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第10回社員総会 記念講演
「つながる東京」
OpenRoamingの普及に向けて

11月17日、無線LANビジネス推進連絡会の第10回社員総会が沖縄・那覇市において開催され、東京都デジタルサービス局 平井 則輔 氏の記念講演「「つながる東京」OpenRoamingの普及に向けて」が行われました。講演の要旨を掲載します。

 

 

皆さん、こんにちは。ご紹介にあずかりました東京都デジタルサービス局の平井と申します。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。本日は「『つながる東京』OpenRoamingの普及に向けて」と題しまして東京都のWi-Fiに関する取り組みについてご紹介させていただきます。

 


 

 

私自身の自己紹介になります。平井則輔と申します。2019年、4年ほど前から東京都のデジタルサービス局でデジタルシフト推進担当課長を務めています。ちょうどヤフーの元会長であった宮坂さんが東京都の副知事になられ、東京都でこれからデジタルの施策を進めるにあたって、ITが分かる人材を登用し、東京のデジタル化を推進していくというビジョンに共感し、前職を辞めて東京都に転職してきました。
前職は通信キャリアにおいてネットワークエンジニアをやっていました。特に自社のネットワークとGoogle、Twitter、Facebook、国内外のインターネットサービスプロバイダ等と相互に接続するため、接続交渉窓口やそのネットワークの設計企画を担当していました。仕事の大半が、社外のエンジニアと交渉、ディスカッションするものでありました。インターネットのネットワークエンジニアのJANOG(日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ)というコミュニティがあるのですが、そちらでさまざまな情報交換や議論をしていく中で、運営に携わって会長を務めていました。そういったご縁もあって、さまざまなITの技術系イベントで講演したりプログラム委員を務めたりしています。普段はビートルズとヘヴィメタが好きな音楽好きです。

1.つながる東京 「つながる東京」とは

本日はOpenRoamingについて話をするのですが、東京都が考えている全体的なコンセプトである「つながる東京」の説明をし、OpenRoamingについて話をして、最後に東京都の取り組み、今後はどうしていくのかというところについて、お話しできればと思います。

 


 

まず「つながる東京」について説明させていただきます。こちらの写真をご覧ください。
2005年、ローマ教皇の即位のタイミングの写真です。新しい教皇が決まるのを今か今かと待ちわびて集まっている群衆の姿です。2005年というところにご注目ください。このときはベネディクト16世の即位のタイミングでした。


 

その次の教皇が2013年に即位しました、フランシスコ1世です。そのタイミングだと同じ場所の写真がこのように変わっています。集まった群衆がみんなスマートフォンやタブレットを掲げて、写真を撮っていて、おそらく動画を撮影したり自分のSNSにアップしたりしているのでしょう。大きく景色が変わっています。やはりモバイルブロードバンドが普及したことは非常に大きな出来事なのではないかと思います。

 


 

一番分かりやすいものが時価総額ランキングの推移というところです。1989年、今から三十数年前だと、ちょうど日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれていたころ、世界の時価総額ランキングには日本企業が沢山いました。その中でテック企業といわれているようなところはIBMぐらいしか入っていませんでした。

ひるがえって三十数年後、令和5年(2023年)のランキングを見ると、GAFAといわれるApple、Microsoft、Alphabet、Google、Amazon、最近伸びているTeslaやNVIDIAがランキングに入ってきています。すなわちインターネット関連の企業が世界経済を牽引し、世界の発展を支えているということです。この約30年間の推移の中で2000年以降を見ると、インターネットが普及し、生活が大きく変化していった時代です。

 


 

そして、インターネットの普及も10年ごとにメディアが変わって、高度化しています。2000年代はインターネットが各家庭で普及する、「Web時代」といわれ、固定ブロードバンドが家庭に普及していった時代。そして、2010年代、先ほどのフランシスコ1世の即位のときにスマホでみんなSNSにアップしていたような時代、モバイルブロードバンド、個人の手元にインターネットが来た時代だと思っています。
そして、今、私たちがいる2020年代は、都市のデジタル化が進行中であり、まだまだ進めていかなければいけない時代かなと考えています。

 


 

そういった時代に向けて東京都は、「東京版Society 5.0(スマート東京)」と題しまして、デジタルのサービスで都民のQOL(生活の質)を向上していくというところを取り組んでいます。国やその他の自治体でも、さまざまなデジタルの施策が進められています。防災、まちづくり、モビリティ、エネルギー、自然、ウェルネス、教育、働き方等々、さまざまなデジタルサービスを推進しております。
東京都はサービスだけでなく、それを支えるインフラ、「都市のデジタル化」と表現しましたが、さまざまなサービスがつながるような「電波の道」を通信事業者のみなさまと協働し作っており、これを「TOKYO Data Highway」と名付けています。また、さまざまなデータや多様なヒト・モノ、あらゆるものがつながるインフラを整備し、デジタルサービスを実現していく、そしてデジタルサービスを全ての都民に届けていくという施策を進めています。そのTOKYO Data Highwayを整備するというコンセプトを我々は「つながる東京」と呼んでいます。

 


 

「つながる東京」とは、多様なデジタルサービスが生み出されて、誰でもサービスを享受できる社会、そしてデータ利活用によりさまざまな社会課題の解決がなされるデータドリブン社会を実現する。そのために、あらゆるヒトやモノが、いつでも、どこでも、何があっても、インターネットに「つながる東京」を目指すという取り組みになります。

 


 

「つながる東京」というところで4G・5Gがフィーチャーされがちですが、さまざまな手段、Wi-Fi、衛星、光ファイバー、特に東京は小笠原や伊豆諸島など島がありますので、海底ケーブル、さまざまな通信手段を適材適所で活用し、「つながる東京」を多層的に実現していくことを掲げています。
公衆Wi-Fiはパブリックスペースの屋内などでの「つながる東京」の実現や、誰でも無料でつながることができる利点から災害発生時の通信確保としても重要だと考えています。

2. OpenRoaming対応Wi-Fi拡大に向けて OpenRoamingとは

OpenRoamingについてです。


 

東京都としては、公衆Wi-Fiは誰もが無料で自由にインターネットアクセスを可能にする手段であると考えています。一方で、既存の公衆Wi-Fiに課題があります。1つ目は情報漏洩の不安です。

 


 

東京都でもインターネットの通信環境や利用状況の調査をしているのですが、「公衆Wi-Fiの課題は何ですか」といったときに、利用時に情報漏洩の不安を感じる方が多く、41%の人が感じているそうです。パスワードの漏洩、スマホ決済で情報が盗まれるのではないか、なりすましWi-Fiに情報が抜き取られてしまうのではないかというような不安を感じられている、そういった課題があります。

 


 

また、フリーWi-Fiは多数ありますが、接続のたびにIDの登録、メールアドレスの登録、SNS連携し、登録することが必要になっています。施設ごとに都度ログインが必要という、利便性が損なわれている点があるのではないかと思います。そういった課題を解決するためにOpenRoaming対応Wi-Fiの整備を東京都としては進めています。

 


 

OpenRoamingの特徴は、次のように3つあります。

 


 

まずはセキュアである。無線区間が暗号化されていますので、安全な通信が行われる。そしてシームレスです。OpenRoaming対応のスポットであれば自動的に接続します。SSIDが同じ「なりすましWi-Fi」は防げるような形になります。
また、グローバルでローミングできる国際的な基盤でもありますので、外国人観光客も利用になるという3つの特徴があります。

 


 

世界中で今は広がっており、現在だと10億人、100万スポット、最新の情報だと確か300万を超えるスポットであると伺っています。世界中の観光地や交通機関、アメリカであれば、携帯電話サービスを提供しているAT&T社がOpenRoamingに対応しており、約1.1億人が利用可能な状態です。また、さまざまな大学、空港、公共施設に広がっています。
東京都としてOpenRoamingを採用しましたが、OpenRoamingを導入したというところよりも、安全でシームレスな公衆Wi-Fiを提供するための手段として使っているというところを、どうかご理解いただきたいです。東京都としての、取組意義についてご紹介していきます。

3. OpenRoaming対応Wi-Fi拡大に向けて東京都としての取組意義とその経緯

2019年ごろから「つながる東京」を実現していこうという検討が始まりました。

 


 

「スマート東京」の実現に向けてTOKYO Data Highway、街のDX、都庁のDXという形で進めています。TOKYO Data Highwayをつくっていく中で、街中にスマートポールといわれる5G、Wi-Fi、サイネージ、センサー等が搭載されているインフラの整備を進めています。現在、西新宿に29基ほど設置されています。こういった取組みを進めていくにあたって、ニューヨーク市のLink NYCという事例を参考にしています。

 


 

LinkNYCのWi-Fiとはどういうものなのか。ニューヨーク市内の古い公衆電話を新しい右側の写真にある電話機能も備えた無料Wi-Fiスポットに置き換えるインフラ整備プロジェクトです。その中で1Gbpsの無料公衆Wi-Fiを提供していたり、電話、充電機能であったり、さまざまなサービスを提供しています。
また、世界で最も成功したWi-Fiサービスの1つとして知られています。2018年のデータにはなりますが、毎週60万人が端末に接続していて、月平均50万件の通話、10億セッションを超える利用、ユーザにして月間500万人のユーザが使われていたそうです。こういった利用者数や多くのニューヨーカーに利用されたということが注目されがちですが、Wi-Fiの技術としてPasspointを採用していたことに着目しました。初回接続時、端末に設定を実施して、一度設定すると再度ログインすることなく、安全かつシームレスにWi-Fiを利用できるものです。
私がこの事例を見たときに、Link NYCのWi-Fiの隠れた成功はPasspointを多数の人に利用していただいたことなのではないかと考えています。ニューヨーク市という大都市がPasspointという技術を導入することで、安全かつシームレスなWi-Fi体験を提供できたことが非常に大きいポイントであると考えました。

 


 

公衆無線LANローミングについても調べています。eduroamという事例があります。学術関係者向けに大学や研究機関で、キャンパス・研究所の無線LANの相互利用を実現する基盤です。国内であれば380機関、国立大学の90%以上が利用していますし、世界106カ国で、2万6,000ロケーションで導入されています。さらに高等教育機関だけではなくて、アメリカだと幼稚園から高校までの学校、図書館、美術館、博物館への導入を推進していたり、コロナ禍をきっかけにデジタルデバイドによる教育格差が生まれてしまうという機会損失を防ぐためにeduroamの展開が広がっています。
eduroamは、さまざまな場所でシームレスにつながることを実現した事例として、非常に参考になりましたが、一方で学術機関の関係者のみにしかIDが発行されていないので、東京都として進めるときはeduroamだけだと弱いなと思っていました。

 


 

その中でOpenRoamingというものがあることを知りました。こちらはWBA(Wireless Broadband Alliance)と呼ばれる世界的な団体です。OpenRoaming、Wi-Fiを相互接続できる基盤を運用しています。OpenRoamingはPasspointを基礎技術として、Google ID、Apple ID、Samsung ID、携帯のSIMなど、さまざまなアイデンティティプロバイダーと公衆無線LANでの連携が可能です。
OpenRoamingを調べていくなかで、国内の事例も調査し、Cityroamという取組を知りました。こちらは国内の事業者や海外のID発行機関と接続する認証ハブを運用しています。OpenRoamingとも相互接続していますし、日本のeduroamとも接続しています。こういった形で学術機関だけでなく広く利用可能なWi-Fiローミング基盤が既に日本でも運用されていることを知りました。

 


 

Link NYC、eduroam、OpenRoaming、Cityroam、こういった事例を調べていく中で、東京都としてやるべきWi-Fiの仮説を立てました。1つ目は、東京という世界最大級の都市でPasspointを導入することで、セキュアかつシームレスなWi-Fiの普及啓発に世界で貢献できないか。2つ目は、eduroam、OpenRoaming、Cityroamなどの国際無線LANローミング基盤と接続したWi-Fiを提供することで、グローバルに「つながる東京」を実現できないかといった仮説を持ちました。

 


 

令和3年度(2年前)に整備したスマートポール事業では、この仮説検証のために、Wi-Fiの仕様として、eduroam、OpenRoaming、Cityroamを導入しました。Cityroam、eduroam、既存のキャプティブポータルからIDを登録するという通常のWi-Fi、3つを提供したのですが、Cityroam、eduroamが圧倒的につながることが分かりました。こういった技術検証を踏まえ令和4年度から準備を始めて、今年の3月にOpenRoaming対応の公衆Wi-Fiサービスを正式に開始できました。3月31日に新しい「TOKYO FREE Wi-Fi」としてローンチさせていただきました。東京都でもプレスしていますし、国際機関であるWBAのサイトでも紹介されています。今年度は都有施設に600カ所程度、整備を予定しています。

 

 

さらに3月に東京マラソンがあり、そこでもOpenRoaming対応のWi-Fiを提供しました。東京マラソンに参加するためには自分の体調をアプリに登録する必要があります。ランナーのためにスタート地点やエントリー(登録)するところにWi-Fiを提供していました。基本的には既存の認証方式で使ってもらうということでアナウンスしていて、「OpenRoamingに対応していますよ」ということは一切アナウンスしていません。にもかかわらず、こちらの表を見ていただければ分かりますが、その日のトータルの接続のうち半分を超えるユーザが、OpenRoaming方式でつながった日もあるというような状況です。主に海外のランナーがSIM認証で自動的にOpenRoamingに接続したことが分かっています。
東京マラソンでの実証結果を見ると、インバウンド向けのWi-FiにOpenRoamingを採用することは非常に有効だということが分かりました。東京マラソンは屋外でもありますので、実はいろいろなチャレンジをしています。サブ6・ミリ波の5Gであったり、Stand Aloneの5G SAをバックホールにしたものの提供であったり、Starlink(衛星回線)を利用したWi-Fi、さまざまな技術を使って検証しています。さまざまな技術を通して、数万人レベルのランナーが集まりますので、混雑状況下でもつながりやすい安全なWi-Fiがこちらで実証できたのではないかと思います。

 


 

4. OpenRoaming対応Wi-Fi拡大に向けて 東京都の取組方向性

最後に、東京都の今後の取り組みの方向性です。

 


 

OpenRoamingについては都内全域に拡大していきたいと考えております。ただ、やみくもに整備をするわけではなくて、左にあるような整備範囲の基準を考えています。先ほど申し上げました「スマート東京」実現のための6分野、防災、モビリティ、ウェルネス、教育、働き方、産業、主に観光をやっていきたい。Wi-Fiという電波の特性上、屋内の施設が中心である。さらに日常において大勢の人が利用する施設、そして災害時に避難所や支援拠点として活用される施設について、整備していきたいと考えています。
実際の具体的なものについては、公共施設、駅、ホテル、コワーキングスペース、ショッピングセンター、百貨店、展示会場、観光施設、文化施設、病院、そういったところを考えています。こういった施設について、各施設の状況に応じて整備は施設管理者に行っていただくことを考えていますが、都としてはOpenRoamingを推奨し、それに対する支援をやっていこうと思っています。

 


 

普及拡大に向けて東京都としては、都や区市町村の施設を中心にやっていきますが、民間施設でもOpenRoamingを普及させていく、それによって「つながる東京」を実現していきたいと考えています。利用者や利用可能施設拡大のために積極的に働き掛けを行っていきたいと思っています。現時点ではOpenRoamingの認知度が低いことが分かっていますが、利用できる施設を増やしていきたいと思います。さまざまな業界団体などにご協力を働き掛けたり、外国人観光客がよく訪れる場所を運営する大手事業者に働き掛けたりしていきたいと考えています。

 


 

最後になりますが、東京都の「つながる東京」実現にご理解・ご協力のほど、よろしくお願いします。本日、紹介しました通り、安全・安心・シームレス、国際規格であるOpenRoamingに対応したWi-Fiへのご対応を東京都と一緒に進めていければと思っています。以上で私からの発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

 


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