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「AIスピーカー」の効用と限界、その先に来るもの

無線LANビジネス推進連絡会 会長 小林忠男

今回は、今話題になっている「AIスピーカー」について考えてみました。
狭義のワイヤレスビジネスだけでなく、通信コミュニケーションのビジネスモデルそのものを大きく変えてしまったスマートフォンですが、さすがにその成長の伸びが鈍くなったと言われています。

そして、ポストスマートフォンは何かと話題になっていますが、その最右翼は昨年来、本格的に商品化され大騒ぎになっている「AIスピーカー」ではないでしょうか。
私たちが話しかければ、お店や切符の予約、商品の注文から好きな曲のリクエストまで、即座に何でも不平も言わずにやってくれる優れものです。

AIスピーカーのメリット、デメリットを調べてみると、
●メリット
・手を使わずに操作できるのは便利!
・時間を節約できる
・リモコン代わりになる
・スマホを使う回数が減る

●デメリット
・声を出すのが面倒・恥ずかしい
・大量の情報を処理するのには向かない
・セキュリティ上の懸念
と出てきます。

確かに手を使わず、時間の節約になる気がしますが、例えば家族と国内旅行に行くときにどうするかを考えてみましょう。
① 先ず、雪の北海道に行くか暖かい沖縄に行くか、はたまた鄙びた東北の温泉かをインターネットで調べる
② 行く先が決まったら旅館やホテルをインターネットで調べる。一泊いくらで予約可能かどうか。ホテルまでの交通手段は。可能であれば予約する
③ 目的地までの交通手段は飛行機か新幹線か。何時の便があるか、どのくらいの時間がかかるか。これも家族の都合に合わせて事前に予約が必要
④ 目的地にはどんな観光スポットがあるか。全部は見切れないのでどこに行くか名所の選定をする
少なくとも、このようなプロセスを踏んでから、実際に家族旅行に出かけることになります。

「AIスピーカー」を検索するといくつもの紹介記事が出てきます。

例えば、タイトルだけでも
① AIスピーカーとは?何が出来る?特長や使い方
② 話題のAI搭載スマートスピーカー機能
③ AIスピーカーを比較、現時点のおすすめはどれ
④ Amazon EchoとGoogle Home、どちらのAIスピーカーを買う
⑤ 最新AIスピーカー徹底比較 今すぐ買えるおすすめAIスピーカーは
限りなくたくさん出てきます。

AIスピーカーに向かって、「お薦めのAIスピーカーを教えて」と言うと、上記のいくつもの「おすすめスピーカー」の説明を順番に聞くことになるのでしょうか。

NHKテレビの読み上げスピードは1分間に300文字と決まっているそうです。
そこで例えば、①の「AIスピーカーとは?何が出来る?特長や使い方」の文字数を数えてみると2000文字以上になります。NHKテレビの読み上げスピードで説明を聞けば6分以上かかることになります。
一つ5分としても5つ聞けば30分近くになってしまいます。

旅館やホテルの説明にしても幾つも音声で聞いていては、いくら時間があっても足りなくなってしまうでしょう。
AIスピーカーは乗ると決めた新幹線の切符予約は直ぐにしてくれるでしょう。しかし、家族とレストランに行くとき、それまでにいろいろなプロセスがあります。お店の予約まで、どんな料理で場所は何処で、料金はどのくらいで、等のことを決めなければなりません。
AIスピーカーがすべてをやってくれることは可能でしょうが、選択肢がある場合は大変な時間がかかると思います。

文字の読み上げに必要な情報量は1秒間に数10KBです。このブロードバンド時代に数MBの画像をディスプレイに送ることは簡単にできます。
ブロードバンド回線を使い一瞬で選択可能な画像表示とAIスピーカーの組み合わせがないと、利用者の使用に耐えうる本当の価値は生まれないのではないかと思います。

このように、AIスピーカーのことを考えていましたら、世界はさらに進んでいます。
新年の9日から、ラスベガスで世界最大の家電見本市「CES」が開幕しました。

1月11日の日経新聞朝刊トップに
「AI産業革命」始動
米見本市、IT2強が陣取り
車・家電・・・進化競う
とあります。

ソニー、レノボのディスプレイにはGoogleアシスタントのAIが搭載、またハイセンスのテレビや、トヨタ、フォードの車にはアマゾンのアレクサのAIが搭載されると書いてあります。
Googleとアマゾンはちゃんとお見通しで、音声と画像でAIを応用して新しいサービスを考えているのです。

ここからは私の私見ですが、AIとかIoTとかクルマの自動運転とかロボットとか第5世代モバイルとか色々な技術革新が出てきていますが、まだ開発者の情熱に沿った言葉だけが先行している気がします。

つまり、新しい言葉がそれとして注目を集めている段階では、まだ利用者の本当の使用価値にはつながらず、いったんキーワードの一人歩きが沈潜してからが本当の商品の価値を持つようになるのではないかということです。
逆に言えば、お客様が求めているものは、たとえば今使っているスマートフォンがもっと簡単便利にいろいろなことが出来てほしいということであり、それにはAIとか5Gの技術が結果的にどうしても必要となるのだということではないでしょうか。

私たちが毎日乗り降りするエレベーターにはすでに何年も前から有線ケーブルがオペレーションセンターにつながっていて、交差点には前から監視カメラがセンターにつながっていました。これらは、今で言う立派なIoTです。

ワイヤレスと半導体のとんでもない技術革新によってどんなものでもワイヤレスでクラウドにつながるようになってきました。
そこで、家や会社や屋外にあるものがいつのまにかワイヤレスでクラウドに簡単につながり、少子高齢化が進む中、お年寄りが簡単安全につなげることができるようにしなければなりません。

AI、IoT、ドローン・ロボット、第5世代モバイル等の様々な技術革新が言葉として表に出るうちは本物の革新にはならず、オーガニックに結合してお客様が知らないうちにそれを使う時代に早くすることが目下課題ではないかと思います。


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