Wi-Fiのビジネスモデルの変化①
便利なインターネット接続から世界標準へ
社会諸施設に不可欠なインフラ的サービスに~

無線LANビジネス推進連絡会 小林会長

 

メルマガ_20160615

 

Wi-Fiは既に光やLTEと同様に毎日の生活とビジネスになくてはならない情報通信インフラになっている。
しかし、Wi-Fiが今のように世界中どこでも使える世界標準になってからまだ20年も経過していない。
無線LANがWi-Fiという名称で現在のように注目され普及するまでに長い時間が必要であった。
1993年に日本国内で初めて無線LANが利用可能になったが、その時無線LANは「高い、遅い、かさばる」と言われていた。更に、機種やメーカーが異なると相互接続が出来ないという問題があった。
Wi-Fiの夜明けはこの三つの問題の解決と相互接続性が実現した1999年のIEEE802.11bの標準化と商品化によって始まり、現在の普及拡大の時代に至っている。

今回は、その1999年から今日までのWi-Fiのビジネスモデルの変化について解説していきたい。

①大学、企業、家庭において使われていた有線によるLAN(Local Area Network)のワイヤレス化が1999年の802.11bの出現により可能となり、以降、本格的に普及し始めた。ケーブルがあるため好きな場所でパソコンを使えない、オフィスの模様替えに費用と時間がかかる等の問題が、周波数免許を有する特定の事業者でなくても、誰でもがWi-Fiのアクセスポイントと端末(Wi-Fiカード)を購入すれば利用できるようになり、積年の課題が一気に解決できるようになった。

②Wi-Fiを使って会社や家だけでなく駅、空港、カフェ等の公衆スポットでも高速ワイヤレスインターネットを利用したいという需要があったが、2000年当初のパソコンは持ち出すには大きく連続通信時間も満足できるものではなかった。ノートパソコンを持ち歩いて街中の公衆無線LANスポットでインターネットに接続するというスタイルが提唱されながらも、バッテリーの持続時間が短い上にノートパソコン自体の処理性能がデスクトップパソコンに劣ることで今一歩普及には遠かった。

このため、インテルは省電力と高性能の両立のため、クロックあたりの性能の高いPentiumMを開発し、モバイルに欠かせないとインテルが考えた無線LANモジュールとマイクロプロセッサーと、省電力を実現するために設計したチップセットをくみあわせセントリーノブランドを設定した。ユーザーにとっては、従来の無線LANカードを用意することなく無線LANネットワークへの接続が可能になるとともに、屋外においても良好なパフォーマンスで長時間使用可能なノートパソコンを、Centrinoロゴの付いた製品を購入するだけで可能となった。

無線LANが外でも使えるようになった状況をみて、移動・固定通信キャリア、CATV事業者さらにエリアオーナー等によって駅・空港・ホテル・カフェ等の人の集まるスポットでの公衆無線LANサービスが各国で始まった。これにより、家庭や企業を中心に使われていたWi-Fiが、駅・空港・カフェ等の人の集まる公衆スポットにWi-Fiアクセスポイントが多数設置され、多くの人たちがWi-Fi搭載端末を接続し、ケータイよりもより高速なワイヤレス・インターネットを行うようになった。更に、任天堂・SONYのゲーム機の出現による公衆無線LANサービスが本格的に始まった。

③Wi-Fiの「第3の夜明け」は,2008年のiPhone3Gから始まるスマートフォンの登場という、Wi-Fiビジネスに携わる人たちにとっては夢のような形でやって来た。

(ア) スマホは、それまでは個別の端末・デバイスで楽しんでいた、音楽プレーヤー、カメラ、ビデオ、ゲーム機、地図、電子書籍等の機能が一台に搭載された「All in One」端末として登場した。そして、その機能をフル享受する音楽のダウンロード、写真や動画のアップロードとダウンロード、ゲームソフトのダウンロードとオンラインゲームなどを快適に行うためには高速のワイヤレス回線は不可欠なものになった。

(イ) スマホの急激な増加と一台当たりの情報データ量が急激に増えたため、ケータイネットワークに掛かる負荷を軽減するために公衆無線LANによるオフロードが必要となり、モバイルキャリアは公衆無線LANスポットを一気に拡大した。

(ウ) 公衆無線LANのスポット数は、2013年に1.3万だったものが2014年3月には90万スポットになり3年間で70倍に増えた。

(エ) ビジネスモデルとしては、モバイルキャリアはこれによりモバイルキャリアの収入アップに貢献するというより、増大するトラヒックをWi-Fiネットワークにオフロードすることにより携帯ネットワークの負荷軽減を目的としたもので費用の軽減、投資の効率化が狙いであった。

④スマホ普及により、これまで困難だったインターネット接続がどこでもできるようになったため、駅、空港、コンビニ等のスポットオーナーは、集客、売上アップ、サービス品質向上による競争相手との差別化のためにWi-Fiを無料で提供しようとする動きが始まった。どの携帯事業者に契約していても、スマホやタブレット、どんなゲーム機でもWi-Fiチップが搭載されていればフリーでインターネット接続が可能なWiFiサービスが全国の主要空港、大手コンビニチェーンで始まった。今で言う、「フリーWi-Fi」の始まりである。

空港やコンビニの来客者にスポットオーナーが無料でWi-Fiによるインターネットサービスを提供するモデルであり、インターネット接続にかかる費用はオーナー自らが負担するモデルである。フリーWi-Fiが広まったらWi-Fiビジネスは消滅すると心配する意見があったが、スマホを実質ゼロ円で契約者に提供し回線料でコストを回収するモデルと基本的には同じである.お客様に提供するフリーWi-Fiの費用は空港やコンビニオーナーが負担し、集客、売上アップによりその費用を回収するモデルといえる。

⑤訪日外国人観光客の不満解消と集客、売上アップとサービス向上のためのフリーWi-Fiの充実が進んでいる。

(ア) 外国からの観光客を誘客するために必須のメディアになっている。

(イ) 「Wi-Fiのない**は**でない」時代になっている。

(ウ) Wi-Fi Allianceの認証マークがついていれば世界中どこでも使える唯一の世界標準になっており、かつアンライセンスで誰でもが簡単に自由にスポット構築が可能なWi-Fiだからこそ世界中から日本を訪問する外国人観光客のために必須なフリーWi-Fiになっている。

(エ) お土産屋、免税店、ホテル、レストラン等々、Wi-Fiの有無が選定の重要な要素になっている。

(オ) 来たるべき2020へ向けて国をあげた全国でのWi-Fiの充実は最重要となっている。

⑥最初は、人の集まる駅、空港、カフェ、コンビニなどからWi-Fiスポットの構築は始まった。スマホを老若男女の多くの人たちが所有し、SNSやインターネット接続に使うようになった今では、どこでもWi-Fiでインターネットしたいという要望が高まっている。

(ア) 人の集まるところにテレビがあり、洗面所があるのと同じように、Wi-Fiはなくてはならない通信手段になりつつある。

(イ) 現在は、デパート・商店街、レストラン・居酒屋、スタジアム、学校、病院、列車・バス・飛行機内でもWi-Fiを使いたいという需要が高まり,それに対応するオーナーが増えている。

(ウ) Wi-Fiスポットのすそ野の拡大が進みつつある。お客様へのサービス向上、利便性向上、そこで働く従業員の生産性向上、出入りする人たちの効率性向上が実現されている。

(エ) 受益者負担でスポットオーナーがWi-Fiを設備し誰でもがどこでもWi-Fiを使える時代が到来する。

⑦東日本大震災を契機とし、大規模災害時の通信確保のためのWi-Fi活用が進んでいる。

(ア) 00000JAPANとコンビニ、自治体等のフリーWi-Fiの開放。

⑧人とモノがワイヤレスでインターネットにつながる時代のWi-Fi。

(ア) Wi-FiとLTEが光と融合し、人とモノをワイヤレスでインターネット、クラウドに接続する時代が到来する。

詳しくは次回。

 


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