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ビジネス情報
解説 緊急事態宣言下における
「オンラインビデオコミュニケーション」の活用法

有限会社 電マーク 代表取締役 中野裕介

新型コロナ感染数増加に伴う緊急事態宣言発令により、仕事だけでなく生活面でも様々な困難に直面してくるようになりました。日本全体が「ONE TEAM」でこの難局を乗り越え、ウィルスの封じ込めに成功することを願い執筆しております。

弊社電マークはオンライン配信やオンラインセミナーの運営業務を行う事業を西日本中心に展開しており、インターネット回線を用いた放送画質での映像伝送装置をはじめ、国際スポーツ大会等でのドローン中継などの事業を実施してきました。2年前からはAI解析のための映像伝送など新たな事業展開をしております。

昨今求められているテレワークやウェビナーなどを自前で行う際のポイントを会員の皆様と共有できると幸甚です。一般社団法人無線LANビジネス推進連絡会の江副理事にはメルマガ寄稿の機会をご紹介いただきましたこと、心より感謝申し上げます。

さて新型コロナ拡散防止として、Zoom、Skype、webexなどの様々なオンラインビデオコミュニケーションサービスを使用する機会が増えていますが、まず、これらサービスの活用には「テレワーク(社内部署間の連絡)」、「対外商談(BtoB)」、「ウェビナー」の3つの用途に分類することができます。また「その他」の用途として「株主総会等の配信」、「遠隔医療」、「オンライン授業」、「防災や商用映像送出」等の利用目的もあります。

今回は、簡単に使いやすい順に「テレワーク(社内部署間の連絡)」、「対外商談(BtoB)」、「ウェビナー」の順に説明していきます。

テレワークにおける「ビデオ通話」と「ビデオ会議」

まず「テレワーク」についてですが、最もシンプルな構成は、PCやスマホでのビデオ通話です。Skype、facebookメッセンジャー、LINE、FaceTimeなどのビデオ通話機能がこれにあたります。人数は4人ぐらいまでで音声映像のクリアさはskypeが優れていると感じます。

参加人数が多くなるとZoom、Webex、Google Hangouts meet等のビデオ会議を使います。「うちのチームでは少人数でもZoomを使う」という企業も増えてきている気がしますが、使い分けは「参加者が定時に集まらない場合」はルームに入退出するビデオ会議、「いつでも好きな時にビデオ通話をしたい場合」はコールをかけてビデオ通話という使い分けになります。

別の用務などで遅れてミーティングに参加する際、通話コールの受け入れでミーティングが中断することが嫌われるため、会議ルームの入室だけでよいビデオ会議は使いやすいツールです。

こうしたニーズに対応するためSkypeも4月3日からビデオ会議機能を可能にしました(Meet Now)。もともと有料のSkype for Businessに制限していた機能を無料のSkypeに解放し、ユーザーの取り込みを図ったのではないかと思われます。

https://www.skype.com/ja/free-conference-call/

ビデオ通話なのか、ビデオ会議なのか、またはPeer to Peer方式(以下P2P)なのか、それぞれの違いが分からず混同されているのが現状です。以下ではこれら全体を「オンラインビデオコミュニケーション」と総称し、「ビデオ通話」、「ビデオ会議」を中心に説明していきます。

「P2P方式」は、専用アプライアンスのPanasonic HDコムや、Whereby(旧名称:appear.in)のようなHTML5技術によるWebRTCを活用したサービスがあります。Skypeも初期はP2Pであったものの、現在はクラウドベースのシステムに移行されています(SkypeTXは、画面共有機能に対応していないなどクラウドベースのシステムとは少し異なっている感じがします。P2Pのメリットを残しているのかもしれません。)

「対外商談」に求められるパワープレゼンテーションとハドルスペース

次に「対外商談」についてです(主にBtoBでの利用)。コロナ対策として出張や企業訪問が難しくなった今、打ち合わせをオンラインで行うことが増えてきました。

弊社は香川県に本社を置くため以前から東京や海外企業とのミーティングには、ビデオ通話やビデオ会議を積極的に使ってきました。使用するサービスは相手側にあわせています。回数が多い順にSkype、Google Hangouts meet、Zoom、Webex Meetingといった感じですが、ほぼ均衡しています。

Skypeは全世界的にユーザー数が多く、10年以上使用しているという方も多いのではないでしょうか。ただ「突然通話コールがかかってくるかも」、「アプリをインストールする必要がある」、「プレゼンス表示(オンライン、退席中)でプライベート状態が知られる」ということを嫌うユーザーもいます。この点はSkype Meet Nowで改善され、対外商談にも使いやすくなりました。

Zoomにはセキュリティ対策が不十分であるとの指摘が増えています。「企業内チームの業務効率化」としてのクローズドな利用から、「BtoB、BtoCでの外とのコミュニケーションツール」としての利用が急激に広がり、「BtoB、BtoC」でのセリュリティや悪用対策にまで対応が追いついていなかったと言えます。

セキュリティ面では、不特定の相手との接続を暗号化してきたビデオ通話サービスの方が安心です。またビデオ会議ではシスコシステムズのWebex Meetingが暗号化等で政府機関のセキュリティの基準を満たしています。

「対外商談」では、どのサービスを選ぶかよりも、会話が「明瞭」で「魅せる」提案力が重要です。スマホで参加したり、PCのwebカメラの前に1人もしくは椅子を並べ数人が参加するというスタイルからレベルアップしておくことが必要です。

ここからはハードウェア構成にフォーカスし、「パワープレゼンテーション」と「最適なハドルスペースの作り方」について少しお話ししたいと思います。

「ハドル」という言葉は日本ではまだ馴染みがない言葉だと思います。アメリカンフットボールで試合中に選手たちがグラウンド上で行う短い作戦会議を「ハドル」と呼び、ビジネスにおいても短時間で集中的に話し合いをすることで業務効率を上げる狙いで、従来の「会議」と区別した使われ方をしています。

ハドルスペースでは大型テレビモニターを置き、ラップトップPCのHDMIポートからモニター着信側(相手)の映像と音声をモニターに出力し、4、5人がテーブルを囲むというのがシンプルな構成になります。発信側はラップトップ内臓のWebカメラでは目線は威圧的な見下ろす形になってしまうため、USB外付けwebカメラをつけてカメラのアングル調整を調整するということは意識している人も多いのではないでしょうか。

この時、webカメラをモニターにマウントし、カメラ内臓マイクで集音すると、モニターから出力される相手側の音声を拾い、エコーとして相手に送られ聞きづらくなる(ハウリング)といったことがおこります。ビデオ通話アプリにはエコーキャンセルの仕組みが入っているためPCの内部スピーカーとマイクを使う場合は、明瞭に聞こえやすいのですが、一旦外部のスピーカーやモニターから相手側の音声を出力すると、エコーキャンセルが効きづらくなります。

ホテル会場やホールで開催するビデオ会議やウェビナーでは会場音声と遠隔参加者の音声をミックスして会場に流し、遠隔参加者には、会場音声のみを送り返すミックスマイナス(マイナスワン)という設定をサウンドミキサー上でしますが、ハドルスペースではマイクをスピーカーから離してエコーを軽減させます。それでもハウリングが気になる場合は、オンラインミーティング専用のアプライアンス製品を導入するとよいでしょう。

アプライアンス製品としては、logicool社の会議室ソリューションが参考になります。以下のページでは、ハドルスペース、小・中・大会議室などスケールに応じたシステム構成が紹介されています (GOOGLE MEET用とありますが他のサービスでも活用できます)。

https://www.logicool.co.jp/ja-jp/product/google-rooms?crid=1691

以前、同社の中会議室用システム「Rally」のデモ機を借りてみましたが、Rallyマイクポッドのエコーキャンセル(アコースティックエコーキャンセレーション)は優秀でした。残念な点は、RallyテーブルハブのHDMI入力ポートはモニター出力だけで、PC画面を相手と共有するためには使用できません。パワーポイントなどのプレゼンテーションを共有するには、使用するアプリ側で画面共有を設定しなければなりません。

資料を表示するラップトップをRallyテーブルハブにつなぎ、カメラとPCの画面をスイッチングできるとよいなと感じました。

弊社が行うWEB会議やウェビナーでは、業務用マルチフォーマット映像スイッチャーを使い、複数のカメラやPC画面映像を合成したり、スイッチング(切替え)し映像を作ります。業務用映像スイッチャーには、Roland社のVシリーズや、Newtek社のTricastrer、PanasonicのAVシリーズなどがよく用いられます。これらの業務用映像スイッチャーでは映像信号の伝送にSDI(Serial Digital Interface)を使用します。SDIは同軸ケーブルでデジタル信号を伝送する規格で放送用途に使われます。HDMIは10m以上になると接続できなかったり、ケーブルコネクタが弱く抜けやすいく、ホール等で50m引き伸ばして接続するといった場合にSDIが使われます(HDMI光ファイバーケーブルによりHDMIの伝送距離も伸びてきました)。

またNewtek社のTricastrerシリーズではLANケーブルで映像信号を伝送するNDI規格に対応しています。NDI規格はPanasonicやSonyのカメラにも広がりをみせ、Wi-Fi6でワイヤレス化も可能だと思います。なお業務用映像スイッチャーはそれなりの価格がします。高いものは車1台ぐらいの価格です。

最近では個人配信が人気になり、安価な映像スイッチャーも登場してきました。その代表的な製品がオーストラリアに本社をおくBlackmagic Design社のATEMシリーズです。ATEMシリーズの中でもATEM miniは4つのHDMI入力をフロントパネルで切り替えることができ、価格も3万円代で購入することができます(ATEM mini Proは7万円代)。SDIには対応していませんがハドルスペースで、カメラとPCをHDMIで接続するという利用に最適です。

ATEM miniは取り込んだHDMI映像をUSB-C 3.1でPCにエンコーダー出力し、PCではWebカメラとして認識してくれます。「対外商談」で、プレゼンテーションをする場合、「今、画面共有をするので、ちょっと待ってください。」「画面見えましたか?」と確認したり、パソコンの操作やファイルやフォルダが丸見えになるということなく、スムーズなプレゼンテーションが可能になります。

私は社外とのビデオミーティングをするときは、このATEM miniを使って、プレゼンテーションをするようにしています。相手側の映像と、こちら側の映像はそれぞれ2つのテレビモニターに映し、指向性マイクをサウンドミキサーに入れ聞き取りやすい調整をします。サウンドミキサーにはzoom※社のLiveTrak L-8がおすすめです。価格も4万円前後と安価で音質もよく、TRRS入出力からマイナスミックスをATEM miniに取り込むことができます。あとは使用するサービスのアプリケーションでビデオ、マイクの入力をATEM miniに設定するだけです。

(※ビデオ会議のzoomとサウンドミキサーのzoomは、名前が同じだけで異なる会社です)

最近は新型コロナの拡散防止対策で開催されるオンラインセミナーでも、ATEM miniとLiveTrak L-8の2つを持って出かけることも多くなってきました。その分、メインで使用してきた業務用機器が眠ってしまうことになり、売り上げ的には頭が痛いところですが、かつては数百万円したテレビ会議システムも、カメラ、マイク、テレビモニターを足しても一式のセットが50万円以内で揃えることができるようになったため、オンライン授業等へのシステム販売にも活用できるようになってきました。

パワープレゼンテーションとハドルスペース構築には、テレワークの助成金も活用できます。詳しい情報は厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)を参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

弊社でも申請しやすい製品セットを企業向けに提案していますので、お問い合わせください。

http://dex.co.jp/

ウェビナーにおける「のぞきみ」対策

最後に「ウェビナー」です。「ウェビナー」は、ウェブ(Web)とセミナー(Seminar)を組み合わせた造語です。オンラインセミナーという呼び方が一般的でしたが、最近はYouTubeLiveやfacebook Liveなど「全員視聴型」のネット配信を「オンラインセミナー」、zoom、cocripo、webex等のビデオ会議を使ったものを「ウェビナー」と使い分けされるようになってきました。

ウェビナーには「全員参加型」と「参加型+視聴型をミックスした」2つの形態があります。後者は、Zoomの「ウェビナー」のアドオン追加や、シスコシステムズのwebexのEvent申し込みで利用可能になります。どちらも有料です。株主総会等では、全体を視聴型にしておき、質疑等の事前申し入れがあったユーザーを参加型に引き上げることができます。

以下ではウェビナーの「全員参加型」に限定して説明したいと思います。

すでにZoomをゲストとしてお使いの方、Zoomでホスト(主催者)になった方は、経験があると思いますが、Zoomでは発言した人に自動的に画面が切り替わります(アクティブスピーカー機能)。そのためホストは、自らがスピーカーとして話す時間は、スポットライト機能(ホストのみの機能)で参加者が視聴する画面を固定し、参加者の咳払いで画面が切り替わらないように設定しておくか、参加者をミュートにして音声を切っておくといった対応が必要となります。質疑応答ではスポットライト機能で発言する人に切り替えるか、音声ミュートを解除しアクティブスピーカーで映像をフォローします。

Zoomの画面表示にはギャラリービューとスピーカービューの2つの表示方法があり、あらかじめホストは「スピーカービューにしてください」として誘導した上で進行をおこないますが、他のゲストの様子を見たい場合は、ギャラリービューに切り替えます。ギャラリービューでは、同時に参加しているゲストが分割して並び、ゲストは他のゲストのビデオを固定(ピン留め)して拡大表示できます。

私はこの機能は問題があると感じています。Web会議にゲストとして参加する時、同時に参加している見ず知らずの人が自分のカメラの映像をフォーカスして「覗き見」されているかもしれないということまで意識されていません。

覗き見されたくなければ、バーチャル背景を設定し自宅やオフィスが映り込まないようにする必要があります。バーチャル背景はブラウザからのアクセスやAndroidアプリに対応しておらず、PCの負荷も大きい機能です。「ピン留め」の許可・不許可をゲストユーザーが任意に設定できる仕組みや、「誰からピン留めされているか」を通知させる仕組みは必要だと思います。

Webexでもホストがゲスト全員に対し、メイン画面にファーカスするビデオをロックできますが、ロックが解除されている時には同様の問題が起こります。またWebexではバーチャル背景の設定がありません。Skype Meet Nowでは「背景ぼかし」機能によりプライバシーを守ることができます。CPUの負荷もバーチャル背景より少ない点はよいですが、スピーカービュー機能など特定の参加者をフォーカスさせる機能はありません。

ヨガなどの趣味講座やオンライン授業で、参加者同士顔がみえて発言するようなウェビナーではzoom、skype Meet Nowが使いやすいですが、セキュリティやプライバシーへの配慮が求められるビジネス、役員会や理事会、行政主催の会議ではWebexを使うとよいでしょう。

Webexは2018年4月に、Cisco WebexとCisco Sparkのコミュニケーションプラットフォームが統合され、SparkのWebex Teamsと、従来のWebexがWebex Meetingsに名前が変わりました。有料プランにはCisco Webex Teams Meetingというサービスもあるため、はじめて使うユーザーは何を使えばいいのかわからなくなります。テレワークであればWebex Teams、対外商談やウェビナーであればWebex Meetingsという使い分けになります。

またWebexの管理ページ(Control Hub)では、設定できる項目も多く複雑と感じるかもしれませんが、テレワーク等で使い慣れていきながら、ウェビナーにも活用していただければと思います。


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