技術情報
続々登場AIスピーカー、その特徴とビジネス展開

技術・調査委員会 松村直哉

10月から「Google Home」が販売開始され、AIスピーカーというカテゴリの製品が本格的にTVコマーシャルなどのメディアを賑わせています。

既にリリースした「LINE WAVE」、年内に国内でのリリースを予定している「Amazon echo」や12月に英語圏でリリースを予定している「Apple HomePod」などOTT系のプレーヤーを中心として続々と市場投入が始まっています。

AIスピーカーの各社の製品比較については、既にさまざまなメディアで紹介されていますので、下記のサイトを参照して頂ければと思います。
https://robotstart.info/2017/10/06/smart-speaker-comparison-2.html
https://freelifetech.com/thinking-smart-speaker/

最初に登場したAmazon echoとSiriを活かすApple

私の記憶では、Amazon echoがAIスピーカーとしては一番早いリリースではなかったかと思います(2015年6月頃)。その時、YouTubeで紹介された茶筒状の形がとても印象的でした。そしてGoogle Homeの登場となります。

この二つが他のAIスピーカーと異なっている点は、AIスピーカーのエンジン(AIアシスタント)をSDK(ソフトウェア開発キット)として提供していることにあるのではと思います。

こちらのSDKを使って3000円程度のRaspberry Piにインストールしてマイクとスピーカーを接続すると、AIスピーカーが出来上がってしまうのです。
*Raspberry Piを使ったAIスピーカーの例はこちらを参照してください。
http://www.nct-inc.jp/engineer_blog/1347/

つまりLinuxベースのプラットフォームであればAmazonやGoogleのAIアシスタントを利用できる、ということです。

東芝は北米向けにAmazonのAIアシスタント(Alexa)を搭載したAIスピーカーを販売予定。
SONYもGoogleアシスタントを搭載したAIスピーカーをリリース予定です。このSDKを使えば様々なものにAIスピーカー機能を搭載することが可能になります。

一方でAppleはSiriのAPIを公開済みということもあり、最近ではかなりの数のアプリがSiriに対応しています。ApplePodは後発にはなりますが、Siriの潜在能力を生かした面白い機能が提供されるかも知れません。

Amazon、Google、Appleのハード/ソフトとAPIの構成

簡単ですが、Amazon、Google、Apple、LINE各社のハードプラットフォーム、AIスピーカーエンジン、サードベンダーアプリの提供状況について下図にまとめてみました。

 

SDKの提供の他にもユニークな点として、Amazon echoで提供されているスキルがあります。

これはサードパーティが提供できる拡張機能で音声コマンドにより提供するサービスです。アイディア次第でさまざまなサービスを拡張できるというしろものです。

Amazon自体もサービスを提供していますが、サードベンダーから数多くのサービスを提供することでechoの機能がますます拡張されます。

AppleのSiriで提供されているAPIはアプリを立ち上げたあとでSiriを使って制御することになりますが、スキルの場合は音声で呼びかけて立ち上げます。

音声コマンドの数は呼びかける単語の数だけ増やすことができます。「ワイビズ」とか「でんぱぐみ」などで話しかけると対応する「スキル」=「アプリ」が起動されるイメージです。

 

https://www.amazon.com/Amazon-Echo-Bluetooth-Speaker-with-Alexa-Black/dp/B00X4WHP5E
このスキルは既に音楽、ゲーム、ニュースなど様々な分野から多数提供されており、その数は2万件を超えています。

どのようなスキルがあるかはこちらから見ることができます。
https://www.amazon.com/alexa-skills/b/ref=topnav_storetab_a2s?ie=UTF8&node=13727921011

さらにわかりやすくスキルがこちらで紹介されています。
https://amp.review/2017/10/03/amazon-alexa-skills/

私は9番目に紹介されている「SayHi Language Learning」:会話しながら語学学習、に興味をひかれました。ある程度、インタラクティブに応答することができるAIスピーカーは言語学習に一番適したツールになりうると思います。

といってもリアルな人間と会話するようになるまでは、ディープラーニングに続く新たなブレークスルーが必要になるのではと思いますが、日本での販売を機にSKILLSでどのようなビジネスが出て展開されていくか楽しみです。

国内販売先行のGoogle Home

Google Homeは一足先に国内で販売が開始されています。

Amazon echoのスキルと同様に特定の言葉=コマンドによりアプリがキックされる仕組みです。
「OK Google ×××」と話しかけると対応するアプリがキックされます。
以下のページに紹介されています。
https://developers-jp.googleblog.com/2017/10/google-assistant-app-ja.html

これまで紹介したように、やはり開発スピードや既にある基盤を考えると国内ベンダーがAmazonとGoogle、Appleに続くことは非常に厳しいと思います。

ただ、比較的開発サイクルが長めのスピーカー自体はソフトをアップデートすることでサービスが追加され、機能が向上できることもあり、数年は使われるものになると思います。

スピーカー自体のマイク、スピーカーの音響性能を上げた製品を提供しこれにAmazonやGoogleのエンジンを搭載しサービスを提供するというのも一つのアプローチかもしれません。


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