技術情報
スタジアムやコンベンションセンター等における高密度Wi-FiのAP設置の課題
新技術導入促進委員会 吉田委員長

野球やサッカーなどのスタジアムや、様々なイベント等が開催されるコンベンションセンターなどでは、限られたエリアに多くの人が来場するため、多くの端末が存在しWi-FiのAPに接続、通信をする場合には一般的な建物内や屋外エリアとは異なる課題が存在します。

スマートフォンなどの端末がそのエリアに集中的に存在するため、例えば、多くの端末が一斉に通信しようとした場合に多くの通信トラヒックをスムーズに運ぶことができるようにする必要があるとか、端末のAPあたりの収容数が限られているためAPを多く設置する必要があり、その施工上の課題、更には数多くのAPを設置した場合に生じる電波干渉を軽減するため、周波数ch配置、送信電力は適切にする必要があるなどの多くの課題が存在します。

ここではそれらの課題に対応する方法について考えてみます。

スタジアム等でAPを高密度に設置する「高密度Wi-Fi」については、アメリカで先進的に行われていますので、ご紹介します。

表1:Super Bowl におけるWi-Fi利用状況

昨年2月にLEVI’Sスタジアムで行われたアメフトのスーパーボールでは、Bowl全体で10.1Tbyteのトラヒックが発生しています。ますますトラヒックを勘案したネットワーク及びAPの収容設計が重要になっています。

LEVI’SスタジアムはBowl内に約1000台程度のAPが設置されており、収容観客数は8万人ですので、ざっくりした単純計算では約80人/APということになります。

1APで非常に小さいエリアをカバーし収容する人数を少なくし多くのトラヒックを運ぶよう設計されています。これが高密度Wi-Fiの基本です。

図1:高密度Wi-Fi イメージ図

このようにカバーエリアを小さくしますとAPの設置場所も大きな課題となります。LEVI’Sスタジアムでは座席下にもAPを設置し約80人/APというエリアカバーを実現しています。

LEVI’Sスアジアムは新たに作られたスタジアムでしたので、躯体設計・工事の段階からWi-Fi用の配管などを周到に用意することにより座席下の設置などを実現しています。

このように新規に建築するスタジアムはよいのですが、既存のスタジアムや既存のコンベンションセンターに新たにWi-Fi提供を行うためには新たな配管を作る必要がある場合もあり、工事に費用と時間がかかるとともにAPの設置場所に大きく制約が生まれることとなります。

この制約を踏まえた効果的なAPの置局設計が必要になり、手摺りやフェンス、屋根やキャットウォークなどAP取付可能な設置場所を見つけ出し置局設計していきます。

また、高密度にAPを設置しますと周波数chについても課題が生じます。Wi-Fi用の周波数chがBowl内に設置するAP数の分(LEVI’Sスタジアムでは1000AP分(=1000ch)!)あればよいのですが、日本においては屋外で利用できる5GHz帯の周波数chは11chですので繰り返し同じchを利用することになります。

そうなりますと同じchを使うAP同士で電波干渉の課題が生じます。電波は、人がいない無人状態と人が入った有人状態で飛び方が大きく異なりますので両方の測定を行い、アンテナの向きや指向性、送信電力の制御などのチューニングを実施して所望のカバーエリアに近づけて解決していきます。

通常、この作業は数日間から数週間の日程が必要になります。また現在、この課題を解決、軽減するために、様々な設計アルゴリズムなどの研究・開発も進められています。

スタジアム等における高密度Wi-Fiの実現にあたっては、まだまだ検討、解決すべき課題が多くありますがひとつひとつ対応しノウハウを蓄積していくことにより、来る2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいてスタジアムで高密度なWi-Fiが提供され様々なユーザエクスペリエンスが実現されるよう願っています。


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