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特別報告
新段階に入った「00000JAPAN」
これまでの普及・拡大の取組みと今年の方向性

企画・運用委員会
渉外・広報委員会
事務局

無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)は総務省と連携して、2014年4月、大規模災害発生時の被災地で通信を必要とする国内外からの被災者や復旧活動に従事する方が、すぐに見つけることができ、契約の有無を問わず無料で利用できる公衆無線LANサービスの災害用統一SSID「00000JAPAN(ファイブゼロ・ジャパン)」を規定し、その普及・拡大に努めてきました。

また、「00000JAPAN」は、被災地において誰もが利用できるという利便性の確保と同時に、セキュリティ等安全性の確保も重要であるため、最低限必要な情報セキュリティ要件等を「大規模災害発生時における公衆無線LANの無料開放に関するガイドライン(以下ガイドラインと称す)」に示し、提供事業者が対応することを、Wi-Bizとして推奨しています。

今回は、昨年改訂されたガイドラインの概要と最近の取り組みについて紹介します。

参加事業者の拡大に向けた取組み

2016年4月の熊本地震において、Wi-Biz会員であるNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯電話事業者3社が、通常は契約者しか利用できない自社の公衆無線LANサービスを無料開放し、初めて「00000JAPAN」が提供されました。
また、本発動では県内で4800台、九州全域で5万5000台ものAP(アクセスポイント)が開放され、被災者をはじめ多くの方にご利用頂き、災害時の通信確保における、「00000JAPAN」の有効性が確認されました。

 

これを受けてWi-Bizでは、今後予想される大規模災害に備えて「00000JAPAN」に参加できる企業・団体を、Wi-Biz会員の携帯電話事業者以外の分野にも拡大することとし、2017年5月にガイドラインの改定を行いました。

この改定によって、「00000JAPAN」対応の公衆無線LANサービスを提供できる企業・団体は、Wi-Bizの会員・非会員を問わず公衆無線LANサービスを提供する通信会社や、自社で設備を有して公衆無線LANサービスを提供する地方公共団体、企業等へ広げられました。
また、プレミアム会員と正会員であれば、自社の製品やサービスが「00000JAPAN」対応である旨を明記し販売を行う等、営利目的での「00000JAPAN」の利用が認められ、「00000JAPAN」の更なる普及・拡大が進められることとなりました。

このように「00000JAPAN」による公衆無線LANサービスや「00000JAPAN」対応の製品やサービス等を提供する企業・団体は、利用者の保護や利便性の確保等を目的に、ガイドラインを遵守とWi-Bizへの申請が求められ、Wi-Bizとして適格と認める会員企業・団体を「00000JAPAN」認定事業者としています。

この取り組みによって、自治体としては初めて「00000JAPAN」認定事業者となった戸田市では、災害時に避難所となる市内の小中学校や市の施設に無線LANを整備し、災害時に「00000JAPAN」により開放されることとしています。

また、同じく学校法人として初めて認定事業者となる東京大学では、これまで整備された学内無線LANを、災害発生時に学内に滞在していた人向けに「00000JAPAN」として開放することとしています。
このように、戸田市や東京大学がエリアオーナーの先駆けとして「00000JAPAN」の認定事業者となることで、「00000JAPAN」の全国の地方公共団体等への広がりが期待されます。

また、通信事業者や地方公共団体等による「00000JAPAN」での公衆無線LANサービスの提供に加え、Wi-Biz会員である複数の機器ベンダーから「00000JAPAN」対応製品が提供されるようになり、各分野で「00000JAPAN」への取り組みが進んでいます。

「00000JAPAN」認定事業者(平成30年1月末現在)

【通信事業者】 株式会社NTTドコモ、KDDI株式会社、
ソフトバンク株式会社 、東日本電信電話株式会社
NTTブロードバンドプラットフォーム株式会社
【地方公共団体等】  戸田市、東京大学
【ベンダー、SIer等】 株式会社ビーマップ、富士通株式会社
株式会社フルノシステムズ

 

これまでの取組みの背景及び発動状況

「00000JAPAN」発足の経緯は、2011年に発生した東日本大震災まで遡ります。無線LAN機能を搭載したスマートフォンやタブレット端末が普及し始めた2011年3月に発生した東日本大震災では、携帯電話のネットワークインフラが広範囲に被害を受け、携帯電話が繋がらない、もしくは繋がりにくい状況が長時間続くなか、通信事業者によって公衆無線LANサービスが無料で開放され、被災地の復旧支援活動や避難所等において無線LANが有効な通信手段として機能したことが高く評価されました。

このような取り組みを受けて、その後の大規模災害発生時における通信手段の1つとして、無線LANの積極的な活用が期待され、2013年6月に総務省から公表された「無線LANビジネスガイドライン」の提言に基づき、Wi-Bizとして2013年9月に、KDDI、ソフトバンク、NTTドコモの3社により、釜石市で災害用統一SSIDを利用した公衆無線LANサービスの無料開放に関する実証実験を行いました。

 

そして、2014年4月に公衆無線 LAN サービスを提供する事業者等が大規模災害発生時の措置を事前に検討・準備する際の留意事項や望ましい事項、及び災害用統一SSID「00000JAPAN」や無料開放時の情報セキュリティ、端末が接続された際に最初に表示する推奨画面等を規定し、ガイドラインとしてまとめ公表しました。

 

先に述べた2016年4月の熊本地震以降、地震・台風・火災等による大規模災害発生時には、携帯電話事業者3社によって避難所等へアクセスポイントが設置され、「00000JAPAN」が提供されています。
今年度も釜石市の林野火災をはじめ、7件の災害に対して「00000JAPAN」が発動され、避難所での通信確保や被災地の復旧活動等に貢献しています。

これまでの「00000JAPAN」発動実績(平成30年1月末現在)

平成28年 4月 熊本地震
9月 岩手県台風10号
10月 鳥取中部地震
12月 糸魚川大規模火災
平成29年 5月 岩手県釜石市の林野火災
5月 長野県飯山市の土砂崩れ
6月 長崎県壱岐市の大雨
7月 九州北部豪雨
9月 台風18号(佐伯市)
9月 台風18号(津久見市、臼杵市)
平成30年 1月 白根山噴火

 

普及・啓蒙活動の展開

Wi-Bizが直接的に関与はしないものの、地方公共団体や集客施設等のエリアオーナーが運営している事前登録制の公衆無線LANサービスが独自のSSIDにより災害時に未登録ユーザーへ無料開放される場合も、当会としては重要なライフラインと位置づけています。

一方、「00000JAPAN」を普及させていくことは、国民の防災・減災に寄与することは勿論のこと、訪日外国人旅行者の災害時における利便性・安全性確保等に繋がることから、Wi-Bizでは防災訓練やセミナー等を通じて「00000JAPAN」の普及・啓蒙活動に取り組んでいます。

今年度は、2017年8月に愛知県・春日井市総合防災訓練に参加すると共に、12月に行われたWi-Biz提携アイドル「でんぱ組.inc」の大阪城ホールのライブで、観客に対して「00000JAPAN」のPR開放やデジタルサイネージによる説明等の広報活動を行い、幅広いユーザー層に対して認知度の向上に努めています。

愛知県・春日井市総合防災訓練での展示

愛知県・春日井市総合防災訓練での展示

大阪城ホールでのデジタルサイネージ

大阪城ホールでのデジタルサイネージ

さらに、2018年2月には総務省主催の「2020年に向けたWi-Fi整備・利活用推進会議in東北・九州」において、各地方自治体向けに「00000JAPAN」の説明を行っています。

会員企業による「00000JAPAN」対応製品の提供

先に述べたとおり、Wi-Biz会員企業の機器ベンダーである富士通、フルノシステムズ、ビーマップは、00000JAPAN対応製品を提供することで、00000JAPANの普及を後押ししています。
次に、各社より提供されている製品を紹介します。

・富士通

富士通株式会社からは、地域防災拠点を管理する地方自治体、小中学校・高校、教育委員会、00000JAPANを運営するWi-Fi事業者向けに、専用サーバーや専用ソフトウェアが不要で、導入・運用コストを低減しつつ、00000JAPANソリューションを実現することが可能な無線LANアクセスポイント「SR-Mシリーズ」とスイッチ製品「SR-Sシリーズ」が提供されています。

「SR-Sシリーズ」のWeb操作画面のトップにあるボタンをクリックするだけで素早く簡単に00000JAPAN開放を行うことができ、非常時に誰でも簡単に操作することが可能になっています。

 

・フルノシステムズ

株式会社フルノシステムズからは、自治体及び公共性の高い施設(医療機関等)を対象に、Wi-Fiアクセスポイントを集中的に管理し、平時はセキュアなWi-Fi環境、災害時には簡単に一括してフリーWi-Fi環境に切替えることができる「防災Wi-Fiソリューション」が提供されています。

本ソリューションでは、無線アクセスポイント製品「ACERAシリーズ」、管理システム「UNIFAS」、及び専用切替キー「Wi-Fiモードセレクター」により構成され、災害時のWi-Fi環境の切替えを専門知識がなくても操作できるよう、「Wi-Fiモードセレクター」に鍵を差し込んでスイッチを回すワンタッチ操作で切り替えることができます。

 

・ビーマップ

株式会社ビーマップからは、数十~数万カ所に災害時用Wi-Fiの無線LANアクセスポイントを設置する法人・地方自治体を対象に、法人用途・防災用途の総合Wi-Fiソリューション「Air Compass」と、無線LANアクセスポイント「IgniteNet」が提供されています。

「Air Compass」と「IgniteNet」を組み合わせることで、事前に取り決めた大規模災害が発生した場合、お客様側の設定作業を一切必要とせず、00000JAPANを提供することができます。

 

今後の取組み

災害時における公衆無線LANの開放の手段として「00000JAPAN」のみならずエリアオーナー固有のSSIDによる開放も有効な手段であるため、ガイドラインについても実情に合わせた修正を行う予定です。
引き続き、総務省等関係機関や他の委員会と連携して、「00000JAPAN」の普及啓蒙に努めてまいります。


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