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事例紹介
秋田県五城目町  停電時にも機能する防災Wi-Fi

渉外・広報委員会 江副浩

今回から、新コーナーとして、各自治体が進めているWi-Fi整備・利活用について総務省の事例集から紹介していきたいと思います。

2018年9月6日に発生した北海道胆振東部で発生した最大震度7の地震は記憶に新しいと思います。この地震の際に大きな問題になったのがブラックアウトと呼ばれる広域での停電でした。

停電により、携帯電話の基地局をはじめ避難所のWi-Fiなども全て利用不可能となったため、通信困難状況が発生してしまいました。このようなブラックアウトにも耐えられるWi-Fi環境整備を秋田県五城目町が行いました。

もともと整備されていた太陽光発電装置と非常電源装置を利用し、停電時も動作するWi-Fi環境の整備に成功したそうです。

1.秋田県五城目町(ごじょうめまち)の基礎情報

人口:9,524人

世帯数:4,065世帯

高齢化率:43.5%

条件不利地域:過疎地域(全域)、振興山村(一部)

財政力指数:0.25(平成29年度)

Wi-Fi利用拠点数:9

アクセスポイント数:17

整備開始:平成29年

域内指定緊急避難場所数:24

域内指定避難所数:14

2. Wi-Fi環境整備実施の経緯

五城目町は、秋田市の北方約30kmに位置し、急峻な山岳部と肥沃な平野部から成る農山村であるとともに、歴史のある商工業の町です。もともと自然災害が稀な地域でしたが、近年には、大雨による災害がしばしば発生するようになっており、災害に強いまちづくりに向けた対策がひとつの課題となっていました。

そのため、町では、従前には整備されていなかった指定避難所への防災Wi-Fi環境整備を推進するに至りました。町には、指定避難所が14箇所ありますが、整備場所の選定にあたっては、庁内各課への整備ニーズ把握を経て、「町民センター」「広域体育館」「屋内温水プール」の3箇所が選定されました。

この3施設はいずれも、町で最大の避難人数を見込む指定緊急避難場所である雀館運動公園に立地し、3つの指定避難所合計で560人の収容が想定されている災害時の重要な拠点です。また、平時には、スポーツ活動・文化活動・生涯学習活動の拠点として、多くの町民に利用される施設であり、利用者からはWi-Fi整備を求める声もありました。このように、防災利用の観点、平時利用の観点の両面から、当該3施設が整備場所にふさわしいと考えられました。

整備には、総務省の 「公衆無線LAN環境整備支援事業(平成29年度)」が活用され、平成30年4月から公衆無線LANとしての運用をスタートしました。同年5月・7月・9月の豪雨災害時には、実際に避難所の開設と災害時用Wi-Fiとして開放が行われました。

3.Wi-Fi環境整備の内容

五城目町では「町民センター」を核として、隣接する「広域体育館」と「屋内温泉プール」の計3施設を対象として災害時にも活用できるWi-Fiが図のような構成で導入されました。

五城目町では、町の指定避難所14箇所のうち、9箇所でWi-Fiが整備されています。
このうち、「町民センター」「広域体育館」「屋内温水プール」の3箇所については、総務省の「公衆無線LAN環境整備支援事業」を活用して、平時には無料でインターネットが利用できるWi-Fiとして活用し、災害時には避難者が安否確認や災害情報の収集等を行うことのできる防災Wi-Fiへ即時に切り替えることのできる設備として、整備されました。

3施設に設置したアクセスポイントは計11台です。内訳は、町民センターに4台、広域体育館に5台、屋内温水プールに2台となっています。

停電時に利用出来るよう発電設備と接続

4.整備運用費用

五城目町における、「町民センター」「広域体育館」「屋内温水プール」へのWi-Fi整備費用は以下の通りです。

年度:平成29年度

整備費用:3,780,000円

設置箇所:3カ所(防災拠点)

備考:平成29年度公衆無線LAN環境整備支援事業補助金(2,520,000円)、過疎対策事業債(1,200,000円)

5.Wi-Fi環境整備効果

Wi-Fi運用開始後の平成30年5月に発生した集中豪雨で、町に避難勧告が発令された折には、災害時用Wi-Fiとして開放されました。避難所の開設期間は一昼夜ほどでしたが、約40人の町民が避難者として収容され、収容された町民によって、実際に外部との連絡や情報収集の手段として、Wi-Fiが活用されました。

また、当該3施設は、五城目町のスポーツ、文化、生涯学習に係る活動の拠点として、多くの町民に利用されています。

そのため、平時においてもWi-Fiは施設利用者に活用されています。具体的な利用シーンとしては、例えば、「町民センターにおける子ども向けの放課後子ども教室(タブレット教室等)での利用」「広域体育館でのスポーツ大会開催時における観覧席での利用」「屋内温水プールでの子どものための水泳教室時における同伴保護者の待合室・観覧席における活用」などが挙げられます。

参照先:

総務省「地方公共団体におけるWi-Fi整備・利活用事例集」http://www.soumu.go.jp/main_content/000618328.pdf


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