海外情報
次世代ワイヤレスネットワークが直面する課題 ワースト5

岩本賢二

2020年に向けて期待されている「次世代ワイヤレスネットワーク」ですが、まだまだ一筋縄では行かないようで、米「FierceWireless」紙では“直面する課題 ワースト5 ”という記事を取り上げています。
Mike Dano氏の執筆記事を元に、海外事情を紹介します。

米国のワイヤレス業界は激動の時代に突入しており混迷を極めています。
例えば、10月末にはSprint社とT-Mobile社との合併が破談になり、今後買収合戦が始まるのではないかと言われています。注目の巨大市場において、“直面する課題 ワースト5 ”について紹介していきます。
ここで紹介するワースト5の内容については今年の11月29日からダラスで開催される「Next Gen Wireless Networks Summit」で議論されるらしく、興味があるテーマです。興味のある方は是非リンク先から登録の上ご参加ください。

ワースト 5位:スモールセル問題

大容量無線通信技術はMassive MIMOなど様々な技術が開発されてきていますが、次世代ネットワークでは、さらに多くの通信が必要されており、一人あたりの通信容量を大きくするために小型の基地局をたくさん設置して、基地局1つあたりに接続する利用者数を少なくすることで大容量通信を実現しようとしています。
この場合、基地局は街中の街灯のような場所に数多く設置していく必要があります。
当然これらの基地局には電源だけでなく、電話局へつながるバックホールネットワーク、さらには雨風に耐える堅牢な設置条件が必要になります。基地局の数が増えれば、設置費用の負担だけでなく、ネットワーク設計者にとっては複雑な設計が必要になり頭痛の種となっています。(FierceWirelessから)

特に米国のように国土の広い国ではスモールセル設置というのは途方もない手間とコストが予想されます。
この問題は日本でも同様ですが、日本は人口が都市部に密集しており国土が狭いため、米国ほど深刻な問題ではないかもしれません。それよりも設置場所の確保が重要となります。
老朽化したビルには十分な設備が備わって居らず基地局の設置には向いて居らず、電源の確保とバックホールネットワークの確保が非常に困難です。
日本の都市部では2020年に向けて再開発が進み、新しいインフラの構築が進むため、スモールセルを考慮した都市開発が行われれば、それほど大きな問題にならないかもしれません。

ワースト4位:アンライセンスバンドとCBRS

米国では通信事業者によるアンライセンスバンド参入の数十年にわたるロビー活動の結果、ついにLTE-UやLAAの採用に至りました。
また、米国ではそれまで国防省で利用していた3.5GHz帯を民間利用に払い出すことがFCCにより決定されました。
クアルコム、ノキア、インテル、アクセス・テクノロジー、フェデレーディッド、ワイヤレス、ラッカス・ワイヤレスの6社が参加しているCBRSアライアンスは、この解放された3.5GHz帯を利用したLTEサービスを提供しようと計画しています。
しかし、3.5GHzCBRSバンドで提案されている周波数共有シナリオでは、企業・サイトオーナー・ケーブル会社などが独自で自前のLTEネットワークを構築しますが、このネットワークを大手通信キャリアのネットワークにローミングできるか疑問が残っています。(FierceWirelessから)

* CBRS 3.5GHz帯はこれまで米国防省などに割り当てられていたが、FCCは今年はじめに3550MHz〜3700MHzの約150MHzを商用サービスに開放することを決定。同周波数帯を使ったサービスを「Citizens Broadband Radio Service(CBRS)」と呼ぶ。

日本では今のところLTE-UやLAAの採用予定はありません。
これは通信事業者がサービスに利用できる周波数を増やしても、個人が利用するWi-Fiの周波数を圧迫するという問題があるためです。
一方、日本にはCBRSはありませんが、sXGPというPHSの後継を担うために1.9GHzアンライセンスバンドとそのバンドをサポートしたLTE端末を利用した近距離無線通信の検討や地域BWAが始まっています。
ただしCBRSとは性質が大きく異なるためこのような問題は起きないと考えられます。

ワースト3位:ミリ波帯

AT&TとVerizonは、次世代ワイヤレスネットワーク戦略の中核要素であるミリ波帯(約28GHz以上のバンド)を構築しています。
技術的な難しさがあり、これまで長い間このバンドは無視され続けていました。例えば伝搬距離が数百メートルしかないという問題や、木々や移動中の車両のせいで簡単にシグナルが乱れてしまうという問題が挙げられています。(FierceWirelessから)

特に短い伝搬距離は国土の広い米国では影響が大きいと言われています。
日本でのミリ波帯の利用は市街地でのスモールセルのバックホールに計画されており、国土の狭い日本ではミリ波の伝搬距離はそれほど影響がなさそうです。
また木々や車両の移動に対してもフェイズドアレイのミリ波アンテナが実装されつつあるため、技術的に問題を解決できそうです。

ワースト2位:新規参入者

以前、NextWave社(2012年にAT&TがWCSバンド取得のために$600Mで買収)が米国市場で既存の権威あるワイヤレス業界をどのように混乱させたかを思い出してみてください(結果的に米国ではWiMaxクラッシュが起き、この会社は上手くいきませんでした)。
しかし、もし今日NextWave社が今のワイヤレス業界の状況を見たらどう思うでしょうか?
ミリ波セイブスペースのStarry社、IoT分野のSigfox、サテライトアリーナのOneWebなどの様な新興市場勢力は既存の大手ワイヤレスプロバイダーと縁を切るためにライセンスバンドやアンライセンスバンドの利用を目論んでいます。しかし一方で無線事業の拡大を続けているCharter社やComcast社のようなケーブル会社は新興市場勢力とは異なる動きをしているようです。
果たして次世代ワイヤレスネットワーク市場において新規参入の雄は現れるのでしょうか?(FierceWirelessから)

日本では先に紹介したsXGPや地域BWAを利用した新興勢力が現れるかもしれません。ひょっとすると全く別の方法を使った次世代ワイヤレスネットワークの雄が誕生するかもしれません。

ワースト1位:5G

5Gに言及せずに競争している無線事業者はいません(それくらい5Gは現在注目されています)。
5Gはネットワークパフォーマンスと柔軟性を10倍に向上させる技術かもしれませんが、現時点では、なによりも「ビジネスモデルを探す技術」のように見えます。
5Gを最適に実装するために必要とされる推定560億ドルの価値があるのだろうか?それは皆が口をそろえる疑問です。(FierceWirelessから)

日本でも同様に多額の設備投資が懸念されていますが、日本のように国土が狭く、人口が数カ所に集中している環境では米国と大きく異なる結果が予想されます。

ここまで次世代ワイヤレスネットワークの問題ワースト5を「FierceWireless」から紹介してきましたが、米国の置かれている状況と環境は日本とは大きく異なるように思えます。
また、次世代ワイヤレスネットワークが始まるタイミングと同じくして2020年に向けた都市開発と投資が進んでいます。
ここに新規参入社が登場し一波乱起きれば、日本が次世代ワイヤレスネットワークの先駆者になる日がやってくるかもしれません。今後も次世代ワイヤレスネットワーク市場の動向に注目です。

参照:
https://goo.gl/jnLGvk「These are the 5 worst problems facing next-generation wireless networks」
http://www.nextgenwirelesssummit.com/ 「Next Gen Wireless Networks Summit」


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