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イベント報告
第8回 技術セミナー Wi-Fiの最新トレンドを解説

技術・調査委員会 吉原崇之

3月23日、秋葉原UDXで「第8回 技術セミナー」が開催されました。
「Wi-Fiの新たなトレンド、そして未来」というテーマで、最新のWi-Fiを巡る技術、ビジネス情報が提起され、117名の参加を得て大盛況となりました。

司会は無線LANビジネス推進連絡会の技術・調査会吉田英邦委員長が行い、その開会を受け、挨拶に立った小林忠男会長は、Wi-Fiのスポットが航空機内や地下鉄など車両内で各段に利便性が向上し、さらに大勢の人が集まる場所とは限らない場所や様々な産業分野のビジネスシーンに広がっている動向を紹介し、今後の更なる発展への展望を語りました。

小林会長

「社会を背負って立つ技術者たれ」

次いで、小林会長と20年来の親交がある国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏が登壇し、「Wi-Fiの活用がもたらす可能性」と題する講演を行い、2010年以降に顕著になった2つの要素、モバイル端末とソーシャルメディアの普及がもたらした光と影の側面を明らかにしました。

モーリー・ロバートソン氏

光の側面として、アラブの春においてモバイルやソーシャルメディアによる真実の情報が、旧来のプロパガンダによるフェイクニュースを負かすほどのインパクトを持ったこと、またこの2つの要素によって引き起こされた議論の沸騰が、厳格なイスラム宗教国家のサウジにおいて女性の運転を可能としたことのみならず、南北格差解消のための最初の一歩となる可能性があると語られました。

他方、影の側面として、米国の大統領選でのケンブリッジアナリティカ社によりビッグデータに基づき群衆心理に働きかけるというロジックによる陰謀論が、最終的に投票行動に影響を与えた可能性があり、今後日本においても同様のリスクが発生しうることが紹介されました。

そして、最後に、「技術者は、民主主義の最後の防波堤になるというチャレンジに精進してほしい」と講演を締めくくりました。

夢が広がるWi-Fiの進化

続いて、フルノシステムズの無線LAN販売推進室の森田基康氏より、「『日本のビジネスを支えるWi-Fiシステム』~物流・自治体・教育・医療等で伸長するWi-Fi導入~」と題して講演が行われました。

フルノシステムズにおける無線関連製品の歩みとWi-Fiの進化を重ね合わせて歴史を分かりやすく紹介しました。微弱無線を用いた物流センタ向け情報端末機器の導入に始まり、特定小電力無線を経て、1996年のSS無線機器でTCP/IPを採用したこと、また2004年Wi-Fiが搭載されたノートPCなどとネットワークが繋がるという大きな転換点となったこと、さらに物流システムのデータが生産性の評価・社員のモチベーション向上に活用されるような発展形も、これらの変化の延長で発生してきたことなどを紹介しました。

一方、実導入に際しては、勘と経験の要素も重要で、実運用状態を想定した物の配置や流れ、人の動きをイメージしたエリア設計が重要となることなどが語られました。

森田基康氏

後半では、Wi-Fiを取り巻くビジネスの観点から、市場規模や政府・自治体の支援事業などの紹介に加え、各分野での導入事例が紹介されました。
なかでも、回転ずし店舗での業務利用とお客様の利用の混在により発生する課題を解決するために生まれた干渉波フィルタリング機能や病院でのLED輝度調整機能の話など、現場に密着すればこその事例や、Wi-Fiの進化系の1つであるクラウドサービスの事例などを紹介しました。

普及促進のカギは出揃いつつある

次いで、NTTブロードバンド・プラットフォーム取締役 ワイヤレス技術部長の北條博史氏より、「2020に向け普及進むフリーWi-Fi その新たなトレンド」と題して講演が行われました。

前半はNTT-BP社の取り組みとして、新たな利用シーンへのWi-Fi提案・導入の状況、特に移動体である列車内、バス車両内、船舶内へのWi-Fi導入事情や、それら拡大に伴う課題解決(例えば国際航路対応)のための技術的取り組みについて紹介しました。

また、“Wi-Fiを使って何をするのか”への取り組みの一例としてスタジアムでのWi-Fi活用状況など、最新のトレンドについて多岐にわたり紹介しました。

北條博史氏

後半は、今後の普及のポイントとなる技術的課題として、ビッグデータにおける個人情報の扱いとして「匿名加工情報」や、セキュリティの観点からのトレーサビリティの必要性、ディスプレイを持たない端末でも設定可能なWEP3、Wi-Fi Vantageなどについて分かりやすく解説し、最後は5GとWi-Fiは連携すると締めくくりました。

IoT、AI、5G・Wi-Fi が一気に加速する

最後の講演として、Wi-Biz小林忠男会長から、「IoT時代のWi-Fiとモバイル」と題して講演が行われました。

米国内でのWi-Fiのトラフィック量は全トラフィックの76%に達している。端末はWi-Fi、LTE、Bluetooth、赤外線がオールインワンになっており、アクセスラインもLTE、5G含めキャリアアグリゲーション的に融合して、新しい世界が出てくるのではないかと考えられると提起しました。

また、5GとWi-Fiはどちらも必要で、どちらかに偏ることなく、家やオフィスと外のネットワーク、プライベートとパブリック、独占と共用のバランス、これがWi-Fiとモバイルの在り方だと語りました。
そして、新たな市場創出のための4つの柱として取り組むべき課題についても触れました。諸課題に、業界としてどうするかを議論する時期に来ていると思うと提起しました。


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