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海外情報
AT&Tの最初の5G顧客は「有線LANの代わりに5Gを利用」

岩本賢二

『FierceWireless』がAT&TのCEO、Randall Stephenson氏による最初の5Gユーザの動向について報じています。本当に利用者は有線LANの代わりとして5Gを利用するのでしょうか?

★Fiercewirelessより抜粋

AT&TのCEO、Randall Stephensonは2019年第1四半期の収益発表で、同社の最初の5G顧客は、有線LANの代わりとして5Gを採用した企業であると述べました。

現在ビジネス顧客はもっぱら5Gルータを設置していますが、今後5Gのモデムが組み込まれたデバイスが市場に登場すればルータは不要になるとStephenson氏は考えています。

Stephenson氏の予想では、ビジネス顧客はAT&Tの固定回線サービスの高速化に対してより多くの支払いをしてくれますが、5Gについても同じ事が当てはまると考えて居ます。顧客は最終的には5Gの価格設定は現在の固定回線サービスと似たようなものになると期待していますが、それが期待のまま2~3年も続くことは無いと考えられます。

今後の5Gの展開に関してStephenson氏は「来年には5Gのカバレージを全国的に拡大し、ビジネス向けとコンシューマ向けの両方に提供する」と述べました。


「うちの有線LANは5Gに出来るのか?」

確かに昨年末から今年の第一四半期の間でリリースされた米国での5Gサービスは固定無線サービスをベースにしたものばかりでした。前出のAT&TだけではなくVerizonやSprintも同様に固定無線サービスとして最初の5Gをリリースしています。

このため、最初の利用者となった企業ユーザは5Gを固定無線サービスとして企業のネットワークゲートウェイとして利用しました。しかし、上記の記事に書いてあるように、「有線LANの代わりとして」というのは、現時点では5G搭載のデバイスが流通していないので大げさな意見だと考えて良いと思います。

5Gを有線LANの置き換えとして考える場合、これまでの携帯通信システムは全ての通信をEPCと呼ばれるコアネットワークシステムまで接続していましたので難しいと考えられます。しかし5G時代になるとエッジコンピューティングが利用可能となり、特定のグループのSIMを持つユーザ同士はローカルの基地局で折り返しの通信が可能となります。この場合、前出の記事の通り有線LANの代わりとしての役割が現実のものとなってきます。

一方で光ファイバの置き換えとしての利用はどうでしょうか?日本では光ファイバが海外に比べて隅々まで普及をしていますが、このような環境で5Gネットワークを光ファイバアクセスの代わりとして導入するケースが出てくるかどうかは疑問と言えます。5Gがどんなに頑張っても無線を使っている以上、光ファイバの品質には勝てないと予想できます。

唯一の懸念点としては、現在の光ファイバの速度がそれほど速くないという事です。近年最も使われているWi-Fi5(11ac)が既に6.9Gbpsという速度を利用可能です。Wi-Fi6(11ax)になるとさらに早い9.6Gbpsが利用可能です。5Gでは20Gbpsと言われています。しかし、現在の光ファイバはたとえ10Gbpsのサービスを受けても実効上は数百Mbps程度しか利用できません。このまま行くと、Stephenson氏が言うように本当に光ファイバから5Gに置き換えられる日が本当にやってくるかもしれません。

参考:https://www.fiercewireless.com/operators/at-t-s-first-5g-customers-use-service-for-lan-replacement


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