技術情報 ~Wi-Fi規格徹底解説:11acと11ad~

新技術導入促進委員会 北條委員長

 

IEEE802.11nのさらなる高スループット化を目指して、11nと同じ5GHz帯を利用する802.11ac、新たなアンライセンスバンドとして60GHz帯を利用する802.11adがそれぞれ2014年、2012年に策定を完了しました。

802.11acは、表1の通り、① 最大帯域幅の拡大(40MHz→80/160MHz)、② 変調方式の高度化(64QAM→256QAM)、③ MIMO多重数の拡大(4→8)、④ MU-MIMOの導入、などの特徴を持ちます。最高規定の伝送速度は6.9Gbpsですが、必須規定を低く抑える(最大293Mbps)ことにより、モバイル端末向けの簡易実装を許容し、多様な市場に対応する狙いがあります。さらにWi-Fiアライアンスでは、Wave1を規定し、先行的な普及を目指しています。

現在発売されている多くの802.11ac対応製品はWave1であり、規格上の最大伝送速度は1.3Gbpsですが、スマートフォンの場合は、最大でも2ストリームのMIMOにしか対応していませんので、最大867Mbpsが現状の最高伝送速度になります。なお、昨年後半からWave2(規格の詳細は検討中)対応のAP製品が市場に出始めていますが、端末側のWave2対応はこれからになります。

日本では、5GHz帯の無線LAN利用の拡大が検討されており、今後、802.11acのさらなる活用が進んで行くものと思われます。

一方、802.11adは60GHz帯を利用する規格としてWireless Gigabit Allianceから提案されたWiGig規格をベースに策定されました。60GHz帯の最大の特長は、アンライセンスでありながら桁違いの利用帯域が確保できているという点です(図1)。具体的には、1チャネル2.16GHzの帯域が4チャネル確保できており、1チャネルあたり最大伝送速度6.8Gbpsを実現しています。

60GHz帯は直進性が高く、APとの間に障害物が入ると通信が遮断する可能性があるため5GHz帯との併用・切り替えの機能も標準で定められています。主な利用シーンとしては、見通し通信距離数十m程度までの近距離における高速通信(4K、8Kなどの映像伝送)や、光配線の代替として高指向性アンテナでビル間を結ぶ通信リンクなどへの利用が想定されています。802.11adは昨年よりモバイル端末向けのチップへの採用が開始されたため、今後11adに対応したスマートフォンなどの端末の普及が期待されています。

 

 


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