な窓口であり、同じくWi-Bizの会員たちがファーウェイをよりもっと知るためのプラットフォームだと思います。
今後もWi-Bizにおいて、より積極的に発声し、技術的な議論や各種の企画への参画を通じて、互いに理解と協力を深めていきたいと思います。


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