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トップインタビュー
コムシスホールディングス株式会社 
日本コムシス株式会社 
代表取締役社長 加賀谷 卓 氏
早くからワークスタイルイノベーションを推進
スマート社会のインフラ作りに取り組んでいく

通信建設業において通信インフラ、社会インフラ構築をリードする総合エンジニアリング企業のコムシスホールディングス株式会社、日本コムシス株式会社の加賀谷 卓 社長に今年の経営戦略を伺いました。
コムシスグループは、1985年の通信自由化以降、通信事業への新規参入とNTTグループの再編が進むなか、各地の情報通信建設会社との経営統合によって、事業規模を拡大してきました。2003年に持株制を導入し、コムシスホールディングスを設立。経営統合と合わせ、個社の成長とグループ最適に取り組んでいます。

 

 

社会課題の解決を通じた企業価値向上目指して

――コロナ禍で「中期ビジョン」を掲げ事業拡大を推進されています。

加賀谷 2018年に「コムシスビジョン2020」(売上高4000億円以上、営業利益300億円以上)を掲げたのですが2018年度決算で1年前倒しで達成したため、2019年度に改めて「コムシスビジョンNEXT STAGE 2023」売上高6000億円以上、営業利益500億円以上)を掲げ、さらなる事業拡大と企業価値の向上の実現にむけて取り組みを進めているところです。
新型コロナ対策に苦慮しながらも、2018年からスタートした新しいワークスタイルイノベーションに取り組んできたことが生かされています。リモートワーク中心に早期に切り替え、現場では感染対策の徹底を図りながら、昨年度からは社内業務におけるプロセスの見直しを図りIT活用によるペーパーレス化など社内体制の生産性向上に努めることで、お客様に対してワンストップで全国の通信建設から個客ニーズへのソリューション展開まで対応することができました。2020年度決算ではキャリア事業、成長事業を戦略的に加速し、過去最高5632億円の売上高となりました。

 

 

――今年は、どういう目標ですか。

加賀谷 コムシスグループの経営理念は、「時代を担う多様なインフラ建設でお客様に選ばれ続ける企業を創り、豊かな生活をささえる社会基盤づくりで国と地域に貢献し、たゆまない改革を続けさらなる企業価値の創造を目指す」ことです。長い歴史の中で構造改革を実現しながら、キャリア事業、成長事業の各事業領域の戦略を加速しながら積極的に取り組んでいます。
スマート社会のインフラを作り、未来を創るために、「コムシスビジョンNEXT STAGE 2023」の中期ビジョン実現に向け、特に今年度は、さらなる構造改革とDXを推進し、着実な成長を目指して、売上高5800億円、営業利益430億円を目標にしています。

――DX推進を主要課題にされていますね。

加賀谷 新型コロナで大きく社会のニーズも変化してきており、社内の体制を整えながら社会要請案件に努めてきました。これだけグローバルにネットが利用される時代となり、情報通信インフラの重要性が増し、またSDG’sの動きの中で、カーボンニュートラル、スマートエネルギー等、通信ネットワークをコアにソリューションから社会インフラまでの幅広い領域で事業展開をしていくことは社会的要請に対してもますます重要になってきていると思います。
今後はエコシステム全体でいかに最終顧客へより大きな付加価値を提供できるかといった競争にシフトするだろうと考えています。
通信キャリアのビジネスモデルが大きく変化する中で、我々も率先して自らを変革し、お客様の期待にこたえ、社会における企業としての役割を果たし続けることができるかが問われています。
これまで進めてきた改革の方向をさらに進め、それぞれの事業領域における施策を通して、最適なグループ一体運営を早期に実現し、受注力と生産性を向上させ、社会貢献をしていくための中期ビジョンの目標を達成していきたいと考えています。
社内に向けては、コムシスグループの変化対応力とアフターコロナ社会に向けて、従業員を守る取り組みと、さらなる構造改革による競争力強化に取り組んでいます。ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みと合わせ、経営基盤の強化に向け、人財戦略、環境貢献、ガバナンスの強化を通して安全品質の確保を目指していきます。
先に述べた経営理念の実現に向けて社会課題の解決を通じた企業価値向上と持続可能な社会の両立を目指していきたいと考えています。

 

 

成長セグメントに注力していく

――それぞれの事業領域での主な取り組みを教えて下さい。

加賀谷 コムシスグループのビジネスモデルは、プロジェクトマネジメント力を活かし、インフラ構築をワンストップサービスで提供することです。
現在、長年培ってきた通信キャリア事業をコアに、成長の柱としてITソリューション事業と社会システム関連事業の拡大に取り組んでいます。より加速していくために、2018年からこの成長事業にバーチャルカンパニー制を導入し、グループ横断的に民間、官公庁への事業拡大へ取り組んできています。
具体的な成長事業として、5G展開事業、再生可能エネルギー事業(発電量122GWh)、ITソリューション事業を推進しています。
特にITソリューション事業では、「ソリューション+ソフト開発+保守」をフルレイヤ、フルライフサイクルで進め、ナンバーワン、オンリーワン事業の創出を目指しています。
ソリューションとしては、全国規模のLAN/WANネットワークから、お客様内/DC内のシステム基盤におけるサーバ・ストレージ構築、さらなるクラウド化が進む中でマルチクラウド構築対応等も積極的に展開しています。アライアンス強化しながら取り組んでいるところです。
保守として、24時間365日の保守一元センターを持ちながら、マルチクラウド化によるより高度な保守を、JIG-SAW社と提携を行い、対応を開始しました。ソフト開発においても通信、金融、医療、公共のシステム開発だけでなく、AI活用によるドローン自動点検、人物検知通知等のサービス展開も進めています。

――一般民需でも新しい取り組みを強化しています。

加賀谷 コムシスグループの日本コムシスとしての主な実績を業界別にみると、教育分野では生徒一人一台端末の実現に向けたGIGAスクール対応による学校ネットワークインフラの整備をキャリア様、パートナー様と進めてきました。スポーツ分野ではスタジオWi-Fiだけでなく、オリンピック・パラリンピックの各会場施設の大規模通信設備工事も担当させていただき、都市開発分野では高層ビル統合LAN、ビル内入退室管理等にも取り組んでいます。
医療分野では電子カルテ対応含めた院内LANから患者用病室Wi-Fi構築までを手掛け、防災分野では災害対策用の水害対策/予測用IoTソリューション構築、一般企業向けではテレワーク環境/セキュリティ対策を含めた情報系インフラのクラウド活用による大規模更改案件を進めています。更に、高度なビックデータ解析が必要となる研究開発分野では、ハイパフォーマンスをより求められてくるHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)の構築などにも大学、研究機関と連携しながら携わっています。

――どういう点が御社の強みとして評価されているのでしょうか。

加賀谷 弊社の強みとしては、高度資格保有者が多数在籍しているエンジニアリソースが豊富であることです。社員の最後までやりきる姿勢がお客様との信頼向上にもつながってきています。
また、マルチベンダとして、各社とのアライアンスを強化しながら、IT分野における設計、構築、工事から保守までをトータルで取り組んでいます。ベンダーアライアンスでは、昨年はDell Technologies社様からも「Japan Excellence in Expansion 2021」を受賞いただくことができました。
コロナ禍対策、DX推進、社会課題解決に向けて必要となるITソリューションの展開に、今後ともベンダ/Sier様とのアライアンスを強化しながらエンジニア力を高め、関連パートナー様と連携し、成長分野へ力を入れていきます。

モバイル通信への期待

――モバイルソリューションにも注力されていますね。

加賀谷 モバイルソシューションでは、5G関連分野が事業機会として増えていくこととなります。通信キャリアの基地局整備だけでなく、ローカル5G等地方における自営網構築への展開等、社会課題解決のためのIoT活用による情報インフラはより重要になってくるだろうと考えています。
現在までにも、一般企業の工場、物流倉庫、オフィス内、学校、病院の屋内Wi-Fi設備から、屋外のスタジアムWi-Fi等のモバイルネットワークインフラを提供してきました。このような実績も踏まえ、ローカル5Gを含めた新たな通信インフラを確実にお客様へ提供し、利用領域のソリューション拡大に向け積極的に取り組んでいるところです。
ローカル5Gを含めたモバイル通信環境による社会的課題解決にむけた取り組みとしては、「大規模施設園芸(ハウス)×農業IoTビジネス」への参画として、通信キャリア様との協業により、次世代施設園芸を支える大規模施設園芸(ハウス)の建設と自動化システム、生産環境制御等の農業IoT環境構築にも携わっているところです。

社会ニーズに応えるために

加賀谷 コロナ禍を経て分かったこととして、通信は不可欠なものであり、またその社会への影響や期待も大きいということです。無線LANビジネス推進連絡会の活動も含め、関係団体と協調しながら、より良い社会ニーズにこたえるインフラ作りへ、弊社としても貢献していきたいと考えています。
5Gとの連携不可欠なWi-Fi関連の制度、技術、普及にむけて、業界団体として引き続きリードしていただけることを期待しています。

 


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