特別インタビュー
シスコシステムズ デーブ ウエスト
バイスプレジデント ワールドワイド エンタープライズ ネットワーキング セールス

産業のデジタル変革にネットワークは必須
Wi-Fiはリッチサービス提供の段階に

デーブ ウエスト氏

 

シスコシステムズで企業ネットワーク部門の営業本部長を務めるデーブ ウエスト氏に、IoT、AI、ビッグデータで大きく変わる企業ICT分野の展望を尋ねた。
デーブ氏は、デジタルトランスフォーメーションの時代を迎え、ますます企業の経営目的に沿ったネットワーク構築が生命線を握るようになっていると述べ、なかでもワイヤレスは不可欠の基盤となっており、Wi-Fi活用とセキュリティの取り組みが重要であると強調した。

 

デジタルトランスフォーメーションとネットワーク

――IoT、AI、ビッグデータなど新しいテクノロジーが台頭し、ICT業界はもちろんあらゆる分野で新たなビジネスの登場や産業革新の動きが進んでいます。「デジタルトランスフォーメーション」がキーワードになっていいます。

デーブ ウエスト デジタルゼーションが進み、変革しなければ取り残されるお客様が出てくるとか、これまでのビジネスのやり方のままでいるとスピード感についていけなくなる方もいる、そういったことでみんなに変革が必要になると我々は考えています。

業種にかかわらず、例えば製造、ヘルスケア、政府系、ファイナンシャル系であろうと変革は待ったなしの状態で、経営者はみんなプレッシャーを感じています。
そしてまた、新たに規参入してくる人たちが、市場のこれまでのやり方を一気に変えようとしているので、それに対するプレッシャーも大きいわけです。

大事なことは、そうした中で、ネットワークなしにデジタルゼーションすることは難しいということがますますはっきりしていることです。

――デジタルトランスフォーメーションを推進していくにあたって、ネットワークは戦略的に重要な役割を果たすということですね。どういうことがポイントですか。

デーブ ウエスト 3つのポイントがあります。
1つ目は、複雑さ(COMPLEXITY)、これが全体の動きを遅くしてしまう。例えばネットワークの何かを変えるにしても、いちいち手入力して変えていかないといけないので、ちょっとした変更にも時間がかかり、全体としてビジネスに影響を与えてしまいます。

2つめは規模(SCALE)ですね。サービスするためのスケーラビリティー。例えば端末でいうと、IoTデバイスが増えてきているし、モバイルもまだまだ増えています。ネットワークで支えなければならないものが急速に増えてきていて、それに対応できるスケールが必要なわけです。その準備ができているかということです。

3つ目はセキュリティです。セキュリティは極めて重要で当然のインフラとしてネットワークに組み込む必要があります。ファンダメンタルなルーター、スイッチ、ワイヤレスと共に、必ずセキュリティを入れていかなければいけないわけです。

既存のネットワークを守るというだけでなく、IoT、クラウドも含めて守らなければならないわけです。特にIoTは膨大なデバイスが接続し何が起こっているかが分からないので見える化も必要になります。
オンボーディングデバイス(ネットワークにつながったデバイス)も含めてセキュリティを担保しないといけないのです。

――新しい時代におけるネットワークに求められるものの3つのポイントですね。
これまでのネットワークとは何が違っているのでしょうか。

デーブ ウエスト シスコではINTUITIVE(直観)と呼んでいますが、「目的に沿ったネットワーク」ということです。インテント(意図)を体言した、オープンで拡張的、ソフトウェアードリブンのアーキテクチャーということです。
インテントとは、もう少し言うとビジネスとして何をしたいのか、何をゴールにしているのかということです。
ネットワークはその目的を実現するための手段なので、シスコはそれをサポートするわけです。具体的にいうと、例えばIoTデバイスを1,000個使うという前提で、システムの見える化を行うということは大変なことですが、それはしっかりやる、しかしセキュリティは一切妥協しないということです。

こうしたことを実現するのには必要なテクノロジーとしては、①オーケストレーション、②オートメーション(自動化)、③マシンラーニングがポイントとなります。これらを駆使して、経営に求められる新しいネットワークを実現していくつもりです。

セキュリティの重要性

――そういうコンセプトを体現したプロダクトを用意しているのでしょうか。

デーブ ウエスト そうです。そのためにはニューキャパシティーが必要で、先ほどの3つの項目を意識した仕組みを提供しなければなりません。
それが、ハードウエアとしては「Catalyst 9000シリーズ」です。これはネットワークハイエンド機種で、コアからアクセスまでをカバーしています。新しいソフトウェアーを搭載し、プログラマブルで、スイッチングHub対応している、新しいハードウェーです。
完全に新しいライインアップとしてCatalystを開発した理由は、先ほどのオーケストレーション、オートメーション、マシンラーニングにシンプルに対応するためのハードウェアが必要だからです。

――ほかには、どういう特徴がありますか。
デーブ ウエスト セキュリティも担保していて、新しいアーキテクチャーとしてSDA(ソフトウェアー デファインド アクセス)、プリシート化を簡単に定義できます。

もうひとつはアシュアランスという機能が入っています。それは、見える化の部分なのですが、誰がどんなデバイスを使っているか、どのアクセスポイントにつながっているのか、あるいはどのスイッチにつながっているのかが分かったり、どんなアプリケーションをどのくらいネットワークの中で使うか、どのくらいの帯域を使うかなどパフォーマンスの部分まで、一気通貫で見える化するというのがアシュアランスです。
そういった情報を見ることによって、ユーザーのエクスペリエンスを元に予測し、今後どうなっていくかの予測まで踏み込んで見える化しようとしているわけです。

また、ITコストを下げることもひとつの目的としています。オートメーション、オーケストレーション、アーキテクチャーもファブリックベースで変えて行き、より簡単に変更でき、運用コストを低減します。

セキュリティーでは、先日話題になったワナクライが何か分かる前に、シスコシステムズは止めていました。マシーンラーニングで対応できます。

ワナクライの例でもそうですが、さらに踏み込んでトラフィックが暗号化されていても復号化しなくても止めるETA(インクレテット トラフィック アナリティクス)というソリューションを提供します。現在の攻撃してくるトラフィックの40%が暗号化された状態で、今までは対処が難しかったが復号化しなくても対処できる新たなソリューションです。

ETAのメインの仕組みとしては、マシーンラーニングを使っていて、暗号化されていたとしてもパターンが決まっているので、そのパターンを見てパターンが違ってアクセスして来るものを攻撃と認識します。マシーンラーニングなので外側にデータベースをクラウドとかに置いて、世界中から集まってくることによって精度が高まっていく、ますます賢くなります。

IoT時代に対応したネットワーク

――ネッツワーク業界では、これまでとは異なる要素を持つIoTへの対応ということで、たとえばLPWAなどの通信サービスが登場しています。エンタープライズネットワークをやっている側のIoT対応、IoT時代対応という点では、どういうことが問われていて、どういう準備をしているるのでしょうか。

デーブ ウエスト IoTだけの特殊のネットワークを切り出すということではありません。しかし、IoTに特化した要件もあるわけです。
そこで、エンタプライズネットワークとしては、様々なデバイスがあり、それがネットワークに乗ってきても耐えられるネットワークをどう構築するか、さらに特有にのアナリティクスとセキュリティということへの対応が問われます。

デバイスがこれから先ものすごい勢いで増えてきます、現在15億、2020年には500億になるとも言われ、それだけ急速に増えていく中でいかに妥協せずセキュリティーを担保できるかを考え、エンタープライズ戦略の中の一つとしてやっていかなくてはなりません。
IoTに特化したものに配慮しつつ、我々のビジョンの中に組み込んで対応していきたいと思っています。

Wi-Fiは基本の基本

――シスコシステムズはWi-Fiを重視し、エンタープライズネットワークのなかでWi-Fiネットワークに注力していますが、今後、Wi-Fiはどういう役割、重要性を持ってくると見ていますか。

デーブ ウエスト Wi-Fiはひとことで言えばファンダメンタル、つまり基本の基本ということです。
エンタープライズネットワークは、どんな経路からアクセスして来ても同じものを提供するのが我々の戦略なのです。LTE、Wi-Fi、有線、VPNどこからでも同じものを提供できるのが我々のビジョン、ステラテジーです。

ポリシーの適用は、Wi-Fi、WAN、キャンパスとそれぞれ別々に定義してきたが、ファブリックという1つのものに対して定義し、下のインフラの部分は見えなくなっています。ソフトウェアードリブンセグメンテーションとか、ソフトウェアーベースでやり、そこにオーケストレーションとかオートメーションとかを入れることによってより簡単に迅速に、ポリシーの適用ができるようになりました。

――SDN(ソフトウェアーデファインドネットワーク)から見れば、個々の固定回線、LTE回線、Wi-Fiという違いは関係なくなり、トータルとして非常に快適なネットワーク環境が実現されるということですね。
シスコシステムズは、Wi-Fiネットワークが非常に重視し、様々なケーススタディを実現していますね。

デーブ ウエスト アメリカンフットボールのコロラド州の本拠地のスタジアムの例は最新のデジタルテクノロジーを駆使した事例として有名になりましたが、カナダの自治体の街を稠密に網羅したWi-Fiネットワークとか、マレーシアの国立銀行の窓口業務の顧客対応の革新とかもよく知られるようになっています。
むしろ、Wi-Fiの先進事例としては、日本での取り組みが広範な業界に向けた多様なソリューションの広がりという点で、注目されています。

働き方改革のなかで、多くの企業でユニファイドコミュニケーションの採用が進んでいますが、そこではスマートフォン、タブレットの活用でWi-Fiは不可欠となっています。
また、自治体はスマートシティ化の取り組みが広がるなかで、どんどん広がっています。

医療、製造、小売り、サービス、教育分野などにおいても、デジタルトランスフォーメーションの動きのなかで活発なIT化、IoT化が進んでいます。
日本は2020や地方創生の動きが強まるなかで、世界でももっとみエキサイティングな取り組みが進んでいると、私も期待しています。

――日本の無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)は、Wi-Fiアライアンスとも連携して日本のWi-Fiの普及に取り組んでいます。

デーブ ウエスト もちろん、Wi-Bizの活躍は存じています。シスコシステムズはWi-Fi アライアンスと一緒にビジネスの推進を行っています。セキュリティ関連も取り組んでいます。これから、Wi-Fiでは、axとか新しいものがでてきます。
次世代の無線、ワイヤレスの時代を、是非、一緒に作りましょう。

――日本でWi-Fiビジネスに携わっている方々へのメッセージがありましたら、お願いいたします。

デーブ ウエスト Wi-Fiは単に接続するだけでなく、ワイヤレスの上でなにができるかがポイントになりつつあると考えています。シスコシステムズはそこに注目して取り組みを強化しています。そういったところを一緒にやっていけたらと考えています。

音声を載せたり、ビデオを載せたりもそうですが、さまざまなリッチサービスを提供する必要があります。また、その中でセキュリティは必須のものです。ワイヤレスとセキュリティはセットで考える必要があります。
セキュリティが足かせになることもなく、逆にやりたいことによってセキュリチィーが犠牲になることもなく、リッチサービスをどんどん提供する、そういったものを一緒にやっていけたら嬉しいです。

シスコシステムズとしては、Wi-Fiとセキュリティはオンプレでも、クラウドでも提供できる環境を作っていきます。より簡単にリッチサービスを提供できる環境を作っていこうと取り組んでいるところです。


■Wi-Biz通信(メールマガジン)の登録はこちら