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[トップインタビュー]
  網屋 代表取締役社長 伊藤整一 様

クラウド時代のIT基盤を支える無線LAN
5G時代キャリアフリーのWi-Fiはますます貴重に

デジタルトランスフォーメーションの大きな変化のなかで、最先端の企業ネットワーク構築を進めている網屋の伊藤社長は、無線LANの比重が急速に高まっていると述べる。5Gが始まっても、その役割は変わることなく、クリエイティブな仕事に専念するための企業ネットワークを支えていくことになると見ている。

社会全体がIT化、IoT化していく

――「デジタルトランスフォーメーション」ということが言われ、連日、IoT、5G、AIが大きく取り上げられています。ICT市場は大きな変革期にあります。

伊藤 デジタルトランスフォーメーションに限らず、変化は新たなビジネスを生むチャンスだと捉えています。新たなサービスや規制は新たな課題を生む。そのためにそれを解決するためのソリューションを提供する製品や企業が生まれるでしょう。

当社もメーカーとして積極的に新しい技術にチャレンジして、市場の変化を捉え、魅力的な製品・サービスを提供していきたいと考えています。

――SIとしてICT市場をリードしてこられましたが、どういう変化が起きていますか。

伊藤 従来の業務系のシステムと、組み込みを中心とした今でいうIoT系のシステムとの融合の時代になってきています。

IoTが出てから、全てがネットワークでつながる、インターネットにつながるということが言われています。その中の情報をどう処理するかということでAIにつながるわけで、その意味では社会全体がITの中に組み込まれると言っていいでしょう。逆にいいますと社会全体がIT化していく、そういう時代になってきていると思うんですね。

デジタルトランスフォーメーションの波に早く乗らないと国としては遅れていく、それと同時にその環境をどうセキュリティで守っていくかというサイバーセキュリティの考え方が今、急速に広がってきていると思います。

――御社は、もともとネットワーク基盤構築からスタートしたわけですね。

伊藤 ネットワーク基盤の構築・工事のところです。企業情報通信システムのルータ・スイッチの設計/導入を中心にビジネスを展開していました。
ターニングポイントとしては、ネットワーク基盤でのセキュリティに加えISMSが登場し、情報セキュリティマネジメントの安全対策が企業に求められる時代に入るタイミングに、特化したサービス・製品を手掛けることでビジネスが大きく伸びました。

企業内にリスク管理に対するコンプライアンスが必須になるにしたがいISMSの取得コンサルとその運用ということで、ネットワーク基盤とセキュリティの二本柱となってきました。

――ネットワーク基盤とセキュリティの強化は、企業ネットワークの喫緊の課題です。企業ネットワークの変化はどういう点が大きいですか。

伊藤 企業も団体もそうですが、自分を取り巻く環境で何が起きているかというのをいち早く捕まえなくてはなりません。社会自体がそれを把握しなければいけなくなってきたと思うんです。それはイコール、ネットワークがないとできないことです。

ネットワークというのは拠点間をつなぐというだけではありません。企業の中すべて、1つのビルの中、構内の環境も全部データが飛んでいるわけですから、それをキチンと吸い上げられ、自由に組み替えられるようにしなければいけません。そういう点では、ワイヤレス、無線LANの役割が非常に大きくなっているのではないかと実感しています。

私は1996年の創業の最初からネットワーク構築を自分でやっていました。そのころ無線のLAN、Wi-Fiというのがありましたが、所詮ショールームのカウンター周りとかに使われていただけです。ところが、今は1つの大きなビル全体をWi-Fiでネットワーク構築するという時代になってきています。Wi-Fiが企業のインフラを担う時代になっています、大きな変化ですね。

キーワードはクラウド化

――企業ネットワークのなかで、Wi-Fiが不可欠の要素となってきているわけですね。

伊藤 特にたとえば多店舗展開しているような企業の場合、ネットワークの拠点間接続に関しては、複数の拠点をなるべく短期に、安心してつなげたいというお客様が多いです。そういうところでは、SD-WANが中心になっています。そして、店舗では、当然、無線を一緒に使っていただいたりしていますね。このパターンはこれからもっともっと進化すると思います。

――そういう大きな時代の変化の中で、ネットワーク事業の重点は、どういうところになりますか。

伊藤 働き方改革ということがいわれていますが、人がクリエイティブな仕事に専念できるにはやはりクラウド時代のIT基盤が必要ということだと思っています。

私どもは「Network All Cloud」ということをうたっていますが、さまざまなワークスタイルに最適なネットワークインフラパッケージを構築し、それらをクラウドからメンテナンスする情報システム部門のクラウド化を実現します。

クラウド上からの管理をいかに簡単にするかで、お客様とネットワークの環境の運用が非常に身近なものになる、楽に運用できるようになるというのを目指したいと思っています。このインフラパッケージの拡充により、煩わしいネットワークインフラ運用業務を専用エンジニアが代行し、企業にとって重要なIT戦略の推進に寄与します。これが弊社の企業戦略とサービス戦略です。

クラウド管理センター「CAS-Center」、クラウドWAN「Verona」、クラウドLAN「Hypersonix」という構成で、「Network All Cloud」を実現する戦略です。そして、「ALOG」は、セキュリティを担保するネットワークログ管理・監視サービス基盤なわけです。

Hypersonixはクラウド無線LANサービスで、今、注目を集めているところです。無線LANのビジネスもこのクラウド化でさらに発展するのではないかと思っています。

Wi-Fiのメリットが消えることはない

――5G時代にはWi-Fiは要らないという人がいますが。

伊藤 まあ、そういう話が出るのはもっともかもしれません。5Gは今までと全く違うものになりますからね。

しかし、5Gも直接P2Pというのは分かりますけど、実際には現場の中でセグメントを切ったりとか、通信能力だけではないネットワークの括りとかをどう作るかとかになると、やっぱり拠点にはスイッチが必要だと思います。全部が5Gでカバーできるはずはないでしょう。Wi-Fiがなくていいということは絶対にあり得ないことです。

5Gはあくまでもキャリアのサービスなので、それと自営のネットワークとは一緒にはなり得ないと思います。第一、それでは企業ネットワークの運用がまず追い付かないです。

――Wi-Fiは、アンライセンスというメリットもあるし、自営で自由に付けられるというメリットもありますし、キャリアフリーでできるわけですから。

伊藤 そうです。キャリアフリーということが大きいですね。5Gですべてのネットワークを作るとしたら、それは完全に紐付けになってしまいますからね。

 

――公衆Wi-Fiから始まって、オーナーWi-Fiになって、企業内ネットワークと、いろいろな形でWi-Fiビジネスが広がっていると思いますが、どういう展望でおられますか。

伊藤 企業ネットワークの自主運用の観点とか、セキュリティの観点を考える、当然ながら切り分けというか、役割を分けておいたほうがいいと思います。例えば最近はSIMルータで、ダイレクトであっちこっちに飛ばせるじゃないですか。そういうものが便利な場合、例えば積載車の移動にルータを使うとか、それはそれでいいと思うんです。

しかし、他面、人が1カ所に固まって仕事をすることが必要でなくなる時代が来ない限りオフィスがありますよね。この環境がある以上は、なにがしかの運用が必要になるから、自営のネットワークはかならず必要です。

Wi-Bizは社会への情報発信を

――今後のWi-Fiとそのビジネスについての考えをお聞かせください。

伊藤 これまで無線LANはキャリア通信をオフロードするといった重要な役割がありました。5Gはキャリア側の方式の変化ですから、それとは違い無線LANは変わらずLAN環境の通信インフラとして重要なポジションを維持すると考えています。

5Gのプライベート利用に関しては無線LANの市場を置き換える可能性がありますが、様々な制約があり自由に利用できる無線LANにすぐに取って代わるものではないと予想しています。むしろ、バックホールとしての5G利用により全ての通信インフラが無線化された場合にLAN工事を必要とせず、セキュリティ確保を前提とした柔軟なネットワーク構成が可能な無線LANへの要求事項と必要性は拡大すると考えており、当社としてもビジネスチャンスと捉えています。

――無線LANビジネス推進連絡会の役割について、期待をお願いします。

伊藤 Wi-Bizは、日本での無線LANが広く利用されるように、さまざまな情報発信をしていただきたいということがまず第一ですね。それから、ビジネスをする観点から見て、規制の問題、緩和の問題も含めて、日本の国に働き掛けを一緒にさせていただいて、規制緩和などをしてビジネスチャンスを一緒につくっていただければ、ありがたいということを感じています。個社ではなかなかできないですから、協会としては、そういう活動が一番大事ではないかと思っています。


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